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でか美ちゃん×市川紗椰 つんく♂の歌詞に妄想が止まらない!

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」、ゲストは引き続き、ハロー!プロジェクト!大好き=ハロヲタを公言しているタレントのでか美ちゃんさんと市川紗椰さんです。Twitterで話題となった「#つんく♂パンチライン」をおふたりにも選んでいただきました。

大ボリューム鼎談のため、特別に3本立てでお届け予定。前編はこちら。後編はこちら。
<文 羽佐田瑶子 / 編集 小沢あやピース株式会社)>

つんく♂の歌詞を細かく掘り下げる「手作り焼売はレンチンじゃないか?」

でか美ちゃん:歌詞を読んでいて、この歌詞の女の子と別の歌詞の女の子は同じなんじゃないかな? と思うことがあるんです。たとえばモーニング娘。の『笑顔YESヌード』とアンジュルムの『全然起き上がれないSUNDAY』の人物像はすごく近いなと思っていて。

市川:ああ〜! 半年後の彼女だ。

でか美ちゃん:そう、そうなんですよ。『全然起き上がれないSUNDAY』は悲しいくらい身に覚えがあるんですよね(笑)。私はサビに入る前のフレーズがいいなと思ってて。

「全然起き上がれないSUNDAY 無理だわ 動けないわ」
(アンジュルム『全然起き上がれないSUNDAY』、2019年)

でか美ちゃん:こういう体験って自分にもあって、身体的じゃなくてメンタル的に何もできない日ってあるじゃないですか。なかなかベッドから起き上がれなくて、気がついたら夕方で「せっかくのオフの日なのに最悪」って思う。こういう状況を歌ってきた人ってたくさんいると思うんです。もっと深刻そうに歌ったり、ロマンティックに歌ったり。だけど、“そのまま”歌うことが一番深刻そうに感じられるんですよね。

でか美ちゃん:あと、アイドルでおもしろいなと思うのは、誰かしらプロデューサーが歌割りを決めるじゃないですか。その時に、普段は起き上がれていそうなメンバーにあえて歌割りをしているのが個人的にツボなんです。たとえばこの曲は川村文乃さんで、ぜったいオフの日を有効活用するタイプじゃないですか。

市川:たしかに(笑)。歌割りの好きなところだと、かみこ(上國料萌衣)のフレーズがいいですよね。あの可愛い透き通った歌声で、こんなに力強いフレーズを歌う。だけど、本人が言いそうなところがいいんですよね。

「マジこのまま許さない」
(アンジュルム『全然起き上がれないSUNDAY』、2019年) 

市川:LINEの会話のような、リアルな「てにをは」のなさがとても好きなんです。全体的に重いのに急に軽くなるフレーズとか、パンチラインとして選びたくなるものでした。

「一瞬たりともキュンした」
「バカ子ちゃん」
(アンジュルム『全然起き上がれないSUNDAY』、2019年)

でか美ちゃん:この歌は解釈が楽しいというか、いろんな想像ができますよね。私が思っているのは、すごく運命的な出会いだと彼女側は感じているんだけど、実はライブハウスで乾杯したくらいの何でもない出会いから恋愛が始まっているのかなって。

つんく♂:彼は普通なんだけど、彼女が勝手に運命を感じちゃってるんだよね。

でか美ちゃん:それが『笑顔YESヌード』の歌詞の世界観と近いなと思いました。

市川:私が思うつんく♂さんの歌詞の魅力っていうのは、生活感の溢れるワードなんですよね。語り口調でリアリティがある、という歌詞が好きなんです。

つんく♂:この曲も最後の一行が女の子のすべてで、だからベッドから動けない。だから、サザエさんくらいから動けるんだよね。このまま寝るか、コンビニに行くか迷う、みたいな。

でか美ちゃん・市川:ああ〜!

市川:「起き上がれない」だから、午後になったら復活する感じはありますもんね。

でか美ちゃん:でもこういう時に限って、コンビニに行ってもほしい商品が一個もなくて「世界中から受け入れられてない」って泣きそうになるんですよね。

市川:コンビニでよくわからない「オムライスおにぎり」しか棚にない、ホットスナックも一個もない、みたいな……妄想が広がりますね。

でか美ちゃん:妄想しちゃいますね(笑)。想像の余地っていう意味だと、『好きだな君が』も妄想が止まらないし、ずっと気になっていたフレーズがあるんです。

「こんなお料理でいいですか 手作り焼売美味しいよ」
(道重さゆみ・譜久村聖(モーニング娘。)『好きだな君が』、2011年)

でか美ちゃん:え、焼売?!?!って、初めて聴いた時にびっくりして(笑)。

市川:わかります(笑)。

でか美ちゃん:「こんな」という割には、焼売は手が込んでいるじゃないですか。だから謙遜してるのかと思ったんですけど、全体を聴くと、理屈じゃなく彼に夢中になって恋をしているから、謙遜で焼売じゃなくて「冷食をチンしているだけ説」っていうのが私の妄想です。

つんく♂:それは、設定があって。

でか美ちゃん・市川:え!

つんく♂:一応、蒸してる。手料理を出したいけど、できないから冷凍の美味しい焼売を蒸しているの(笑)。

でか美ちゃん:自分では包まないけど、蒸してたんですね(笑)。

市川:でも「美味しいよ」っていう、どこか他人事な言い方に一から作っていない感じが滲み出ていますよね(笑)。歌い方も、ただポーンとお皿に出してるだけな感じがあって。

でか美ちゃん:それを道重さゆみさんとふくちゃん(譜久村聖)が歌っているっていうのもいいんですよね。あと、恋愛系で言うと市川さんが選んだ『レモン色とミルクティ』は外せないです。

「ASIAの真ん中で」
(モーニング娘。『レモン色とミルクティ』、2004年)

市川:最初聴いた時、「どこ?」ってなって(笑)。

つんく♂:これを東京と思うか、違うアジアを想像するだけで全然違うよな。

市川:ここを「東京」でも「日本」でも「世界」でも「宇宙」でもなく、「ASIA」にしたのはどのくらいの段階で決めたんですか?

つんく♂:中国とかフィリピンとか、どこか場所を特定したくなくて「ASIA」にしたの。

市川:「世界」じゃダメなのは、つんく♂さん的にどういう理由なんですか?

つんく♂:「ティーカップ」は日常じゃないというか、旅行中をイメージしていて。街中を歩きながら、たまたま見つけたティーカップを指差す感じ。横浜、台湾、フィリピン、どこかの国で見つけてるんよな。

でか美ちゃん:旅行中だと思って歌詞を読み返すと、その後にペアのTシャツを着ているくだりも納得できますね。お揃いのTシャツを買うのは旅行中のテンションだから!そのあとの「買い物上手」っていうのも最高ですよね。

市川:そう、こういうところも大好きです。安いし、値切ったのかもしれないですね。途中で、物語の主人公に戻っていく感じもいいし。

でか美ちゃん:はぐれた上に充電が切れちゃうのとか、旅行中だとかなり危険ですよね。

市川:たしかに。あらためて旅行中の視点でもう一度歌詞を読み返しながら、曲を聴きたいです。

世界平和や希望。人間の壮大な人生観を歌う歌詞

市川:でか美ちゃんが挙げている『青春Say A-HA』の歌詞は、私も好きです。

多分 多分 多分 多分 まあそういう女でごめんなさい
(モーニング娘。'17『青春Say A-HA』、2017年)

でか美ちゃん:ライブで初めて聴いた時、びっくりしました。「聞き間違えてはいないよね?」って、衝撃を受ける歌詞とリズムというか(笑)。現場に来てなかったハロヲタの友だちに歌詞を伝えたら、彼女も「聞き間違えなんじゃないの?」と指摘するぐらい、やられたと思ったんです。つんく♂さんの歌詞は心に染み入るものもいいんですけど、シンプルに「やられた!」と思うものも好きですね。

市川:わかります〜!

でか美ちゃん:歌詞全体を見ると、他人から見たら恵まれた顔立ちで、器用で、人に好かれているタイプの子だと思うんです。だけど「本当の自分はこうなのに」という葛藤が感じられる。可愛い女の子で生きていれば幸せ、というわけじゃない。自分を偽ってコソコソしてちゃ、そんなの青春じゃないっていう歌詞が素敵です。

つんく♂:当時、アイドル全体が「恋愛禁止」というムードが強くて、彼女たちを縛るものがたくさんあった。だけど、優等生の道だけを選ぶと後々しんどくなることもあるし、自分を追い込まなくていいよっていう逃げ道のようなものを歌っています。

でか美ちゃん:ファンが持っているイメージを受け入れている姿勢はありつつ、自分は自分であるという正義が垣間見えるのもいいですよね。

市川:あと、「まあ」って開き直っている歌詞とか、メロディーラインが落ちていく感じもいいんですよね。

でか美ちゃん:田中れいなさんがソロで歌ってたのも印象的です。彼女こそファンのイメージが強い人だから説得力がありました。私も市川さんの選んだ歌詞で好きなのが『Be Alive』です。

「君を悲しくさせない時代」
(モーニング娘。『Be Alive』、2012年)

市川:この曲は街を歩いていると突然脳内で鳴り響くんですよね。前半は、平和とか希望をシンプルに噛み砕いて淡々と歌っているのに、このフレーズの時は力が入っているというか責任感を感じる歌い方なんですよね。個人的に「時代」というキーワードが好きで……つんく♂さんはどういう思いでこのワードを持ってきたのか気になるんですよ。はじめから決めてたんですか?

つんく♂:あらためて振り返ってみると、この曲はパンチラインがいっぱい入ってて、俺の中でも好きな曲。シングルだと『LOVEマシーン』みたいな派手な曲が選ばれがちだけど、こういうメッセージがつまっている曲はモーニング娘。だからこそ歌えるし、価値があると思うんよな。

つんく♂:この曲は子育て中に作った曲で、未来に何を残せるのか考えるようになって。俺たちの時代で成し遂げられなくても子どもたちの時代をどうしたいのか、何を残せるのかという思いから生まれた曲。それぞれのセンテンスに未来への想いがいっぱい詰まっているんやけど、それらがとっちらからないようにまとめるために、このセンテンスとタイトルを持ってきた。要は「君を悲しくさせない時代を求めているんだ」という。

市川:それは究極の愛ですよね。傷つかない時代、幸せにする時代とかいろんなワードが考えられる中で「悲しくさせない時代」は究極だなって思うんです。自分が何を求めているのか考えると、この答えに行き着くんですよね。

つんく♂:「絶対に幸せにする時代」は嘘になっちゃうと思ったんやろうな。

市川:ああ、それは納得です。家族なのか恋人なのか子どもなのか人類なのかわからないけれど、どんな対象に対しても「悲しくさせない」ことを精一杯望んでいる、という気持ちはリアルですよね。

でか美ちゃん:小田さくらさんが25周年記念のイベントで取材を受けていて、この曲で加入していることを話している途中で泣きはじめちゃったんですよ。「すみません、地球のことを考えると涙が……」って。こんな人いる?!?!って思いました(笑)。

市川:私も拝見してびっくりしました(笑)。

でか美ちゃん:根っからのハロプロメンバーだと思って感動しましたけど、曲がメンバーに与える影響力の大きさを感じました。

市川:この曲は小田さんのオーディションのイメージが強いから、メンバーにむけたメッセージのようにも受け取りました。

つんく♂:芸能界っていうのはきらびやかなイメージもあるけれど、どんどん孤独になってっちゃうからね。

でか美ちゃん:同じ「人間人生観」ジャンルだと『みかん』はやっぱり名曲だなって思います。

「人間皆好きになれ 人生は一回」
(モーニング娘。『みかん』、2009年)

でか美ちゃん:どうしても人間関係で苦手な人とかは出てくるけど、「そういうことじゃねぇんだよ」という気持ちにさせられます。嫌いなものに気を取られてしまうのは損だし、わざわざ嫌いになろうとしないことが大事だなと思って。私がハロヲタになったきっかけでもある大好きなももち(嗣永桃子)は「嫌いな人を作らない」というポリシーがあるんです。彼女が最後に参加したハロコンのラストで歌った曲が『みかん』で、まさにこの歌詞通りに生きている人だなと思って感動した記憶があります。最近では森戸知沙希ちゃんも卒業ソロ曲に選んでいて、グッときました!

つんく♂:俺の中では『みかん』っていうタイトルをつけたのが未だに自分でも不思議なんやけど、メンバーから人気が高くて、よく歌ってもらってるな。

でか美ちゃん:みかんの"未完"説は公式に語られていましたっけ……?

つんく♂:それは……いろいろ説がある方がかっこいいなと思って、そのままぼんやりさせてんの(笑)。

でか美ちゃん・市川:(笑)。

つんく♂:でか美の言う通り、嫌いになるのは簡単で、嫌いなところに引っかかるより好きなところを見つけていった方が手っ取り早いという感覚があるかな。

市川:私もとりあえず好意的に解釈するようにしています、その方が楽だから。

でか美ちゃん:全然関係ないですけど、たとえば「M-1」も笑おうと思ってみれば気楽なのに、点数つけながら見る方もいらっしゃるじゃないですか。そういう楽しみ方もあるのかもしれないけれど、点数をつけるなら真剣に見ないと許されないぞって思うんですよね。人類総ツッコミ時代って言われますけど、もっと消費者として割り切っておおらかに見ればいいのになと思います。

歌詞の真意を直球質問!「私はローズクウォーツ」はどう思いついたんですか?

───つんく♂さんに直接、歌詞の真意を聞きたいフレーズはありますか?

でか美ちゃん・市川:え!!!

市川:そんな贅沢なことしていいんですか……。

でか美ちゃん・市川:(数分ダンマリ。本気で悩む)

市川:すごく好きな歌詞で、メロン記念日の『赤いフリージア』から聞いてもいいですか?

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