つんく♂とタワレコ社長が語る、音楽業界の今とプラチナ期以降のハロプロ
見出し画像

つんく♂とタワレコ社長が語る、音楽業界の今とプラチナ期以降のハロプロ

つんく♂とタワー・レコード代表取締役社長の嶺脇育夫さんの対談企画・後編は、日本の音楽ビジネスをテーマに、CDショップの未来について嶺脇社長と激論。嶺脇社長の大好きなハロプロ研修生や、Berryz工房トークも大炸裂です。前半はこちら
(文 田口俊輔 / 編集 小沢あや

ネットの発達がもたらした、新しいCDの売り方

つんく♂:嶺脇社長にはヲタクとしての話以外に、経営について聞きたくて。売れなくなったと言われてきたCDもこの数年でさらに売れなくなりましたよね。とくに、アイドルは2020年、握手会ができなくなってしまったことでより厳しくなりました。CDショップ側として、この状況をどう考えていらっしゃいます?

嶺脇:タワーレコードの正直な数字を出すと、2019年の総売り上げが530億円。ただ、2020年度はコロナの影響で去年の数字から大幅に落ちるだろうと見積もっています。

つんく♂:やっぱり、握手会がなくなったのが大きいですか?

嶺脇:握手会がなくなったのも大きいのですが、それ以上にライブがなくなったのが痛いですね。私たちは色んなライブ会場に入ってCDの即売をやっていて、その売り上げがほぼゼロになってしまって。

つんく♂:それは大変ですね。まあ、僕も人ごとじゃないんですが……。

嶺脇:ただ、今はZOOMなどを使ってアイドルとファンがネットを通じて簡単に繋がれるようになり、新しいCD販売の手法が誕生しました。例えば今、K-POPの男性アイドルのCDをウチで買うと、韓国にいる彼らとネットでお話ができるネットサイン会をやっているんですよ。

つんく♂:なるほど!

嶺脇:他にも、CDを購入者限定の配信ライブも開催しています。例えば、国内男性アーティストのJO1さんだと、先方にホールを借りていただいて、ライブイベントをウチが配信して、「タワーでCDを買った人だけオンライン視聴できる」という特典をやっているんです。

嶺脇:たとえばリアルイベントだとキャパシティ2000人が限界だったとしても、オンラインならその制約がない。実際に、CDの売り上げが数万枚を超えました。

つんく♂:わぁ~、それはすごい!!

嶺脇:1本のイベントで1~2万枚は売れるので、非常に効率がいいんです。ただ、ファンの方からしたら実際に会うよりは満足度が低いので、このまま同じことを続けていればいつか大きい壁にぶつかると思っています。

つんく♂:次の一手を考えているんですか?

嶺脇:今の私たちとしては配信用の機材を買い揃えつつ、ネットを使った新しいフェイス・トゥ・フェイスのエンタテインメントの発信と、Webを介したビジネスをどれだけ広げられるか? が、これからの大きなカギになるのかなと考えています。

アイドルが売れていくために大切なこと

つんく♂:インディーズとメジャーのアイドルの差はどうですか?

嶺脇:2020年に限って言えば、メジャーからはリリースが少なかったです。一部はネットサイン会を開催しましたが、ほぼほぼ稼働がありませんでした。地下やインディーズのアイドルは結構ライブイベントは開催していました。

つんく♂:即売会も含めて?

嶺脇:はい。間に仕切りをおいて、チェキとか撮っています。可能な限りのコロナ対策をして実施していましたね。みなさん稼がないと終わってしまうので、背に腹は代えられない状態なんですよね。

つんく♂:インディーズのアイドルの子たちの曲のクオリティーは、モーニング娘。を聴いてきた社長からしたらどうですか?

嶺脇:もう、ピンキリです。とんでもないものから面白いものまで、様々です。

つんく♂:iPhoneで録ったヤツとか普通にありそうですよね。

嶺脇:まさに。携帯のガレージバンドで録って「これ、マスタリングしていないだろ!」というような音質でも発売するアイドルさんは普通にいます(笑)。けど、それはそれで好きな人がいるんですよね。

つんく♂:BBCラジオで流していたようなライブ音源や、ライブハウスでの演奏をオフマイク一本で録ったようなノイズだらけの音源とか、逆にレアですからね。

嶺脇:そうなんですよね。やはりレアに価値を見出す人は少なからずいるので、1曲入り2〜3000円のCD-Rでも売れてしまうんですよ。

つんく♂:1枚1曲で3000円!? 一体、どれだけ売れるんですか?

嶺脇:だいたい限定数百枚ぐらいで発売しているんですよね。そうすれば1枚1000円で発売するよりも、少ない枚数でリクープできるという考えだと思いますね。

つんく♂:男性アイドルはどうですか? 伸びしろがめっちゃあると思うんですが。

嶺脇:ウチに関して言えば、今年女性メジャーアイドルのリリースがほぼない状態の中で、コンスタントに発売するK-POP男性アイドルとジャニーズさんに大いに助けられています。

つんく♂:やはりジャニーズは期待値が高いんですね。

嶺脇:どのグループも、メチャメチャ売れますね。

つんく♂:特典があるから売れるんですか?

嶺脇:いいえ。確かにSixTONESやSnow Manも、2019年のリリースの時はハイタッチ会などの特典会は開いていました。ただ、それなりの規模になると、特典をつけなくなります。それでも売り上げは落ちませんでした。女性ファンを掴むと息が長いので、こうした形をしっかり作れるグループが、男女共に良い気がします。

CDショップの未来は”多角化”が救う?

つんく♂:2020年は瑛人さんの「香水」という曲が売れました。話題性からいって、30年前の感覚やったら確実にミリオンやった曲ですよね。CDショップとしてはあの曲は「売れたな!」という実感がありましたか?

嶺脇:CDショップ側からすると、売れたという実感はありません。今はストリーミングのヒットが先行して、パッケージのヒットはその後で。あいみょんもストリーミングで聴かれてはいたものの、2万枚ぐらいの売り上げで。それが紅白後に10万枚ほど売れました。ヒットのタイミングもズレてきている気がします。

つんく♂:以前、嶋大輔さんの「男の勲章」という曲がドラマ「今日から俺は!!」(日本テレビ)のヒットでめっちゃバズったじゃないですか。ハワイに住んでて日本のドラマとか見てなかったので、まったく知らなかったんですね。

レタッチ③

つんく♂:Wii U カラオケを自宅で家族がしてたら、「最近歌われてるランキング」「『男の勲章』歌:嶋大輔」と出てきて「何事や!?」とびっくりしたんです。最初は日本で何かのバラエティ番組で芸人がネタにでもして国民がハマったんかなぁ? とか思ってたんですが、何週も何週も入ってるので、「なんで!?」ってなって。

嶺脇:あはは(笑)。

つんく♂:そうしたら後々、ドラマの主題歌になって出演者たちが歌ってると知って。しかもCDが出たわけでもなく、曲だけがバズッた。出演者が歌ってるのが得に音源化されていないので、カラオケランキングに入ってくるのは「嶋大輔」さんのバージョンになってたという。

嶺脇:驚きですよね。

つんく♂:20〜30年前なら、絶対に主人公歌唱でシングルとして発売されて大ヒットしていたはずやのに、もったいない! って思いました。今はこのように音源化されなくてもバズるという現象が起こんねんな〜、と考えさせられましたね。

嶺脇:今はストリーミングでヒットした曲が、必ずパッケージされるというわけではない現状ですね。特に欧米はCDを出さないアーティストがイッパイいて、中でもHip-Hopの人たちはストリーミングがメインで、ほぼCDを出さないという形が定着しています。

つんく♂:ストリーミングがメインやと、Hip-Hopの人たちはどうやって資金を回収しているんですか?

嶺脇:ほとんどライブです。Chance The Rapperというアメリカのミュージシャンは、CDを1枚も出さず、ネット上で作品を無料公開で発表していますね。主に「ライブに来て物販を買ってくれ!」というスタンスなんですよ。しかも、無料公開した作品はグラミー賞を獲得しました。

つんく♂:無料公開でもエントリーされることがまずすごいですね。でも、そういう現象が起こると、CD屋さんとしては美味しくないですよね。

嶺脇:まったく、1ミリも美味しくありません(苦笑)。

つんく♂:Tシャツをめっちゃ売るわけにはいかないし(笑)。

嶺脇:それが今、ウチではTWICEのツアー限定グッズをいっぱい売っています(笑)。他にも氷室京介さんのラストツアーで売られていたTシャツや、安室奈美恵さんのラストツアーグッズも発売したりと、グッズ販売所として利用してもらっている部分もあります。

つんく♂:へぇ~!

嶺脇:またK-POPファンの方は、リリースがなくても店に集まって、写真を撮ったり、仲間とトレーディングカード的なものを交換したりと、交流の場として当店を使用していまして。こうした光景を見ると、音楽を通じた場の有りようをどう作っていくのか? を考えますね。

つんく♂:より多角化していくことが重要かもしれませんね。

嶺脇:そうですね。CDなのか? 物販なのか? はたまた入場料を取るか? 私たちはカフェもやっているので、そこにお金を落としてもらうのか? と。Eコマースではできない五感に訴える「“体験”できるリアル」。ファン心理を刺激するような、サービスの提供を色々と追求していくことが、生き残ることに繋がるのかなと考えています。

つんく♂:音を聴くだけやったら家でも外でもヘッドフォンすればいいけど、そこにエンタメが加わると、出かけたり体感したり触ったりしたくなりますからね。

嶺脇:そうですね。多角化する中でも、音楽にはこだわりたい。音楽というエンタテインメントを中心に置いて、フラットに物事を考えていきたいですね。ただ、正直言えば時間がありません。高い家賃を払わなければならず、より効率が良い売り方を色々考えていくことが課題だと思っています(苦笑)。

つんく♂:大変ですね、それは。

嶺脇:なので色々と新しい試みは始めていまして。例えば、レコチョクさんと一緒に「Eggs」というサービスを提供していて。そこではアマチュアのミュージシャンが「聴いてください」と、サイトに音源を無料公開でアップしているんです。僕たちが気に入れば、音源をCD化したり配信したり、サービスを提供していて。こうしたネットとリアルの二極化で新しいCDショップの在り方を提示したいです。

現役メンバーのハロプロ研修生時代

つんく♂:そういえば何かのインタビューで、社長が「プラチナ期のころは変化がなかったからハマれなかった」と語っていたのを見たことがあるんです。

この続きをみるには

この続き: 4,541文字 / 画像3枚
この記事が含まれているマガジンを購読する
このマガジンを購入すると月3本以上の記事をお楽しみいただけます。月2本以上読むなら、定期購読の方がお得です。

月に3本以上、オリジナルのコラムやゲストを迎えた対談記事をアップします。さらに、過去コラムをすべてお読みいただけます。本マガジン内のコンテ…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
つんく♂

つんく♂noteを読んでくれてありがとうございます。この記事を気に入ったらスキを押して、有料部分もどんどんSNS等で拡散していただけると嬉しいです!その際は、#つんくnote をつけてつぶやいてください。自分のnoteに持論を書く人も歓迎!感想待ってます!

「すき」さんきゅ!
総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。