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つんく♂×アレンジャー・大久保薫 黄金タッグがどう生まれ発展してきた? 徹底解剖!

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」、今回の対談ゲストは、作曲家・アレンジャーの大久保薫さんです。アレンジを共にした楽曲数は191曲(2022年3月時点)と、つんく♂ワークスに欠かせない大久保さんですが、音楽への目覚めは遅く、つんく♂と出会うまでには長い下積みがあったのだとか。どのように編曲家への道を進み、つんく♂と出会い、現在に至ったのでしょうか。大久保さんの背景をつんく♂が深堀りします。
<文 山田宗太朗 / 編集 小沢あや(ピース株式会社)

幻のボツ曲を乗り越えて。「あの時、僕、泣きましたね……本当に悔しくて」

 つんく♂:Twitterで「つんく♂動きます!」的なやりとりがありつつ、ついに対談実現ってことで、嘘にならないでよかったです(笑)! 

 大久保:Twitterでつんく♂さんに絡みはしましたが、声が届かなかったら恥ずかしい感じになってたので、よかったです(笑)。対談、楽しみにしてました!

 つんく♂:よろしくね! さて、今日は対談として核心的な部分から入っていこうと思います。大久保くんがいつ頃からどんなふうに目覚めていったのかは追々聞いていくとして、まずは俺の中での、大久保アレンジの体感みたいなことを紐解いていこうか。平田アレンジャーとも長かったけれど、大久保くんとの付き合いも長いよね。なんだかんだ15年、もっとになるかな?

大久保:ですね! 最初にご一緒したのはモーニング娘。のアルバム『レインボー7』(’06)に収録された『無色透明なままで』でした。

つんく♂:『無色透明なままで』の記憶でいうと、ちょうどアルバム作りをしていて。アルバムとしていろんな幅を出したいって思ったので、いろんなアレンジャーにコンペ形式で参加してもらってた頃やと思う。なのでそのうちの1曲だったはず。

大久保:いきなり核心ですね(笑)。あの頃のつんく♂さんって、本当にいろんなアレンジャーの方とやってましたもんね。参加者も20名くらいいた印象があります。

つんく♂:そもそも大久保くんはどっから現れたんやろ? 「コンペに参加しますか?」みたいな感じで声がかかったのかな?

 大久保:はい。最初はコンペです。『無色透明なままで』のお題が「異国情緒漂う、ミドルからバラードの楽曲。なるべくドラムは出さず、あってもパーカッションで」でした。いきなり難しかったです。

 つんく♂:アルバム全体としてバランスを考えてたからやけど、「このアルバムに関しては、もうノリノリの曲は足りてるなぁ〜」と思ってた。ただ、この曲は個性的な曲にしたかったので、「新しいアレンジャーで新鮮に仕上がればいいなぁ」って思ってて。大久保くんのアレンジが個性的だったので採用になったんよね。

まあ、そんな最初の1曲があって、あの頃からアレンジしてもらっているけど、俺の中では、Berryz工房『付き合ってるのに片思い』('07)とモーニング娘。『雨の降らない星では愛せないだろう?』('09)。このあたりが「お! なんかええぞ~!」って思った最初の記憶。

 大久保:その頃は、まだ自分の中で「アイドルの音楽とはこういうものだ」という概念が抜けなかった頃です。「かわいくなくちゃ、キラキラしてなくちゃ」という思い込みに引っ張られながらも、一方では、「モーニング娘。は新しい音楽ジャンルを切り開いているグループだ」という思いもあり、その狭間で強力なものを出せないか試行錯誤していました。最初から狙ってちゃんと当てたというより、半信半疑で。

 つんく♂:あの段階で自信持ってやれていたら、変かもね(笑)。アレンジした曲の採用が決まった時は、どんな気持ちやった?

 大久保:それはもう、嬉しかったですね。まさかあのつんく♂さんがやっているグループのシングル曲をアレンジできるなんて。モーニング娘。のことは『ASAYAN』のオーディションの頃からファンとして見ていましたし、そもそもメジャーなアーティストのお仕事もやったことがなかったんです。ビビりながらやってました。とにかくガムシャラだった時代です。

 つんく♂:自信を持って提出してたとは思うけど、きっとボツも多かったよね。そんな中で『付き合ってるのに片思い』のアレンジが決まった時の気持ちって、「え? これでいいの?」なのか「そりゃそうでしょ!」なのか、どんな感覚やった?

大久保:制作の段階では、これで本当に強力な曲になっているのかわからなかったんです。判断基準がなかった。歌が入って、ミックスが完了して、最終的なものを聴いた時に、ようやく安心しました。「総合力で完成させていただいた」という感覚です。

 当時はボツもたくさんありましたね。つんく♂さんとのお仕事だと、時期ははっきり思い出せないんですけど、松浦亜弥さんのカップリング曲のアレンジを担当したことがあったんです。第一稿を提出した時にあまり良い返事をいただけず、第二稿で「少し近付いたかも」、第三稿で「ギターを生で録音しよう」となり、でも、その後、結局ボツになってしまって。「別の方にアレンジしてもらいます」と伝えられた時は、かなりショックでした。あの時、僕、泣きましたね……本当に悔しくて。

駆け出しだったから正解もわからず、強い音がどんなものかもわかっていなくて。今にして思えば、それ以前の仕事はマグレで完成まで辿り着いていただけ。心から相手を納得させることはできていなかったと思います。

つんく♂:最初ほど悔しいよね。経験値というか絶対数が少ないし。そのうち、場数をこなすと「色々あるうちの一つ」なんて思えるけど。「あ、いけそう!」なんて思って期待していたものがボツになると、才能そのものが「否定された」「終わった」と感じてしまうよね。でも正直、こういう世界ではひとつの作品の結果で凹んでる暇があったら、次の10作品の制作に取り掛かった方がいい。最近、とくに思う。

ちなみに、俺の中で最初に「お! 大久保来たかも~!」と思ったのは、モーニング娘。『グルグルJUMP』(’09)なんだよね。この曲で今までもやもやしてたいろんな「大久保」というアレンジャーの課題をピュンって乗り越えたと思う。感覚的にはシングルにしたいな~って気持ちでアルバムに入れた。「これは盛り上がるで〜」って思いながらね。どんなお題で投げてたか覚えてる?

 大久保:「アホっぽくて、最高潮に盛り上がる楽曲。でも子どもっぽくならないように」だったと思います。この曲はもともと、ジュンジュン、リンリン、(久住)小春の3人に合わせて、ちょっとアホっぽい曲としてつんく♂さんが書いてきたものでしたよね。

 はっきり覚えているのは「こういうお題の楽曲、初めて来たな。ここを乗り越えないと先はないぞ!」と思ったこと。モーニング娘。はライブでガンガンに盛り上がってナンボだと思っていたので、このお題をクリアできない人は必要ないだろうという緊張感がありました。

プリンスを聴いて音楽に目覚め、服装までプリンスだった(?)20代

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