「必要なのは、圧倒的に面白くさせる覚悟」つんく♂と映画監督のクリエイター論
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「必要なのは、圧倒的に面白くさせる覚悟」つんく♂と映画監督のクリエイター論

つんく♂とタカハタ秀太監督対談後編は、テレビと映画現場の違いや、ものづくりへの思いを監督に伺いました。「低予算でもとにかく作りたい」「先輩に教わったことはすべて疑う」「常に脚本は書いておく」などふたりのクリエイター論が飛び交いました。対談前編はこちら。
(文 羽佐田瑶子 / 編集 小沢あや

タカハタ監督「テレビのバラエティは若い人に作ってほしい」


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タカハタ:つんく♂さんの作曲数はどれくらいになったんですか?

つんく♂:JASRACの登録作品数で言うたら、1950曲くらいになりました。

タカハタ:すごいですね。目指す数字はあるんですか?

つんく♂:数作っても金にはならないけど、リクエストがあったら嬉しいです。最近だとYouTubeとか、CDにならない世界があるじゃないですか。全然売り上げにならないけど、話題性があったりするとそういうのでも作りたいなとは思う。後はスタッフが計算して、金額で決めますかね。だから断ってしまうこともあるけど、僕的にはどんなものでも作りたいです。

タカハタ:僕は当時関わっていた時の楽曲は好きで、かっこいいのがいっぱいありますよね。太陽とシスコムーンなんてほんとに好きなんですよ。

つんく♂:僕もいまだに聴くからね。

タカハタ:いいですよね。『ASAYAN』(テレビ東京)からつんく♂プロデュースでヒットしたものは、男性カバーはできないんですかね?

つんく♂:できます。できるけど、バンドがやろうとすると、よっぽど尖ってないと「オリジナルよりかっこいいやん」にはなれないんじゃないかな。だから、なかなか手は出せないんだと思います。ただ、バンド君たちからのカバー申請とか依頼はちょいちょいあるので、世間には実はたくさんあると思う。

タカハタ:つんく♂さんの代名詞は「LOVEマシーン」じゃないですか。思い返せば、カラオケとかでも男子が歌っていたと思うんですよね。だから、ジェンダーレスな時代に、男性がカバーしてかっこいいのを聴いてみたいですけどね。

つんく♂:なるほど、ええなあ。ぜひ申請お待ちしてます(笑)。ところで、読者にわかりやすく解説していただくために質問します。『ASAYAN』の後はどんなことをやってました?

タカハタ:『ASAYAN』をやりながら、『SMAP×SMAP』(フジテレビ)の特別編で「SMAPプロモゲリラ」というのをやったんですよ。8ミリカメラを回しながら新曲のPVを撮る企画で。その後、『つんくタウン』(テレビ東京)など深夜番組があって、SMAPとは『チョナン・カン』(フジテレビ)、『SmaSTATION!!』(テレビ朝日)、SMAPのコンサート映像も担当しましたね。それで、チョナン・カン主演の映画『ホテル ビーナス』を作りました。あとは、鶴瓶さんの落語ツアーの演出、三宅裕司さんとショートムービー製作、震災の後に3.11を題材にした短編『びんた』、黒木瞳さんと『黒い10人と黒木瞳』(NHK)、そしてビートたけしさんと二宮和也くんで『赤めだか』(TBS)、小栗旬くん主演で山崎豊子さん原作『二つの祖国』を製作しました。そこから今作の『鳩の撃退法』につながっていきます。

タカハタ:意識してなかったんですけど、2008年前後で、それまでやっていたバラエティから離れたんですよね。四苦八苦したとしても脚本を書くのが楽しくて、今もそっちに向かっています。バラエティをつくることは、もうないと思います。

つんく♂:僕も年間100曲くらい作ってた時期があったけど、今は30曲くらいに減ったんですよ。だから、一つに込める熱量が高くなっちゃうんやけど、タカハタさんは熱を込めすぎたりしませんか? たくさん番組を作っていた頃のリズム感とは、全然違うわけじゃないですか。

タカハタ:熱を込めちゃいますね。だけど、テレビのバラエティは若い人が作らなきゃダメだと僕は思うんですよ。僕が最前線でやっていた時も30代でしたし。鈴木おさむくんは周りにも風呂敷を広げていてすごいと思いますけど、ベテランが居座って「先生」になるのはよくないと思うんです。だから僕は現場から離れたし、若いスタッフが若い作家を連れてきてやる方が面白くなると思います。

低予算でもとにかく映画を作りたい。

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つんく♂:作品数を作らなくなって、今のペースでクリエイターとして収入の面はどうなんですか?

タカハタ:テレビ番組をやっていた時の方が、よかったですよ。今は収入の面ではよくないけど、お金も使わないし、ギャラよりも良作をつくりたい、という欲求になりましたね。何年か前に、配給金額と出演者だけ決まっていて、あとは好きなことをやらせてもらえたのが楽しかったです。

つんく♂:僕と一緒で、作る欲求が高いんですね。

タカハタ:作りたいですね。話がずれますけど、TOKYO青春映画祭で僕も審査させてもらって、一つだけテクニカル的に群を抜いていた作品があったじゃないですか? 僕は高評価を出さなかったのは、あれだけプロっぽかったから。だけど、売れてないプロっぽかったんですよね。他の作品は、青春映画祭らしい初々しさとか、不器用ながら光り輝くものがあったけれど、売れてないのにプロっぽいのはちょっとな……と思って。TOKYO青春映画祭みたいな、初めての人が映画を上映できる機会は面白いし、良い人がこれからもっと出てくるんじゃないかと思いました。

つんく♂:『ASAYAN』も『つんくタウン』もそうやったけど、クリエイターもキャストも初々しいから、それだけで面白いですよね。ただ、モーニング娘。よりメロン記念日やってる気持ちやけどね(笑)。

タカハタ:だから、僕でできることがあればなんでもやりたいです。

つんく♂:『鳩の撃退法』を観て、こんな作品を作る人なんやと思ったら、もう離さないですよ。思うのは、作品も作ってほしいけど、タカハタさんは脚本がうまいからクリエイターの誰かをしごいてほしい。今日も昼間、オンラインでこれから製作する中2映画プロジェクトの監督たちと会ってたんやけど、みんなPCさえあれば作れるから最初からそこそこできるんですよ。僕たちの場合は、アマチュアバンドだとオーディションとか事務所に所属するとか、勝ち上がってかなきゃいけなかったけど、今はそうじゃない。

タカハタ:すぐに発表できますしね。

つんく♂:そうなんです。だから、手応えも感じられるから、下手すると「ちっちゃい師匠」みたいになっちゃう可能性がある。それはそれでそのまま行ってしまえばいいんだけど、それもそれで怖い。まあ、時代なんだろうけどね。ネット上で少々チヤホヤされたらみんなその気になってしまって、テレビよりもハードルの低いネットに流れていく。全てが自力で手に届くけど、情報の怖さを知らない危なさもあるよね。

タカハタ:危惧でもあって、希望でもありますよね。いつかテレビには、テレビでしかできない生放送しかいらない、みたいな時代もくると思うんですよ。大事なニュースしか流れない、とか。YouTubeもAbemaもバラエティ作ってますもんね。

つんく♂:だけど、温度感の話を言うと、この間の雨上がり決死隊の解散のように、メンバー間もだし、それまで一緒にやってた芸人仲間の間でも温度差が生まれちゃうんだなと思いました。どっちがいいか悪いかは別としてね。

タカハタ:宮迫さんは、YouTubeならやりたいことができるし、生活もできるからそっちにいったんですかね?

つんく♂:どうなんでしょうね。1年後はわからないですよね。結果として、宮迫がいいのかもしれないし、蛍ちゃんが正解かもしれない。彼らとは同世代やけど、僕らの世代は中途半端にテレビとネットの真ん中にいてしまったから、若い子たちから「今はこんなネットの使い方が面白いんですよ〜」って言われたら「そうなんか」って面白い方もやってみたくなるけど、詳しく知らないでなんでもやっちゃうと地雷踏んでしまってることもあるしね。でも、二の足踏み過ぎて「あ、先にやられてしまった!」なんて時は本当に悔しいしね。

「バラエティはなんでもできなきゃいけない」ビートたけしさんが語りかけてくれたこと


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タカハタ:映画の話に戻るんですけど、この映画に限らず、音楽家として劇伴は気になりますか? 「この音はないやろ」とか「このシーンには音が必要」とか。

つんく♂:僕が観た試写環境が良くなくって、音がこもってて、どこまで感じ取れたかわからないんです。けど、はっきりわかることは、監督が音にこだわりなく「とりあえず盛り上がる音入れといて」って感じで出来上がった作品と、監督も一緒に音のことも話し合って作っただろう映画作品は、見え方は全然違うってこと。僕らで言えば、新曲を作ってMVを作ってもらう時に、「映像はカッコ良くても、まったく音楽に興味ないやろな」という監督の作品と「めちゃくちゃ音楽好きなんやろな」という監督作品の差は、ものすごく出ますから。

タカハタ:監督によって100通りの現場があると思うので、劇伴のつけ方はまちまちなんですけど、僕なんかは結構具体的に打ち合わせしたんですね。他の作曲家で巨匠クラスになると、映画を観ながら自由につけることもあるそうなんです。劇版を誰にお願いするのかは大事なところで、僕の場合はちゃんと意見を言える人にしたいと思いましたね。

つんく♂:テレビバラエティと映画の現場は、どう違いますか? 中2映画の監督たちにアドバイスがほしいです。


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総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。