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オンラインオーディションの良し悪しとは? つんく♂×Deview編集部対談

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」、対談企画第9回目ゲストは、様々な芸能オーディション情報を発信する株式会社oricon ME「Deview」編集部の水野誠志さん。長年にわたり芸能界に携わり続けている水野さんから、昨今のオーディション事情と秘密を徹底的にうかがいます。前編はオンラインオーディションの功罪徹底討論や、つんく♂流アイドルグループ論も。後編はこちら。
(文 田口俊輔 / 編集 小沢あや / 撮影 Shion Deto

つんく♂:本日はよろしくお願いします! 「中2映画プロジェクト」で「Deview」さんには去年・今年と、ずいぶんお世話になっております。

水野:こちらこそ! 直接お会いできて光栄です。

つんく♂:noteの連載を始めてから、対談企画はこれまでずっとオンラインでやってきたので、こうして直接話すのは不思議な感じです。水野さん、今の仕事はいつ頃から始めたのですか?

水野:1991年です。雑誌の「De☆View」は僕が入社した時はオリコンからではなく、勁文社という「ウルトラマン大百科」に代表される児童書や文芸書を出している出版社から発行されていまして。入社後すぐに「雑誌編集部」に配属され、雑誌「De☆View」に携わることになりました。そこから発行する会社が変り、雑誌がなくなり、Web版の「Deview」へと完全移行して……なんだかんだ30年間オーディションに関わってきています(笑)。

つんく♂:まったく移動せずに一つの媒体を30年手掛け続けるって、すごい!

つんく♂、“アイドル冬の時代”90年代を振り返る

つんく♂:水野さんは今、おいくつですか?

水野:実は1968年生まれ、つんく♂さんと同学年なんです。同学年のスターといえば、まさにつんく♂さん。

つんく♂:いやいや(笑)! 同学年のスターと言えば野茂英雄さん、歌手なら菊池桃子さん。役者の鈴木京香さんもやし、黒夢の清春さんもおりますよ。

水野:すごい方々ですよね。他には早生まれですが、福山雅治さんも同学年ですね。

つんく♂:そうやね。福山くんとはその昔同じレコード会社だったんですが、彼が先に売れてたので、何とも言えない絶妙な距離がありました(笑)。

水野:やはりライバル心があったんですね(笑)。

つんく♂:ライバル心というより、羨ましいというか。負けていられない焦りのようなものですかね。ところで、僕らの子どもの頃は『およげ!たいやきくん』や西城秀樹さんの『YOUNG MAN』、ピンク・レディー、キャンディーズが流行りで、スーパーカー・ブームみたいなものもあった。高度経済成長期と光化学スモッグと共に成長してきた世代ですね(笑)。

水野:確かに(笑)。歌謡界が輝いていた時代でしたよね。

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つんく♂:水野さんが「Deview」に携わり始めた91年頃って、アイドル界隈は桜っ子クラブや乙女塾、東京パフォーマンスドールなんかがクツクツと煮込まれてた時代で。Ribbonがいて、CoCoも5人で、瀬能あづさちゃんが辞める直前でした。その後、安室奈美恵ちゃんやSPEEDが出てくるあたりまでは、アイドル界隈にとっては苦難続きの時期でしたよね。実際には南青山少女歌劇団や制服向上委員会など少々マニアックなのも、音楽的にはなかなかハイクオリティで。オタク的には世間的に目立たない天国の時代でもありました。

水野:“アイドル冬の時代”と後々称される時期でしたね。この頃は女性シンガーやボーカリストが「ガールポップ」という括りで人気を得る流れがありました。この当時はバンドブームやアイドルブームの次を模索する時代だったのかもしれませんね。

つんく♂:うん。そのちょっと前に、山瀬まみちゃんが奥田民生さんや筋肉少女帯とかバンドの人たちを迎えて「親指姫」というアルバムを作って。サブカル方面への道が開拓された時代でもありましたね。

水野:まさに「渋谷系」の誕生とも呼応する感じがありましたね。バンドブームのおかげで色んな音楽性が入ってきて、それからは“プロデューサーの時代”に突入していく流れが生まれて。

つんく♂:織田哲郎さん、小室哲哉さん、シャ乱Qを手掛けてくれたムーンライダーズの白井良明さん……こうした方々が時代を引っ張っていきましたね。

水野:プロデューサーごとの特色が出て、音楽ジャンル・文化が細分化されていきレーベルごとに強い特色が出るようになったためか、「新しいものを作り出していこう!」という気概が業界全体であった良い時代でしたね。

広末涼子の誕生は「De☆View」のおかげ?

つんく♂:この30年をざっと振り返り、「Deview」の企画やオーディションを通じて「一番ビッグになったなあ!」と思った子は誰でした?

水野:相当いらっしゃいますね。例えば篠原涼子さん、蒼井優さん、ももいろクローバーZの百田夏菜子さん。広末涼子さんもデビューを読んでいたことがきっかけでしたね。

つんく♂:へぇ! そうそうたる面々やね。広末涼子ちゃんもそうだったんですね。

水野:広末さんは、中学2年生の時に地元高知で「De☆View」を読み、クレアラシルの「ぴかぴかフェイスコンテスト」を見つけ応募したところ、優勝してデビューのきっかけをつかんだんです。テレビ番組などで過去を振り返る企画があった時、広末さんは「『De☆View』という雑誌を読んでデビューしました」と、固有名詞を出してくれますし。東京と高知を結びつける役割を担えたのかな? と、嬉しくなりました。

つんく♂:当時はネットがない時代だし、高知県は民放チャンネルが少なくて、芸能との距離がめっちゃあったはず。最新の情報が遅れて入ってくる地方にとって、雑誌の持つ力って本当に大きかったと思います。

水野:そういう意味でアイドル冬の時代の後、「De☆View」は地方にとっての支えになっていたのかなと(笑)。

つんく♂:これまで数々のオーディションに携わってきて、「これは違った!」と思ったやり方や、「結果的に全然集まれへんかったなあ」というオーディションはありましたか?

水野:はい。「この時間に来た応募者全員の方に、採用担当が会います!」というスタイルのオーディションがあって、成功する事務所もあるのですが、提案したものの全然誰も集まらずに待ちぼうけをくらったこともあって(苦笑)。

つんく♂:悲しい(笑)!

水野:募集の案件ごとの性質に合う・合わないの応募のハードルがあると学びました。例えば、デモテープをちゃんと作る・映像を作って送るなど、応募のハードルを上げて良い人を集めるのか? 逆に写真一枚をメールで送る形にして、たくさんの人に会いそこから選別するのか? と、各事務所の募集主にとってベストな形をもっと考えなければいけないんですよね。

オンラインオーディションのハードルは?

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つんく♂:僕もその昔は雑誌の「De☆View」を手に取って読んでいましたよ。それが今は雑誌から完全にWebに移行しましたよね。メディアがネット主体になった現代において、「Deview」さんもその流れに乗って雑誌から移行したんですか?

水野:実は雑誌がなくなったからWebに移行したのではなく、20年ほど前から携帯電話を使っての応募ができる仕組みを作り、雑誌とWebを並行しながらオーディションを開催していたんですよ。

つんく♂:確か「NICE GIRL プロジェクト!(つんく♂プロデュースのJポップディーバ集団を目指したプロジェクト。チャオ ベッラ チンクエッティを輩出した)」のメンバー募集で「Deview」さんにお世話になったのが10年前ぐらい?

水野:それぐらいの時期ですね。その後スマホも普及し、いよいよネットから情報を得ていくのがスタンダードの時代へと変わっていったので、雑誌から徐々にシフトしていったという感じですね。15年には完全にWebへと移行しました。

つんく♂:Webへ移行したことによって、オーディションを受ける側の層や姿勢は変わりましたか? 特に今はコロナ禍の影響で、オンラインオーディションが当たり前になりましたよね。

水野:応募する方の層に大きな変化はありませんが、不思議なことに緊急事態宣言が出た昨年5、6月ごろに「Deview」の入会者が増えたんですよ。それはなんでだろう?と思い、事務所の人に色々と聞いたところ、こうした先行きの見えないご時世だからこそ、逆に自分のやりたいことにチャレンジしよう!と思い立って、応募する人が増えたのも理由の一つにあるようです。

つんく♂:暗い時代の中、「一度きりの人生やから派手にいったろ!」みたいな気持ち、わかるわ〜。

水野:応募方法がライトになってきているのも大きいと思います。「Deview」にはオンラインで履歴書を作れるシステムがあるのですが、それよりもっと簡単な応募方法……例えば「Twitterに、ハッシュタグを付けて投稿したらそれで応募完了!」というオーディションが増えたのも、受ける側の気持ちを軽くしてくれているのではないかなと思います。

つんく♂:そうした簡易的な応募の仕方、「Deview」さん的にはどう思いますか?

水野:良いことだと思っています。実は「これまで応募してこなかった人に応募してもらうために、どうリーチすべきか?」や「いかに応募のハードルを低くできるか?」という課題は、業界の人たちにとっての大きな悩みで。こうしてオンライン応募のスタイルが発展し、生まれた時から携帯がある世代にとっては、心理的なハードルが下がってきたのかな?とは思います。

つんく♂:タレント志望の子たちとしては、応募しやすい方がいいですよね。ただ、今って、アイドルブームの流れに乗って、小さい個人事務所みたいなのも増えてきていますよね?当然、オーディションにはお金がかかるので小さい事務所では大変です。もちろんDeviewとしても掲載や準備にお金もかかるわけですが、「Deviewに掲載してください!」と頼んできた事務所を、規模や組織の大きさで選別することもあるんですか? 全部引き受けてるわけじゃないでしょ!?

水野:規模が、というよりは“透明性”でしょうか。今は情報が溢れすぎているものの、オンライン上では全ての情報は横並びで、その事務所の評判の良し悪しの判別がつきづらくなっていて。そこで我々はこれまでの実績や経験を駆使し、「しっかりとした事務所なのか?」「芸能マネジメントの実績はあるのか?」「そもそも運営者は一体どんな人物でどんな経歴なのか?」と、バックボーンを調べていき、そこで判断して掲載をお断りすることがあります。

つんく♂:変なところを載せちゃうと「Deview」自体の評判も下がるからね。当然ですよ。

水野:最近、「自称:プロデューサー」だけどまったく実績もない男が、「デビューさせてあげる」と未成年の子を騙してひどいことをし、逮捕されたという事件がありましたよね。今は誰でも簡単にネットでコンタクトが取れるようになった分、悪意のある人物の参入が容易になっていますし、応募する側の危機意識も薄くなった気がします。そうした全く実績がないような会社や運営実績のない畑違いの人たち……応援すべき事務所ももちろんありますが、そこは信頼性が第一なので、私たちとしてはご遠慮願っています。

つんく♂:そうなると、オーディションを開く側も色々と考えて緊張のひもをちゃんと締めておかないといけないですね。どんなにセキュリティを固めたマンションでも、犯罪は起こるから。

オンラインオーディション、良い? 悪い?

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水野:つんく♂さんは、「中2映画プロジェクト」のオンラインオーディションの際、どんな気持ちで臨んでいました?

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