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ビジネスの世界で活躍する人の共通点って? 北野唯我とつんく♂が語る、成功の法則

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」。今回はつんく♂の新刊『凡人が天才に勝つ方法』の出版を記念し、株式会社ワンキャリアの取締役CSOを務める北野唯我さんとキャリア対談! 
後編では、人を見るポイントや、凡人が活躍するために大切なことなどをトークしました。対談前編はこちら。
<文 伊藤美咲 / 編集 小沢あや(ピース株式会社)>


オーディションや採用のときに見るポイント

北野唯我さん

北野:つんく♂さんは音楽だけでなく、人を見るプロでもあるのかなと思うんですけど、どんなところを見ていますか?オーディションでは「おでこ出して」と言って、心を見せられるかを判断してると本に書いてありましたね。

つんく♂:オーディションのときで言うと、自分のエピソードトークでどれだけ本当のむき出しの自分を出せるかが重要です。もちろん散々擦ってきた鉄板トークも重要ですが、こっちが会話を掘り下げて突っ込んでみたり、もっと違う質問をした時に、何が出てくるかをチェックしてしまいます。

話を深掘りした時に「そこは触れられたくないです」って顔してスーッとシャッターを閉めちゃう子は、ここまでの人生もそれで乗り越えてきちゃってるので、要注意。僕らにとって本当に重要な子なら、そのシャッターを早めにOPENしておいてあげないといけない。

こういう重要な場面でこっちがスルーしてしまうと、「ああ、こんな感じでこの業界乗り切れるんだ〜」って、そのまま自分で自分を行儀良くさせる癖がついちゃう。なんとなく都合よく生きてくようになっちゃうから、5年後、10年後に苦労するんですよね。

北野:なるほど、参考にさせていただきます。僕は、「その人なりの人生の勝ちパターンを持っているか」を見ますね。自分の勝ちパターンを持っている人は、どんなルートを使ってでも自分が決めたことを成し遂げられる人が多いと思っています。

僕のチームに3月生まれの男性がいるんですけど、早生まれだから昔から体が小さくて、スポーツも勉強も苦手だったらしいんです。でも、子どもの頃から空気を読んで場を上手く繋げることが得意だった。彼はそこを自分の武器にして生存戦略を練ったと認識していて、すごくいいなと思いましたね。

つんく♂:良い人は自分なりの勝ちの法則があるってことですね。

北野:もちろんコミュニケーション能力なども大事ですが、他の人と違う視点で言うとそこですね。これだけ変化の激しい世の中です。Aルートがダメで、BとかCとかDのルートで行かなきゃいけないときに、自分の勝ちパターンを持っている人はその道を見つけられる可能性が高い。つんく♂さんは、凡人や天才が入り混じる組織やチーム作りで意識していることはありますか?

つんく♂

つんく♂:例えば、石川梨華は世間からしたら急にバーンって出てきたように見えたと思うけど、こっちとしては十分に温めていたんですよね。最初は「私なんて」って顔してたけど、タンポポに加入させたり、カントリー娘。の助っ人メンバーを体験させてみたりして、実績と経験値を積み上げていった。その流れがあって、「ザ☆ピ~ス!」のときには満を持してセンターとしてキラキラと輝きました。

本人的にも自信もついてきてた時期だったろうし、他のメンバーもその功績具合に納得してたと思います。理由なく「こいつは面白いから4番バッターにしよう」ってやり方はしないし、何かしらの根拠があるんですよね。WBCで村上選手が世間から不調と言われてもバッターボックスに立ち続けたのと同じで、こっちがイケてると思ったことはやっぱり外さないというか。

道重さゆみのキャラ作りもそうだけど、「大丈夫、やりきってこい!」「迷うな! イケてるから!」という気持ちを、僕サイドがしっかり持っておいてあげないとダメだなって思います。北野さんは会社の組織作りをどう考えてますか?

北野:組織作りは今でも結構悩みますね。僕らは人事異動のことを「フォーメーションを変える」と表現しています。格好つけてるわけではなく、本当にそうだと思っていて。僕も活躍できるフェーズと活躍できないフェーズを繰り返しているので、その時期によって配置を変えています。

そのときに大事なのが、「フォーメーションが変わる」ことの意味をそれぞれが理解すること。だからフォーメーションによっては、天才や秀才を置いて凡人が前面に出ることもあるけど、それは天才や秀才がダメになったわけではなく、今はそのフォーメーションが最適だというだけなんですよね。それってスポーツの世界だったら当たり前なのに、ビジネスだと昇格や降格みたいに思われちゃう。天才も秀才も凡人も必要だし、そのときの状況に合わせてフォーメーションを変えるようにしています。

つんく♂:ビジネスシーンで「活躍してる」の定義は、「売り上げが立っている」状態だと理解していいですか?

北野:一番わかりやすいのは、売り上げですね。ただ、会社の資産を増やすのは必ずしも売り上げだけではないので、もうちょっと広い意味です。

凡人が活躍するためには、まず「自分」を受け入れることが大事

つんく♂:ビジネスの世界で活躍する人の共通点は何だと思いますか?

北野:人によって才能の差はあれど、本当に適材適所があると思ってるんですよね。この会社で活躍できなかったから、他の会社でも上手くいかない、なんてことはないです。今いる会社で最高のパフォーマンスを出せるかどうか、かなと。つんく♂さんはどうですか?

つんく♂:僕が思うのは、おつかいが上手な人。「こいつがいてくれたらほんまに助かる」っていう人は、「コンビニでこれ買ってきて」と頼んだときの的確性があるんですよね。的確性がないと、自分の判断でいらんもん買ってきたりしちゃう。

もちろん逆もあって、「なんで俺、ちゃんと『このメーカーの赤のペンやで』って言わなかったんやろうか」とならないように、的確な指示を出すのも能力。アシスタント仕事がしっかりとできる人は、結果的に信頼されていくとすごく思います。

北野:たしかに。あと、僕は何でも良いので強みがある人がいいなと思います。なぜかというと、商売の根本は強みだから。みんながTOYOTAの車にお金を払うのは、TOYOTAの強みが車だからじゃないですか。ラーメン屋にお金を払うのは、その店はラーメンが強みだから。人は弱みではなく強みにお金を払うので、何かしらの強みを1つ持っているのは重要かなと思います。

つんく♂:強みが見つからない凡人や、秀でたいと考えている凡人がやったことがいいことって何だと思いますか?

北野:まずは「自分を受け入れること」が、ベースとして重要かなと思っています。自分が何者かを定義するときって、ダークサイドに陥るときもポジティブになれるときもあるんですよね。僕は10代や20代前半のときは自分が何者なのかを受け入れられなくて、すごく苦しかったんです。

つんく♂:それは名刺に肩書きが書けないから? 「デザイナー」とか「作詞家」とか。博報堂の社員でも「代理店の方ですよね」で終わってしまうから?

北野:それもあったと思います。でもデザイナーという肩書きがあったとしても、それが自分の全てではないじゃないですか。そこにすごく悩んでいました。結局、自分が何者なんだという結論は出ていないんですけど。

つんく♂:北野さんは本の中で「孤独になるのを許してあげる時間が必要」だと書いてありましたけど、あれはどういう意味ですか?

北野:僕は「鎖国」と「開国」を繰り返してキャリアを作ると言っていて。世の中にある魅力的なものも、鎖国と開国を繰り返して作られているんですよ。例えば、海外の方は日本に来たときに京都や奈良といった日本特有の文化がある場所に行くと思うんですけど、それは鎖国時代にできたものですよね。

一方、開国の時代に作られたものは合理的なものが多いのでスケールするんです。マクドナルドはめちゃくちゃ合理的ですが、海外から日本に来た人がわざわざ行くお店ではないですよね。このように、キャリアも鎖国と開国を繰り返してオリジナルのものを作っていくのが大事。だから鎖国の時期に、孤独になるのを許してあげることが必要だと思っています。

つんく♂:へ〜、おもしろい! 鎖国状態とは、具体的に言うとどんな状況ですか?

北野:自分がやるべきことや、好きなことをやり続けている状況です。仮に世の中から全く評価されなくても、自分のやっていることに熱中している期間。だから結構馬鹿にされるし、「何でそんなことまだやってるんだ」とも言われます。でもその期間がないと、独自のものを作ったり「この人には何かあるのかもしれない」という人にはなれないと考えています。

つんく♂:「芸能人になりたい、プロのバンドマンになりたい」と言ったときに、「アホなこと言うな」と言われて終わるか、そのアホなことを続けて結果を出すかということですね。それが孤独な時間かどうかは、わからんけど。

ちなみに、僕はモーニング娘。のメンバーに「やりたいことが変わったら、とっとと変えてもいいよ」と言ってきました。プロになること、プロであることに興味がなくなってきたら、「もういいやん、自分を追い込まなくていいよ」と思ってます。

凡人こそ、好きなものがたくさんあった方が良い

北野:市場の需要とやりたいことのバランスはどう考えてますか?「こういう曲作りたい」「この表現をしたい」という思いがあっても、「これってお客さんも求めてるっけ?」と考えることはないですか? ビジネスだと、マーケットインとプロダクトアウトと表現されますね。これは永遠のテーマな気がするんですけど、どう捉えてますか?

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