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あなたの中にある「天才力」を呼び起こす方法

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(文 つんく♂ / 編集 小沢あや

子どもの頃の夢、覚えてますか?

どうも、つんく♂です。

将来の夢や職業って何歳くらいに明確になってきたか、覚えてますか? 僕、実はとっても大事だなって思うんです。夢を頭に思い浮かべることって。

小学生になる前の男の子は、「スーパーヒーローになりたい!」とか「総理大臣になるんだ!」など現実と想像の世界の区別もつかない夢や、パイロットや警察官を選ぶ子が多かったと思います。女の子は客室乗務員や看護師といったところでしょうか。

僕の幼稚園の頃の夢の一つに「芸能人」がありました。「テレビの中の世界に入りたい」という意識が強かったのを覚えてます。女の子でいうと「ピンクレディーになりたい、可愛いドレスで歌いたい」のような願望ですね。

小学校高学年になると、テレビドラマで活躍する医者や弁護士という職業にも憧れました。尊敬されて、高収入だしね。

とはいえ、僕はクラスでも成績が良い方だったけれど、阪大京大に入れるようなレベルでないことはわかっていました。教育大付属を受験する優等生を横目に、「こういう子が医学部とかにいくんだろうなぁ」って、負けを認めちゃってました。

そんな僕も中学生になって、現実的になりました。せいぜい高校受験のことくらいしか考えていませんでしたが、小さい頃に憧れた芸能界は「ぼんやりした夢」に変換され、具体的に目指すものではなくなりました。

それは、大人からの刷り込みも大きかったかなって思うんです。

僕も芸能界に対して「いいなぁ」とは思うものの、具体的にはどうしたらいいかわからなかったし、学校の進路相談会で、「芸能界に入るにはどうしたらいいですか?」と質問したんです。

すると先生に「アホなことを言ってないで、単語の一つでも覚えろ。あんなもんで成功出来るなんて、ホンマに才能のあるひとかけらの人間だけや」と言われてしまいました。

夢をようやく言葉にしたのに、大人からお説教される……。そんな感じで、夢を口にしなくなっていく感覚、みなさんも経験あると思います。

でも、結果的に僕は芸能界に入ることができました。先生の言う「ひとかけら」に入ったのかどうかわかりませんが、少なくとも30年くらいはその世界で食べてます。

ということは、あの時の学校の先生の「芸能界は無理」という答えは間違っていたのか? 僕は決してそうではないと思います。

アメリカで学ぶ子どもとの会話で、僕が受けた衝撃

数年遡りましょう。僕は5年ほど前に家族でアメリカのハワイに移住しました。双子の長男長女は3年生。次女は幼稚園の一番上の学年からのスタートです。

当時はハワイ出身のオバマさんが大統領だったので、ハワイのみなさんもとても誇らしげでした。しかし任期満了となり、次の大統領選挙が始まりました。トランプさんとヒラリー・クリントンさんとの一騎打ちです。

僕の勘違いかもしれませんが、今回のトランプVSバイデンよりも、前回の選挙の方が、オバマさんの後なので、ハワイ住民にとっても熱が入ってたように感じました。

驚いたのは、大人の世界だけでなく、小学校3年生の子どもたちが、学校の授業でトランプ派とヒラリー派に分かれて、どちらが大統領にふさわしいか討論していたこと。各候補のマニフェストや過去の実績を調べて、「トランプが大統領になったらハワイにとってはこんなことが起こるよ!」「ヒラリーだったらこうだよ!」と、擬似投票まで行ったそうです。

ある夜、長男が「ねえパパ。僕思うんだ。トランプがもし大統領になったらね……」と、話しかけてきました。学校の議論の後で興奮しているのか、自分の意見を僕に語り、「パパはどっちがいいと思う?」と、聞いてきたのです。

正直、戸惑いました。「あれ? そういえば、テレビのニュースは見ているけど、彼らのマニフェストや政治理念について、しっかり考えたことなかったなぁ……」と。

でも、学校に通ってる子どもたちからしたら、自分の住んでる国の出来事なので、超重要案件です。

その日はなんとなく、テレビの解説者が言いそうなことを伝え、長男との会話は終わりました。

「日本なら、教師が学校で政治の話をしたら、保護者からいろんなクレームが入るだろうし、先生も触れられないだろうな」と、考えたのを覚えています。

カルチャーショックは続きます。翌年、4年生になった長男が、「ねえ、誰が世界で一番お金持ちだと思う?」と、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなどのウィキペディアを開きながら僕に聞いてきたのです。

「ビルゲイツはマイクロソフトで成功したからビリオニアだし、スティーブ・ジョブズはiPhoneで大金持ちだよね?」「どうやったらお金持ちになれるのかなぁ? やっぱり、インベスターかなぁ?」

僕はまた、返答に困ってしまいました。「努力しなさい」「いい大学に入りなさい」という次元を超えているからです。

またある日は、「ねえパパ? ストック(株のことね)って持ってる? どんなストックを持ってるの? お金が100倍になったりするんだよね ? 僕、何を買おうかなぁ」と言いながら、株投資のシミュレーションサイトを開いていました。

「え? それ何やってるの?」

と聞くと、クラスで6人くらいのグループに分かれて相談し、これから株価の上がって行きそうな上場会社を選び、シミュレーションサイトで1ヶ月後にどうなるかを競い合うというのです。

「は!?」

驚きました。当時、まだ4年生ですよ。先ほどの政治の話もですが、おそらく日本の小学校では、先生がお金儲けの話をするような授業をしないでしょう。

そもそも、学校の先生も、株式会社の仕組みや、お金(金融)の仕組みを理屈はわかっていても、実際のところを知らないかもしれません。だって、僕も自分でお金を稼ぐまでは、まったく知らなかったし。人から教わることもなかったし、いまだによくわかっていません。

そう思うと、子どもにとっては何でも知ってるはずの学校の先生でも、「教える」という自分の専門分野以外の職業について語るのは無理に等しいんです。

芸能界のこと。スポーツビジネスのこと。IT業界。金融。飲食。証券。不動産。政治家。最近では、eスポーツ選手やYouTuberなどの新しい職業も出てきましたけど、先生に聞いても、詳しくわかるはずないです。

僕の学生時代の話に戻ります。進路相談会で「芸能界は無理」と答えた先生も、僕の才能を吟味して答えたわけでなく、芸能界を知らないがゆえに、「やめとけ」「コツコツ単語覚えろ」と言うしかなかったんです。知らないのに「やってみなさい」とは、なかなか言えないわけですからね。

(僕だって、モーニング娘。のメンバーたちが「ハリウッド女優を目指すんで、辞めたいです」って言ってきたら、「やめとけよ! 無理だって。日本にいた方が稼げるよ」って返事しちゃったかもしれませんし)

ただ、僕はたまたま芸能界に辿りつけたからそう思うのであって。子どもの頃の夢を叶えられなかった人、もしくは、夢が夢でなくなっていった人たちの背景には何にあるのかと考えました。

大人からの「やめなさい」「真面目に生きなさい」という言葉の積み重ねで、いつの間にか、夢がしょんぼりしていったのではないかと思うんです。

大事なのは、子どもの興味と好奇心。それこそが未来への可能性であり、日本の発展に繋がるはずなのに。

僕ら大人が子どもにしなきゃいけないことは、知っていることをわかる範囲で教えることでなく、知らない部分をより詳しく知ってる人たちから説明してもらえるチャンスを与えることなんじゃないか。そう思います。

では、もう大人になってしまった僕らはこれからどうしていくべきでしょうか。

知識さえあれば、大人になってからも可能性は広がる

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