敏腕プロデューサーは、お祭りで花火を見ない。
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敏腕プロデューサーは、お祭りで花火を見ない。

幼少期から「自分は一番になれない」というコンプレックスを抱えていたつんく♂さん。そんな彼が、お祭りに参加して気が付いたこととは……? リーダーシップを発揮するために必要な要素をまとめた、書き下ろしコラムをお届けします。
(文 つんく♂ / 編集 小沢あや / イラスト みずしな孝之

僕の心の中の「ひねくれ小僧」が泣いている

「売れるために」とか、「時代の先を行くために」とか。たしかに、これらを達成するには、努力が必要だと思います。

先日、天才と凡人の話を書きました。結論は、「凡人は天才に勝てる」って話でした。が、もし「凡人」である僕に、他者と少し違う要素があるとしたら、「ひねくれ小僧」感というか、「あまのじゃく」なことです。

それは「一番でありたい」という気持ちの裏側にある、「だって俺、一番にはなれないやん」という、コンプレックスの裏返しから生まれたものかもしれません。

人気者になりたい、モテたい、という男児の基本的な感覚の中で、足も速かった。水泳もうまい。それなりにおしゃべり上手。髪の毛もちょっとサラサラ。まあ、足りないのはルックスかなぁ……。なんて思いながら生きていました。

だって、バレンタインにチョコも貰えるけれど、クラス1の人気者ではないという悔しさがあったんです。「なぜあの少年野球野郎に勝てないのか」「なんで、あのサービス精神の無い、男前なだけの野郎が評価されるんだ!?」とか。

もちろん、端的には僕より頭が良いやつも、僕より足が速いやつもいました。でも、「トータルでは、俺の方が優ってるやん!」って思ってた。

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(↑僕の小学校時代の自己分析、こんな感じね)

悔しい。

「一番になりたい!」という気持ちと同時に、「何がちゃうねん」「なんでやろ」を、常々考えていたように記憶してます。

さて今日は、そんなひねくれ小僧が、どうやって総合的なエンタメのプロデューサーになったのかを、お話させていただこうと思います。

「今」を素直によろこべなかった時代のこと

僕は今もそうなんですが、「素直によろこべない」という、あまのじゃく感が少しあります。

小学生の頃から褒められたい気持ちが強かったのに、良い結果が出せて褒められても、「ありがとうごさいました」が素直に言えない子ども。「ここでよろこんだら、そこで終わってまう。まだアカン」と、屁理屈こねていました。大人からしたら、あんまり可愛くない子どもだったかもしれません。

少し大人になってから、シャ乱Qというバンドで、アマチュア時代にNHKのバンドコンテストで優勝したときもそうでした。

小学生の時もクラスで、ずっと2番とか3番。中学生の時に頑張った陸上でも、東大阪市では1位なのに、府大会では9位で入選漏れ。到底、日本一にはなれなかったんです。

そんな今まで一度も「一番」らしい「一番」になれなかった僕が、ついに全国から3千以上もの参加者の中で日本一のバンドとなって優勝! 

本当に嬉しかったです。あんなに頑張って努力して、全ての日曜日や祝祭日など、全部をバンドに託して過ごした数年の集大成として、これほどのご褒美はありません。

「俺はやっと日本一になったんや! バンドやってるやつの頂点のボーカリストや!」って思ってめちゃうれしいはずなのに、それと同時に「よし、ここかからや。ここで満足せずこのまま芸能界に入って登っていくんや。まだ気を許したらあかんぞ」って心に浮かんでるので、強張った表情になってしまう。

そこに、もうひとりの僕が、「おい、よろこべよ。せめて、よろこんだ顔見せろよ。テレビやぞ、ガッツポーズくらいしろよ!」と、語りかけるんです。

1位になったことがないので、どうよろこんでいいのかわかってないってのもあるし、ひねくれてるから斜に構えてしまう。でも、「大阪からもファンがたくさん来てくれてるし、ここはめちゃええ顔してテレビに写っとかなあかん」っていう自分がいたんですね。

後からビデオで振り返っても、カメラを意識した顔でガッツポーズしてます。変なやつですね。「絶対うれしいはずやし、本当にうれしかったのに! なんで素直によろこばないんだ!?」と、今振り返っても思います。

こういうことが、人生の各所にあります。

実は、この「ひねくれ小僧」とか「あまのじゃく」感っての、自分では気が付かなかったんです。

ひとりで生きていたときは自分が標準なので、そんなにひねくれているとも思わなかったけど。結婚してから妻と会話していて、「あれ? 俺が変なんかな?」と、だんだん自覚していったように思います。

お祭りの楽しみ方が人と少し違った、少年時代の僕

僕の中に、「祭りの花火論」ってのがあります。というのも、みなさんそもそも祭りって好きですか? まあ、好きだよね。僕も好きです。

やっぱ、人がガヤガヤ集まって、屋台が並んでいるでしょ? そんなん見ながらブラブラする。これ、基本は楽しいんですよ。でも、ひねくれ小僧だから、素直に楽しめない部分も大きいんですね。

もちろん、小さい頃はおねだりして、綿菓子を買ってもらった記憶もあるし、金魚すくいもさせてもらってたんです。けど、300円とか出して「しゅ〜」ってなくなってく綿菓子を眺めながら「この分の300円で、近所の駄菓子屋ならどんだけたくさん買えたかな」とか、思ってしまって。

全然すくえなくて悔しかった金魚すくいの帰りに、ペット屋さんで金魚が1匹10円で売ってるのを見て、世知辛さを知るとかね。とうもろこしの原価を知ったり、あたりくじや輪投げのカラクリなどの方が気になって、まっすぐ楽しめない。初詣や、えべっさんなんかの日でも、裏道通って、さっとお参りして、人のいない方から出て、10分ですべきことを済ませてしまう子になってしまいました。

ここにあるのは何か? それは「悔しさ」です。

このお祭りを仕掛けてる人がいて、人がワーワー言うて、ビジネスが成り立っている。「僕は単に、そのワーワーの中の1人やん」って、気がついたんです。

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総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。