9年間、モーニング娘。のリーダーを務めた譜久村 聖から全メンバーへのメッセージ
つんく♂:譜久村からの全メンバーへのコメントをもらおうかな。俺の感想はあんまり入れず、どんどん語ってもらうパターンでいくね。じゃあ、17期の弓桁(朱琴)から。
譜久村:「加入したばかりの子に、私の熱量を合わせすぎたら駄目だよな」って最近思うんです。「気合いでやるよ!」って言われても「なんだその気合いって」ってなるだろうし(笑)。だからこそ、新メンバーに寄り添いながら、「モーニング娘。はこういうグループ」ってことを、伝えていきたいんですよ。
でも、朱琴ちゃんは最初からモーニング娘。っぽい気合いがある子で、「すぐに100曲覚えます!」みたいなメラメラした部分を感じます。今のモーニング娘。にしては珍しい自信家で、「私は絶対に受かる」と信じてオーディションを受けたり、自信を持って特技を披露したり、そういうところが魅力的ですよね。一方で、そういう子だからこそ、モーニング娘。のやり方に葛藤する時期が来るんじゃないのかな。グループに慣れていきながら、自分の良さをなくさずに輝いてほしいと思っています。
つんく♂:確かにね。
譜久村:井上春華ちゃんは、最初本当に硬くて、石みたいだなって思ったんです。揺らしても揺らしても硬い(笑)。でも最近は柔らかくなって、キャンペーンで2日間一緒に回った最終日に、春華ちゃんの方から自然に腕を組んでくれたんです。それがめちゃくちゃ嬉しくって、「こうやってファンの方を落としていくんだろうな」って思いました(笑)。期待していないところでキュンとさせる発言があるから、いっぱいドキドキさせるんだろうな〜。歌声が柔らかくて、落ち着いている感じなので、子守歌とかも似合いそう。これからリズミカルになるのが楽しみです。
つんく♂:リズムね。まあ、すぐ追いつくでしょう!
譜久村:もともとアイドルが好きな子なので、成長してくれると思います。櫻井は、ダンスとか、歌の在り方について、私も新メンバーには言わないようなことを加入当初から伝えてきた子なんです。
つんく♂:わかるわ〜! 言ったら、ちゃんとわかってくれそうなところがあるしな。
譜久村:不器用ながらも答えてくれるのが櫻井なんですよね。今も、ツアーで難しい曲に挑戦してるんですよ。歌い方についてたくさん言ってきたんですけど、最近「わ、上手!」と感心したフレーズがあるんです。前の櫻井は得意じゃなかったフレーズで、『Moonlight night ~月夜の晩だよ』の「唄を歌いながら」のパートなんですけど、2年目にして迫力が出てきたなって感じます。スーパーポジティブな櫻井が、根気強く頑張ったからこその迫力。どんどん歌割を掴んでいってほしいですね。
つんく♂ :そうだね。
譜久村:(山﨑)愛生ちゃんは感覚的に掴みにいく子ですね。『わがまま 気のまま 愛のジョーク』の「愛されたい」っていう歌詞を愛生ちゃんと私が歌うんですけど、愛生ちゃんはがなって、私はそのまま伸ばすことが多いんです。
でもライブで私ががなったことがあって。そうしたら愛生ちゃんは伸ばして歌ってくれたんですよ。たまたまかもしれないけど、「臨機応変に対応してくれたのかな」ってびっくり。前の人がどうなったらこうなる……みたいなのを、感覚的に調整してくれるところがあるのかなって思います。前の人のリズムが速くなっても、しっかり戻して歌うところもあって安心します。
つんく♂:確かに上手かもね。
譜久村:何を考えて歌っているのかわからない感じも魅力的です。同じ系統が(佐藤)優樹ちゃんなんですけど、優樹ちゃんは飛ぶ歌い方を意識してやるんです。でも愛生ちゃんは無意識でやってる感じがして、それがいいところ。後から「ここ、良かったね」と伝えたら、「テンション上がって、歌っちゃいました!」とか言うから、ナチュラルだなって(笑)。
あと、彼女はえりぽん(生田衣梨奈)のことが、大好きなんです。「どこが好きなの?」って聞いたら、「優しくて、可愛くって大好きです!」ってすごく薄い言葉が返ってくるんですけど(笑)。でも愛生ちゃんの中にはまだ言語化できない大好きが広がってるんだなって感じます。表現力が増してほしいという気持ちと、このままでいてほしい気持ちの両方がある子ですね。
つんく♂:(笑)。なるほどね。
譜久村:(岡村)ほまれは、加入後にモーニング娘。をどんどん好きになった子。先輩を尊敬している姿とか、この楽曲はこうありたいとか、年々気持ちが強くなっているからこそ、モーニング娘。で、道重(さゆみ)さんとか、飯窪(春菜)とか、私がやっていた加工音を託したいです。
つんく♂:加工音って?
譜久村:『What's Up? 愛はどうなのよ~』のニュアンス担当とか、『私のでっかい花』のセリフ担当とか。かっこいいモーニング娘。で、可愛い要素を歌ってくれる子が、ほまれなんじゃないかなって思っています。いろんな見せ方ができるタイプだけど、私が期待してる部分はそういうところ。もっと強くなれる子だなって思っています。
つんく♂:彼女の悩みは、入った頃から変わったよね。
譜久村:最初はぶんぶん頭を振ってる子でいろいろ悩んでいたんですよね。ダンスの仕方とか、歌い方に苦手意識を持ったこともあって、「頑張りたい」と思っていた今年の春に首を痛めて、思うようにいかなかったこともありました。頑張りすぎると体調を崩しちゃう子だけど、「ほまれは強くなりました!」ってキラキラしながら言ってくれたことがあって、きっともっと強くなれる子だなって思っています。その分期待してるし、もっとキラキラ輝いてほしいな。
つんく♂:北川(莉央)は?
譜久村:王道を走ってくれる子だなって最初から感じていますね。私、王道に憧れるんですよ。
つんく♂:王道って、どういうこと?
譜久村:いわゆるセンターになれるっていうか。
つんく♂:誰やろ。王道のセンターって。
譜久村:私の中では安倍なつみさんとか、後藤真希さんとか、鞘師里保ちゃんとか牧野(真莉愛)、北川って感じなんです。北川は、センターになれる堂々とした顔を持ってるなって感じます。すごく努力家だから、真ん中に立った時に映えるかなって。私だったら「申し訳ないとか、自分じゃ務まらないかも」とか思っちゃうけど、北川は努力して、真ん中に置かれたら、センターの顔になっていく子。だから運動音痴でダンス未経験だったのに、歌って踊れるようになったんじゃないかな。これからのモーニング娘。を作っていってほしいですね。
つんく♂:横山(玲奈)は?
譜久村:横山は、本人が楽しくやってくれたらそれで嬉しいなって思ってます(笑)。
つんく♂:安定してるの?
譜久村:安定してますよ。優等生だし、頭がいいなって感じるんですけど、えりぽんとか、優樹ちゃんと通じる部分があって、自由にさせたほうが輝くタイプです。
つんく♂:そうだね。
譜久村:規則とか、概念に縛られず、好きなことを好きな時にやってほしい。
つんく♂:すばらしい。北川がセンターだとしたら、そうじゃない子がいるからこそモーニング娘。が華やかになるんだよね。
譜久村:横山は真ん中に立てるし、端にも立てる。3番手もいける。なんでも絶対にやってくれるからこそ、信頼があります。次に、羽賀 (朱音)は、私が卒業発表してから隣から離れなくなって。
つんく♂:かわいいやん。
譜久村:本当に離れなくてくっついてくる。嬉しいんですけど、ふざけながらも私から何か吸収しようとしていますね。
つんく♂:彼女自身はアップダウンがあった時に、「譜久村に助けられた」っていう気持ちがあるからね。器用不器用でいったら、不器用やんか。
譜久村:あかねちん は、やる前に諦める癖がある気がしますね。すごい前のことだから今と違うかもしれないけど、「ダンスの、この振付部分をやりたい人」って聞かれても手をあげない子だったんです。後から聞いたら、「私ダンス担当じゃないんで」って言っていて。
つんく♂:最近どう? ポジティブなイメージがあるけど。
譜久村:最近、自信が出てきましたね。担当領域を気にしてないように見えます。とにかくモーニング娘。が好きって気持ちが強いかな。だからこそグループへのリスペクトもあって「私が出る幕じゃない」って思っちゃうのかもしれないけど。
つんく♂:私じゃなくてもいい、ってことか。
譜久村:割と引くところがあります。
つんく♂:顔からは強さが出てるけどね。それがモーニング娘。の凹凸なんだけど、保田(圭)がいて、後藤がいて、みたいな。
譜久村:牧野は、憧れを強く持った子で、発言とかに全部意味があるんです。チューブトップで肌を見せて、パンプスを履く姿って、真莉愛が憧れた℃-uteさんの姿とかなのかなって思います。
つんく♂:かわいいね。
譜久村:いっぱいジャンプして踊るのも、「メンバーと違う振りをする子がいていい」って、過去モーニング娘。の映像を見て感じたからだと思います。「私はこれでいこう」みたいな、憧れを目指していける。
真莉愛に「譜久村さんの可愛い曲の腰の動きが好きで」って言われたことがあって、彼女がそれ以上に動かそうと努力している姿を隣で見てきたんですけど、もっと自分の良さに気づいてほしいなって感じていました。
本来の真莉愛の良さを出してほしい。今は、それが歌なんですよね。真莉愛は、びっくりするくらい高い声が出るんです。盛り上がっている時の「FU-!」って声は、ホイッスルボイスみたいなんです。そのくらいテンションが上がってる真莉愛が、歌でも出たらいいな。本人は「歌が下手だから」っていうけど、うまくなってる。努力で追いつかないと駄目だと思っている部分があるけど、場を楽しめるようになってくれるといいな。
つんく♂:野中(美希)は?
譜久村:野中も安定してきましたね。自分の見せ方というか、「アイドルとしての野中美希は、こうしたい」が形成されています。それが安心して活動できる一つの要素になってますね。
つんく♂:いい方にいったよね。
譜久村:生きやすさを見つけた感じですね。今が楽しそうに感じるので、突き進んでほしいです。モーニング娘。にいないタイプの子で、計画性がしっかりあるし。
つんく♂:計画性?
譜久村:どちらかというと無計画で直観派が多いんですよ。
つんく♂:そうね(笑)。
譜久村:野中と北川は、計画的に実行するタイプ。横山もそっちかな。そういう子が数人いてくれるといいな。私は直感派だから。
つんく♂:本来はそうだもんね。
譜久村:小田は、どうなんだろう。
つんく♂:小田は自由でいいの? ちゃんとやってるのがいいの?
譜久村:行き来してる感じですね。私が小田に甘えてるからこそなんですけど、彼女はバランスをみる子なんですよ。モーニング娘。にしっとり歌う子が多かったらドライに歌うし、ボケが多いならツッコミに、髪が長い子が多かったら切る。そういうのをずっとやってくれるから、自由にもなれます。
つんく♂:譜久村が卒業したら、新しい小田が出てくる可能性が高いんや。
譜久村:そうですね。変化に対応する力が高い上に、それを楽しくノンストレスでできる子だなって思います。
つんく♂:確かに小さいころから大人と会話できるタイプだったもんね。
譜久村:小田が落ち着いているからこそ、出てない面白い部分があるのかもしれない。小田の面白さを引き出す会をしたいですね。道重さんと一緒だと出やすいんですけど。
つんく♂:たしかに。
譜久村:石田(亜佑美)はこの2~3年で、表現力が上がったなと思います。
つんく♂:上がったよね。
譜久村:パフォーマンスで世界の広がりを感じるんです。けど、楽屋で過ごしている姿は何も変わらなくて、何があったのかなって。あゆみんのラップが大好きです。『悲しくなるようなRainy day』は曲の主人公に見えて、普段は激しく熱量を上げていく子だけど、静かな青い炎が似合う人になったな。
つんく♂:実際はメルヘンチックなの? おやじっぽいの?
譜久村;どっちもあります。思考はメルヘンだけど、動きはおじさん、みたいな。
つんく♂:確かに(笑)!
譜久村:今後のモーニング娘。をこうしていきたいっていうのはしっかりあるんじゃないのかな。
つんく♂:石田は、そういうメールが多いタイプかな。譜久村が卒業した後、9期は衣梨(生田衣梨奈)だけか。
譜久村:えりぽんが9期で最後に残ると思っていなかったですね。よく「聖と一緒だったから続けてこれた。そうじゃなかったらすぐやめてた」って言ってくれるんです。お互いの駄目な部分を支えあってこれたと思うから、私もすごく助けられました。えりぽんは、熱く語るのが好きじゃないタイプで。
つんく♂:好きじゃない? 実際は熱いの?
譜久村:そこがわからないんです。ライブのある日にホテルで私と集まって、ご飯を食べながらライブとかMCの反省会を自然としてるんです。普段ならやらなそうなことを常にやってきたな。後輩との接し方とか、今日の反省をしっかりする子だから、最後まで自由か、まじめかわからなかった。
つんく♂:もし生田が男やったら、どう思う?
譜久村:男に生まれたほうが良かったんじゃないかと思う性格ですね。困っている子を助けようという仲間意識が高いです。
つんく♂:小田とはまた違う感じ?
譜久村:違いますね。たぶん生田は集団が苦手で、グループ事になると一回距離を置くタイプなんです。でも話してみると、ちゃんと考えてる。表で作る自分と、本当に思っていることにギャップがあるのかな。最後まで謎なんですけど、信念が強い子です。
【譜久村さん卒業後につんく♂が綴った感想コラムはこちら】
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