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卒業って、なんだろう。 宮本佳林と船木結に贈る言葉

2020年12月、アンジュルムの船木結さんとJuice=Juiceの宮本佳林さんが卒業。そこで、つんく♂からのメッセージ!2人へのコメント部分は、無料でお楽しみいただけるのでご心配なく!ハロー!プロジェクトのアイドルが長く続けられる理由などを綴った「アイドル卒業論」コラムは、購読者限定公開です。こちらもぜひ!
(文 つんく♂ / 編集 小沢あや

今やいろんなアイドルが「卒業」という言葉を使って、方向転換を行います。

いつからでしょうか……。ざくっと記憶にあるのはおニャン子クラブかな。たくさんいるメンバーの中から、やめてく子を送りだす時に「卒業」という言葉を使ってたように思います。

そんな記憶がある中、テレ東の「ASAYAN」の中で、つんく♂がプロデューサーとなり、なんだかんだがあって、モーニング娘。を結成。5人でのスタートです。

その頃は、当然ながらモーニング娘。が20年以上も続くなんて誰も想定していなかったし、それ以前に売れるかどうかすらわかりませんでした。ただなんとなく、番組も幸先よく、彼女らが紅白に出れたらラッキー。紅白当日の「解散発表!」なんてのを、美学というか、夢のように思い描きながらスタートさせたのも記憶しています。

自分自身のバンドもあったので、モーニング娘。を長く続けることを考えること自体にも、実はビビっていたのかもしれません。当時も、「BOØWYみたいに、一番ノってる時にササッと解散宣言するってかっこいいやん!」みたいに言ってたけど、心のどっかで、単に長期戦になることにビビってたんだと思います。

大人としての「責任」みたいなプレッシャーと、「もし俺みたいなのが、プロデューサーとして成功しちゃったら、何か反動みたいなのがあるんじゃないか」みたいなね。「甘い話にゃ罠がある」神話じゃないけど、それまでの僕の人生、単に一筋縄ではなかったからそう感じてたんです。

今日は「卒業って、なんだろう。」と題して、日本のアイドル史上における、つんく♂なりの「卒業論」を綴ります。

まず、コラムに入るまえに、ハロー!プロジェクトを卒業する、船木結と宮本佳林へのメッセージを送ります。

船木結と宮本佳林へ。卒業、おめでとう!

どうも、つんく♂です。この度、アンジュルムの船木結とJuice=Juice宮本佳林が「卒業」するとのこと。

「おめでとう!」

やっぱ、この言葉が似合う。女の子らにとって、みんなに「おめでとう!」と言われ、そして次のステージに突き進んでいく……。「おめでとう!」以外の言葉は似合わない。

そういえば、過去モーニング娘。のメンバーが卒業してく時も「ステージの上では悲しい、寂しい、辞めないで、なんて言葉を言わず、『おめでとう!』って、背中を押してあげるんだよ」って、何度も説明した気がする。

だって、本当は本人がなんだかんだ言いながらも、一番後ろ髪引かれてたりすると思うし。この場に及んで、心踏みとどまらせるような言葉は、やっぱりふさわしくない。

船木も、研修生時代のことはよく覚えてる。目鼻立ちのしっかりした、勇ましいタイプの子だった。彼女の歌をしっかり聞いて指導するべきころには、僕がプロデューサーを卒業してたけど(笑)、彼女の印象は勇ましく、俊敏で、なにかと適応能力の早い子。そういうイメージで見てました。

その後、カントリー・ガールズとアンジュルムを掛け持ちするほど、事務所にも信用されてたのを見ると、あの頃の僕の印象は間違っていなかったはずです。

ラストソロ曲は「帰りたくないな。」。うん。きっと本心だと思う。歌ってくれて、ありがとうね。

そして、宮本佳林。なんともいえない個性で、ずっとキラキラしてた。めちゃポジティブというか、歯を食いしばりながらも笑顔ちゃん! みたいな。男前な子。もっと正面から向き合って、歌やら何やら指導してあげたかったなぁ〜、って思う。

モーニング娘。にも欲しかったし、でもセンターに立つなら歴史(実績)のない別のユニットの方がいいか、と悩んだこともあった。

Juice=Juiceに加入し、スタート直後に怪我して少々足踏みしたのは、かわいそうに思ったが、その分、彼女は雑草のごとく、鋭く立ちあがった。相当悔しかったはず。でも、その姿を見て「かっこええ〜」って、思った記憶があります。

今回も卒業にあたって、宮本から「自分の最後のバースデーイベントでソロ曲、つんく♂さんの曲が歌いたいんです。何歌えばいいですかね?」と、泣かせるLINEが届いた。

結構、マジで考えて「I WISHかな」と答えた。やっぱ、宮本に「人生って素晴らしい〜♪」って、歌ってほしいやん。笑顔で、泣いてほしいやん。そんなふうに思って彼女に伝えました。無事成功したみたいやね。よかった。

さ、最後のステージ。どうぞ、最後までキラキラの佳林でいてください。

改めて、船木結、宮本佳林、卒業おめでとう! じゃ、またね。応援してるぜ!

2020年12月10日 つんく♂

卒業って、なんだろう。

ということで、ここからは「卒業って、なんだろう」というテーマで話させていただきます。

冒頭に「紅白出演が決まって、そこで『解散発表』が出来れば美しい」というような話を書きました。というのも、そもそもモーニング娘。は、テレビ東京の「ASAYAN」というオーディションバラエティという番組の中で始まった一つの企画だったからです。

まあ、今でいう『Nizi Project』みたいなもんです、と、断言するとあちこちからお小言もらいそうなのでイメージで受け止めてほしいんですが……。ざっくり、一般応募に始まって、勝ち抜いてプロデビューしちゃおう! って企画です。

テレビ番組ありきってことは、日本においてはワンクール単位での番組編成。スポンサーは、3ヶ月ごとに次のクールもスポンサードするかを決めていきます。

なので、当時の一般論として、アイドルを扱うテレビ番組も、1クールなら最短3ヶ月。この期間に、ひとつの流れを作って結果を出さなければなりません。好評なら、次のクールへともつれ込めます。当時、長くて2クール(半年)も扱ってもらえたら、御の字だったはず。

見てる側は、ひとつのキャラ(アーティスト)を半年もずっと追いかけるというのは、当時にしてみれば「長い」印象だったと思います。もし、番組で扱った歌手が半年かけて、売れたとしたら、そのあとはプロダクションとレコード会社でどうしていくか判断し、各社で展開させていくような流れだったわけですね。

つまり、番組は、また次のアイテムで勝負していきます。モーニング娘。は「ASAYAN」で上手くバズり、追加オーディションという過去にない変則技がバカウケ。3クール目に突入する、異例の展開になりました。(結果、2回目の紅白出場が決まって、「LOVEマシーン」が空前の大ヒット。もはや「国民的アイドル」とまで呼ばれるようになりました。)

ここまで来た時には、僕の「紅白で解散宣言」という夢は消えてなくなったも当然でしたね。なんせ、大人たちの鼻息は凄かったから(笑)。翌年の全国ツアーが決まり、更なるシングルのリリース予定、アルバムの予定、グッズの計画などなど、「ここまで来て引き返そうなんて言わせないぜ!」みたいなね(笑)。そんな雰囲気に包まれていきました。ある種、ゴールの見えないマラソンに突入した感。

以前は短かった、アイドルの寿命

思えば、モーニング娘。以前のアイドルの寿命というのは長くて4〜5年だったように思います。しかも、旬はそのうち約2年(あ、売れたとしてね)。「人気は長く続くものではない」と考えるのが常識でした。

それはなぜか。これまでのアイドルのあり方でいうと、出だし(デビュー前後)でガツっと労力とお金をかけて売り出す。当然、売れなければ次の新人にエネルギーを移行させていく、という考えでアイドル界隈が回っていました。

出だしが「良し!」となって、売れたとしても、そこまでには先行投資としての原価がごっそりかかってる。それまでに売れなかった新人にかけた分も含めると、すごい額です。

すると、スキャンダルを含めた、あらゆる場面でのミステイクが許されなくなってきます。スタッフもアイドルたちに対して、「あれはダメ」「それもダメ」「我慢しなさい」と高い防波堤を作りだします。「あなたは選ばれたアイドルなのよ。今、このチャンスを逃してどうするの」と、なっていくわけですね。

なんせ、一気に回収しないと時代はガンガン流れていくわけですし。当てた方も時間との戦いとなるわけです。大きな意味で「大人の事情」が満載となります。

しかし、この「売れた後の緊張感」をが保てるのは、おそらく2年くらいが限界なんだろうと思うんです。

青春まっさかりの女子たちが、一番楽しいはずの時期をじっと我慢する。使命や義務感を持ったとしてもやはり2年あたりが限界かなと。色恋だけでなく、いろんな心のバランスもね。もちろん、スタッフサイドも緊張感がかかるので、スタッフサイドの忍耐力も限界がやってくるでしょう。

「衣装が嫌だ」「新曲が気に食わない」あたりから始まって、寮生活でも夜中抜け出すだろうし、グループだとしたら、メンバーの悪口やいじめ。未成年だったら、飲酒や喫煙の問題とか、親関連との金銭トラブルとかね(みんながみんなじゃなないよ。例えばの話)。

すべてひっくるめて、スキャンダル含め、たくさんの事情(タネ)を抱え込んだドル箱スターたちをどう向き合って、どう緊張感を維持するのか、が大きな課題がやってきます。

ここで、舵をきる方向が2つ。

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総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。