凡人が、天才に勝つ方法。
はじめまして、どうも、つんく♂です。
作詞・作曲を中心に音楽やエンタメ全般のプロデューサーをやっています。モーニング娘。のプロデュースから始めて、アイドルやアーティストなど、たくさんの作品を生み出してきました。
『リズム天国』などのゲームや、アニメにも関わっています。今は、「つんく♂エンタメ♪サロン」のメンバーで、「中2」をテーマにした映画制作を始めたばかりです。
声の病気をしたので今は歌えませんが、その分、日々の作品作りと、次世代のスターやクリエイターの応援に注力しています。
いちクリエイターとして、noteを始めます
さて、今月から、個人noteを本格的に始めてみようかなと。
というのも、僕の中には、自然に生活していて「これいいよ」との情報が2回以上重なって耳に入ってきたものが「売れる」「ヒットする」という過去データがあります。なので、そういうものに出会った時は、出来るだけすぐに試すように心がけています(僕はこれを「自分レーダー」と呼んでいます)。で、noteも引っかかってきたんです。
ところで、人間誰しも「天才!」なんて言われると嬉しいものです。僕なんかもTwitterなんかに「天才!」って書かれていると、キュンとくることがあります。でも本当のところどうだろう?
今日は、「天才と、そうじゃない人」の話でもしてみようかなと思います。
天才と、そうじゃない人。
結果から言うと、僕は天才ではありません。
まあ、本物の天才は、自分が天才だという自覚もないとは思うんですけどね。僕は、自分が天才ではない「凡人」だからこその突破口があると考えて、常に分析と実践を繰り返してきました。
よく、インタビューなどで「どんな時に曲が閃くんですか?」と聞かれます。世の天才たちはどんな時に曲が閃くのかわからないけど、僕の場合は「閃くのを待つのではなく、とにかく作り出す」。もしくは「絞り出す」「塗り重ねる」「削り出す」というような感覚で捉えています。
天才なら、いきなり「1000点!」みたいな作品が頭の中に降ってくるのかもしれないけど、僕は自分自身にそんな期待はしていません。
でも時に120点、平均92点以上を出します。プロだからです。さらに大事なのは、その仕事を世間にはいつも100点と思ってもらえるように工夫して備えること。
僕はいつの日からか、自分は「天才」でなく「プロ」なんだと自覚するようになっていったんです。そこから、物事が上手に進んでいくようになったと思います。
売れない時代、甘えと言い訳だらけだった僕
大阪でバンドを始めた頃の僕の実力は、きっと平均60点くらい。たまにラッキー安打で80点とかもあったでしょう。
アマチュア時代は学生で作詞作曲以外にすべきことも多く、ビラを作ったり、ライブそのものの稽古もあったりして、思えば年間3〜4曲しか作っていなかったんです。はい、全部言い訳ですね。時間の使い方が下手すぎただけ。
そのくせ、雑誌に出ている新人バンドとか、テレビで歌う新人アイドルの曲を聴いて、いつも悔しい気持ちを抱えていました。「俺もこんくらいの曲、真剣にやったらいつでも書けるわ!」って愚痴ってみたり、世間を批判したりしてました。はい、これも「何もやってない奴」がよく陥る典型的なケースです。
自分のアマチュアスピリッツに気がついたのは、売れて「本当のプロ」になってからのことです。売れていなかった時代は「名ばかりプロ」でした。大阪で人気バンドとなって、なんとかプロデビュー出来ましたが、そこから売れない時期がそこそこ長かったんです。
当時は落ち込んだし、「売れてるやつと何が違うんだ」と、めちゃくちゃ考えました。作っていたのは、ボツを含めて年間20〜30曲。ディレクターやプロデューサー、マネージャーに「これじゃシングルに出来ないね」とか「やっぱ才能ないんじゃない」とか言われて「くそ!」って思ってました。同時に「そうなのかなぁ。俺がダメなのかなぁ」と、塞ぎ込むこともありました。
でも、振り返って思います。アマチュア時代の年間3〜4曲とか、売れない時代の30曲なんて、単純に甘い! たいした数作ってない! 頑張っているうちに入らない! ってね。
たったこれだけの作品数で、自分に才能があるとかないとか悩まなくてもよかったんです。
天才じゃない人間がヒットを生むコツ
天才じゃない人間がヒット曲を出すコツは、いたってシンプル。とにかく数を作ることです。結局、自分の打率が1%なら、数を打つしかないってこと。
僕が一番作品を作っていた頃は、だいたい年間100〜130曲リリースしていました。ボツ曲も含めれば、気が遠くなる数を制作。そんな生活を、15年以上続けていました。
打率1%でもヒットが出ると、「なぜ今回は打てたのか」が、経験値として残ります。
当然、大量の曲を作るってことは、勉強しなきゃいけません。自分の知識だけでは、絶対に100曲も違うものを作れないからです。世間のヒット曲の研究もする。過去のヒット曲も調べる。米英のヒットチャートをチェックするだけでなく、ワールドミュージックも聴く。知識を詰め込んで、自分がそれまで培ってきた経験をもとに、分析して作っていきます。
結果、どんどん打率は上がっていきます。10曲の時点より100曲。100曲より1000曲作ったあとの方が、アウトプットの平均レベルは圧倒的に高くなる。手慣れて、小慣れて、自信もつくってやつです。
文章も同じ。noteはもちろん、自分のコメントやエッセイをバズらせたかったら、とにかく数(回数&量どちらも)を書くのが重要なのだと思います。
天才と凡人の違い
きっと、本当の意味での「天才」は、金儲けとか名誉とかを全部、完全に度外視して、単にやりたいことをひたすらやる人だと思います。
借金しようが、どんな格好してようが関係なく、とにかく「これがやりたい」を、貫ける人。もしくは、本当に頭の中に突然何かが降って湧いてくるような人。それが天才です。
そんな天才たちは、来月の仕事の予定が入ってようがいまいが、生活や家族のことは一切考えず、創作に没頭して生きていけるのかもしれません。正直、羨ましいし、憧れます。
僕の場合は、もちろん違います。「売れたい!」「目立ちたい!」「褒められたい!」などなどが動機でした。これまで「いたって普通の僕が世に結果を残すにはどうすべきか?」を、たくさん考えましたね。
凡人の中にも(プロアマ問わず)、才能がある人はたくさんいます。1回聴いたらメロディーを覚えちゃう人。頭にある記憶だけで、複雑な絵を描ける人。お店で食べた料理を、自分で再現してサッと作れちゃう人。
……こういう人たちが少し努力したら、ただの凡人は敵いません。いわゆる秀才といわれるような人ですかね? 音楽業界にもゴロゴロいて、そういう才能に遭遇するたびに、いつも悔しい気持ちになります。
凡人こそ「好き」を追求しよう
そんな僕なりに、凡人に大事な部分を考えました。結論は「下手の横好き」とか「好きこそものの上手なれ」です。とにかく「好き」に拘りました。好きなことなら、苦痛を感じることなく、誰でも続けられます。
注意点は、「得意」と「好き」を間違えないこと。
例えば、実家が中華料理屋で、「僕、餃子作るの得意です」という人がいたとします。最初は他の人に比べて有利なので、餃子作りもトントントンと進むでしょう。でも、結局好きじゃないので、途中で嫌になってきます。飽きてきます。「俺、何やってんだろう」って。
一方で、餃子作りが好きな人は、永遠に作ります。研究しながら、ああだこうだと毎日毎日チャレンジします。最終的に、大きな差がつきます。
これが「得意」と「好き」の、大きな違いなんです。
「好き」の先にあるものが大切
ここからが重要です。「好き」だけで終わると「小学生の絵日記」レベルです。「好きです」「楽しかったです」「また行きたいです」になってしまいます。
大事なのは、過去の記憶と「なぜ好きなのか」「なぜ好きになったのか」の分析。凡人が天才に勝つためには、この研究力や観察データの記憶がもっとも大切です。
さっきも書いたように、天才はそういう意味の努力をしません。すべて感覚で捉えます。なので、人に引き継げません。再現性がないんです。
「凡人」が「プロ」となって、「天才」に勝つためには、自分が気になったもの、好きになったもの、興味持ったもの。また、タイミングを逃して負けたことなどの瞬間を覚えておくことが重要です。
そして、しっかりと考察していくこと。なにもメモをとらなくてもいい。頭の中に残すのが大切なんです。
大事なのは「好き」のデータ化
大事なのは、「好き」のデータ化です。たとえば、ビートルズを気に入ったら「他のアーティストと何が違うのか」「日本の歌謡曲と何が違うのか」を考え、自分なりに分析すること。
他人に話した時に「君、それは違うよ」って言われても気にしないでください。自分の中で方程式が出来ていればいいんです。
僕は学生時代、急に「BOØWY」にハマった記憶があります。思春期には日本のロックを鼻で笑って、デュラン・デュランとかばっかり聴いていたのに、突然BOØWYが気になって仕方なくなったんです。
バイト先で、商店街の中で、入った飲食店で、ふと有線から流れてくるメロディに耳を持ってかれたんです。「あれ? またこの曲が流れてるな」と、自分レーダーが働きました。
まず、メロディーが引っかかる。歌詞も耳に残る。胸が苦しい。当時、クラスの中でも情報通だったはずの、僕の頭のデータリストにはない声。きっと、テレビで見る「ザ・ベストテン」とか、ラジオのヒットチャート番組にも入ってない歌手のはず。「誰だ?」と、気になって仕方なくなり、有線放送に電話で問い合わせました。
「ボウイの『ホンキー・トンキー・クレイジー』です」
聞いたことがないアーティスト名だったので、頭の中も「?」のまま、レンタルレコード屋さんをはしごして探しました。そこから、まあハマったね〜。こんなに歌えるバンド、日本にはいなかったもの。当時のバンドは、ドラムとギターがド派手で、ボーカルは高音でギャーギャーって言ってるイメージだったんです(当時の感想なので怒らないでください)。
「こういうのが聴きたかった!」を、見つけちゃった気がしました。歌と歌詞がしっかり入ってくるから、コピーした場合にも、ボーカルの歌唱力をアピることも出来る。結果的に、世の中がひっそりと求めてたぽっこりした穴をばっちり埋めたのがBOØWYだったから後に大ヒットしたと分析しました(長くなるので、BOØWYの凄さはまた今度詳しく語らせて!)。
他にも、
小学生の頃、堺正章さん主演の「西遊記」をかっこいいと思っていた記憶。
お、この「なめ猫」ってのは絶対に流行る! って思った記憶。
聖子ちゃんや中森明菜やキョンキョンでなく、「伊藤つかさ」が可愛いと思った記憶。
などなどを大切にしています。
「好き」を極めれば、天職に繋がる
僕が高校生の頃、おニャン子クラブが大フィーバーしていました。
「この子のこの写真が好き!」とか「新田恵利のこの写真、なんか彼女の良さが伝えきれていないな」とか「なんでジャケ写にこの写真を選ぶんや!」とか、いちいち突っ込みつつ、「俺だったらこうするな」とか、「これはきっとマネージャーが悪いんだな」とか、「この雑誌の編集はいつもセンスがええなぁ」とか、勝手に分析してました。
この経験は、プロデューサーになった後、モーニング娘。たちの写真選びにも役立ちました。100人中、80人くらいが「いいんじゃない?」って思う写真よりも、「あれ、なんか微妙な笑い顔。変じゃない?」80人が思っても、「このショットミラクル!」って絶賛するヤツが1人2人いる、クセのある写真の方を選ぶこともありました(基本的には誰がみても良いものは良いんやけどね)。
この感覚をずっと大切にしてきたからこそ、プロデューサーという「天職」につけたのだと思います。寝不足も苦にならなかったくらいに、仕事が楽しかったです。
凡人が、天才に勝つ方法
とにかく、自分の「好き」の要素、要因を徹底的に自己分析して、他の人が気がつく前に世間に伝えること。そして自分なりのアイデアを足し、オリジナルに変えていくことが重要です。
1億人の人がいて、天才はきっと上位10名(2、3人くらいかも?)。さらに、天才に近い、突き抜けた人が100人。残りの99,999,890人は、ただの凡人なんです。
ただの凡人は、結局どんぐりの背比べ。それだけに、ほんのちょっと人と違う角度からものを考えて、継続するだけで、ごぼう抜きできちゃいます。「少しの努力だけで、凡人の中の先頭には立てる」。そう思って、僕はこれまでやってきました。一時は、だいぶ前の方にいたこともあったなぁ……なんてね。
でも、ずっと先頭にいるためには、常に新しい挑戦をして、人とは違う角度で世の中を見続けなければいけません。なので、僕はnoteにもチャレンジすることにしました。ちゃんと、継続してみます。書いてみたら、やっぱり楽しいね。
よかったら、#つんくnote #つんく視点 で、感想をつぶやいてください(うれしかったら、僕もRTします!)。それでは、また今度。
(文 つんく♂ / 編集 小沢あや / イラスト みずしな孝之)
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