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芸能界における「営業」の真意と2021年版アイドルの必勝法

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」のご購読ありがとうございます。今回のつんく♂描き下ろしコラムのテーマは「100万RTされるより100人のアイドルにこそっと教えたい、2021型必勝法」です。
(文 つんく♂ / 編集 小沢あや / イラスト みずしな孝之

ソロアイドルから、グループアイドルの時代へ

1980年代に一大ブームを迎えた日本のアイドルシーン。それ以前は、「アイドル」といえば基本ソロ歌手。グループでも、せいぜい3人程度が多かったように思います。

そこに登場したのが、おニャン子クラブです。1980年代半ば、大人数のアイドルをひとつの枠に括って、「この子も好きだけども、あの子も好き」と、ファンが選り好み出来るシステムが導入されました。

歌のうまさに限らず、かわいいだけとも限らず、個性が重要な指標となり、「キャラ」という言葉が徐々に使われていくようにもなったのです。

時に、グループの中ではぶりっ子役、セクシー担当、お姉さん役、妹役、ボーイッシュ、悪役、いじられ役、小姑的にチクチクとこうるさくするタイプなど、いろいろなキャラクターのメンバーが存在し、ムーブメントを支えていくビジネススキームが出来ました。

その後、第一次アイドル氷河期がやってきて、1988年あたりから1990年代半ばあたりまで日本から、いわゆる「アイドルらしいアイドル」が、絶滅寸前に(実際にはこの時代にもたくさんのアイドルがいて、各社チャレンジしていましたが、この話はまたの機会にしますね)。

ガールズバンドやロック歌手、アーティスティックなボーカル。もしくは本格的風なダンスグループなど、形や色を変えて「アイドル」とは呼ばない(もしくは呼んではいけない)アイドルな人たちが、芸能界を支えるようになっていきました。

自分でいうのもなんですが、1990年代後半、そののちに「国民的アイドル」と呼ばれるモーニング娘。の誕生をきっかけに、ハロプロ時代に突入。日本に「アイドル」と呼ばれる産業、文化が戻ってきたように自負しておりました。2000年代に突入すると、AKB48を起爆剤に、ももクロなど5名以上のグループが当たり前の時代がやってきて、更にはK-POPの波も本格的にやってきます。

つまり、CDのセールスには封入される握手券が重要なアイテムとなりました。チャートインするにはグループ人数が多いほど有利だったわけです(そんな中、ソロだった松浦亜弥の実績は、大奮闘したと自負しております)。それ以降、アイドル的なソロ歌手のメジャーな場所での活躍は、握手券封入ブームも折り重なって、さらに存続が難しくなっていったように思います。

J-POPシーンでは、そのままグループアイドルが活躍することになります。2000年後半〜2010年前半までは、「アイドル戦国時代」とされながらも(期間・定義については諸説あります)、実際には地下〜半地下含めた、たくさんのアイドルが共存する世の中でした。アイドルシーン自体が拡大したことにより、『TOKYO IDOL FESTIVAL』のような大きなフェス的なイベントも、大成功するようになりました。

K-POPも定着し、アリーナ、球場クラスの単独公演も次々と成功させていきます。2020年にはNiziUという新しい女性グループも誕生しましたね。

これが日本の芸能界における、ザクザク年表です。

アイドルたちの家計簿(収入)って?

さて、一方でアイドルたちの家計簿(収入)はどうだったでしょうか。

僕はハロプロ勢ですら、彼女ら全員の収入を聞いたわけではないし、ましてやそれ以外の世間のアイドルたちがいくらもらってたかまったく知りません。なので、もちろんいい加減なことは言えません。

が、基本的にアイドル(や、歌手)が事務所に所属した場合、その収入(給料)は、臨時払いのようなものは別途として主に3つになります。

1.給料制
2.歩合制
3.基本給+歩合制

もちろん条件は事務所によって千差万別ですが、今のご時世、写真集もDVD・Blu-rayも無条件に大爆発するものではありません。写真集は、いまや3000冊売れれば大ヒットとも言われていますね。

例えば3000円の写真集が3000冊売れて、10%が印税比率だとしたら、90万円が入ってきます。事務所との歩合の契約が多く見積もって50%として(そんなにもらえるとも思えないですが)、45万円。

衣装とか、その間の給料とか交通費を誰の原価にしているにもよりますが、事務所負担ならば、きっと半分も分けてもらえないでしょう。仮に分けてもらえたとして、年に2冊出したとして、100万円くらいが収入。ご想像の通りリッチな生活とはいかない額面です。

それはCDも同じです。印税で食える時代ではないうえに、歌唱印税なんて安いもの。10人グループならひとり当たり一体いくらになるのでしょうか……。CDがよく売れた20年前なら別ですが、今はたくさん売れるわけではありません。音源は、YouTubeで無料でアップするために作る宣伝ツールです。

したがって、この5年ほどは、アイドル産業を下支えしてくれているのはライブ動員とグッズの売り上げです。CDよりも利益率が高いため、クリエイティブなものを作って、労力がかかるわりにリターンの少ない「音楽」に原価をかけるより、生写真やTシャツやタオルといったオリジナルグッズの生産に注力したほうが効率が良いのです。まあ、それが資本主義ですね。

ライブのチケットの売り上げだけでなく、チケットを優先的に販売するためのファンクラブの会員費の売り上げも、人気があればあるほど大きな収入源となりました。ちなみに、僕は音楽家ですので、質の良い音楽を作ることより「売れるグッズ屋さん」になっては本末転倒だと、常々心がけております。

結果として、事務所がしっかりしていればしてるほど(財力・体力・影響力などがあるという意味で)、まだ売り上げの立たない新人にも固定給を支払うことが出来るし、その基本給も高いわけです。アルバイトをする必要もなく、健康保険等も会社が負担していることでしょう。

それでも、これまでの芸能界ではCDを作って売ってきました。オリコンの上位に入れば、チャート番組で騒がれたり、音楽番組に出る目安になったりして、みんなこぞってランキングを意識してきました。テレビ番組は基本、無名の俳優やタレントは出られませんでしたが、新人歌手でも、たった1曲のヒットにより、テレビ番組に出演する権利を得るわけです。たとえば、過去の『ザ・ベストテン』や『ザ・トップテン』。今なら『ミュージックステーション』などの番組ですね。

チャートイン出来れば、自身でランキングを公式に発表することが出来るので、信頼や、宣伝効果にも繋がっていきました。ファンとしても「自分たちがランキングへと押し込んだ」という仲間意識も出来ていきます。

しかし、現在はオリコンチャートの影響力が薄まってしまいました。ヒットの指数を表すものが「CDが売れた枚数」だけだなんて、お茶の間のみなさんでも「そうじゃないでしょう?」とわかるようになったからです。YouTubeの再生数や、カラオケランキング、TikTok、サブスクリプションサービスなどでの再生回数などなど、さまざまな数値がヒット指数を表すようになりました。そうやってアイドル界隈においても、オリコンチャート神話が崩壊していったのです。

2020年、コロナ禍で苦境に立たされたアイドルたち

と、ここまでは2019年までのお話でした。2020年からは、ご存知のようにコロナ禍へ突入。コンサートやイベントをバンバン打つことも、CDの販促イベントで握手をすることも出来なくなりました。CDはおろか、グッズの即販会も出来ません。

「じゃあ、通販でタオル売ればいいやん!」といいますが、ああいうのはお祭りの出店と同じ。現場に行ってワイワイ言いながら、あれこれと買うから楽しいわけです。物販列に頑張って並んで、タオル1枚だけにしておくつもりが、ついでにあれこれたくさん買ってしまうからこそ、現場での気分が盛り上がるわけで。家にいながら、パソコンやスマホの前でバンバンぽちぽち購入はしないと思うんです。当然、全体的な物販売り上げも下がってきます。

しかし、事務所にはファンクラブもあるだろうし、アイドル本人がが個人的なSNSでの過剰な発信など、無料のファンサービスを個人でやられてしまうと、握手会など大事な接点の場所の価値が下がってしまうので、避けて欲しいところでもありますね。

さて。ここまで長期間にわたって思ったような活動が出来なくなってくると、経済的にも精神的にも煮詰まった状態が続きます。タレント本人も、イライラもするでしょう。「これでいいのか?」とも考えるだろうし、根本的に「私は何をやってるんだろう? そもそもアイドルってなんだろう」とか、考え始めちゃうわけですね。

芸能界における「営業」ってなんだ?

もう一度、時代を振り返ってみます。

事務所経営をしていた諸先輩の話を聞くと、1980年代までのアイドル運営は、どっちかというと営業がメインで仕事が成り立っていたそうです。つまり、レコードを売るためにレコード会社はテレビや雑誌にバンバン本人を出して、顔を売り、曲を聴いてもらい、「ええな!」となった人がレコードを買うわけですね。

握手会や特典会というと最近のイメージがありますが、レコードにも当時から握手券やポスター券がついていました。発売すると「あのテレビに出てたあの歌手が自分の街のレコード店にやってくる!」ってことで、握手券を持っている人はミニライブや握手会などのイベントに参加できたんです。

つまり、レコード会社が宣伝費として経費を使い、即販会イベントでレコード店とアイドルサイドが一緒になってレコードを売るわけです。この場合、アイドルサイドのギャラはほぼ出ません。せいぜいお弁当代と交通費、よくて数万円の日当しか事務所にも入らないはずです。レコードを売るために、みんなで痛み分けなわけですね。

さて、昨年から「営業」とか「闇営業」「直営業」。最近では「枕営業!?」なんて言葉も含めて、芸能界において「営業」という言葉をよく耳にしたと思います。今更聞けないけど、この「営業」ってなんだ!? って、みなさんも思っていませんか?

一般社会やテレビドラマなどに出てくる「営業」とか「営業課」「営業部長」というような「営業」とは違うような気がしますよね?

簡単に説明すると、世間的にいう「営業」とは、もし車のセールスマンなら車を売るためにお客様を探す、販売する、というようなことですね。家族や親戚にセールスしたり、そのほか店頭で売ったり、知り合いにプロモーションしたり、車を売るために行うような行為=営業(セールス)です。

実は、芸能界においても本来は同じ意味です。タレントやアイドルは、事務所にとっては「商品」。30分3万円とか1時間5万円とかで、タレントの時間を商品として、それを宣伝し「営業(セールス)」するわけです。

この事務所側の言葉である「営業」という言葉をタレント側が口にするので変な感じがするんですが、事務所側からしたら、レコードの販売はある種のプロモーションなのです。車でいえば、テレビCMやチラシとかパンフレットに近い感覚ですね。イベントは無料試乗会とか。で、営業を切って回収するというわけです。これを事務所を通さず直接仕事を受けるのが「直営業」。同じ行為は「闇営業」とも言われ、昨年は悪い意味で流行しましたね。要するに直営業すれば事務所の取り分も含めてタレントに入るので、タレントとしてはおいしいわけです。

これを前提に話を続けます。

週末は、例えば大阪→広島→福岡など、アイドルが大移動します。レコード販売のための即販会だけをやってもギャラはほぼ入らないんですが、どうせ地方にいくのならと、限られた時間内で可能な限り営業します。つまり歌ってサイン会や握手をする。時には歌だけ。時には撮影だけ、滞在時間も15分というようなものも含めて、どんどんこなして行きます。

そんな感じで、大阪でレコードの即販会が数カ所あった場合、その前後に出来るだけ営業をこなします。で、その日のうちに広島に移動して、翌朝からまたスーパーやレコード店関連に即販会のイベントに出演し、昼から夜にかけて営業をたくさんこなして、夜に福岡へ移動。翌朝もレコードの即販会をこなしながら、その間に営業や、時には地元のえらいおじさんとのお食事会というようなことをして東京に戻ってくるというような流れです。

気になる営業先ですが、レストランや商店街、旅館やホテルのステージ、スーパーやデパートのイベント広場、パチンコ屋さん、スナックや地元で有名な企業さん訪問など。いろんなパターンがあったと思います。

ギャラはおそらく数万円〜20万円、有名になれば50万円以上というケースもあったと思います。当時は、基本現金払いだったらしいですよ。1曲サクッと歌って稼ぐ、というのが流れだったようです。

これが80年代まではソロアイドルが活躍した大きな要因でもあるでしょう。1人の歌手が1回の週末だけで、数百万売り上げるわけですからね。なので当時、事務所側としても16歳くらいのアイドル歌手の給料として50万円とか100万円支払っても普通に成立していたわけです(当時のオリコン20位圏内歌手の場合ね)。

しかし、グループ人数が増えてくると、営業も難しくなります。移動も衣装も大変です。僕の記憶では、モーニング娘。はレコード販売のイベントのため日本全国飛び回りましたが、各地で営業をバンバンこなしてたイメージはあまりありません。スーパーやデパートでのミニコンサート的な営業はやってたような記憶もあるけど、どっちにしても営業的なイベントをやるなら、しっかり音楽が再現出来る環境でコンサートが出来るステージがある場所に限っていました。

アイドルは今、何をすべきか?

さて、アイドルにとって「営業」が大きな収入源であったことをここまで話してきましたが、昨年からコロナの影響で芸能界、アイドル界も大きく変化してしまいました。イベントやコンサートは当然、握手会やサイン会が行えなくなったわけで。では、アイドルや歌手は、いったいどうやって食べていけば良いのでしょうか?

でっかいホールでコンサート出来るようなアイドルさんだけでなく、自称でも良いですが、「アイドル」というカテゴリーで「食べたい」「稼ぎたい」「アイドルを続けたい」という人へのご提案です。コロナ禍で、アイドルたちは今、何をすべきか?

まず、ポートフォリオを作りなさい!

「え? ポートフォリオって何ですか?」って話ですが、自身のタイプ別の収入や、その比率のことを指します。まず、自分の収入を整理し、円グラフなどにして見やすくしてみましょう。自己資産の比率や、入出費を表す時によく使います。

「何をベースにしてアイドル活動を続けていくのか」を、しっかりと考えなければなりません。これまでは「営業」での収益を中心に、長期でスケジュールが抑えられる「舞台」や「各種ライブ」に出演。いわば、あんまり収入にならない、でもやりたいことを軸に、握手会やイベントなどで日銭を稼ぐ感覚だったと思います。

実際、稽古日数の長い舞台や、厳しい指導者がいる音楽ライブリハーサルもの案件に参加していると、芸能人のとしての充実感とかやりがいみたいなのを感じてしまうし、その日その日の打ち上げというか、「飯行こうぜ!」が楽しかったりするので、「たとえギャラが安くとも、やめられない!」ってのもあったとは思うんです。

しかし、コロナが深刻化すると、これらすべて白紙に。本番がないからリハーサルも無いわけで、結果、無収入……。そんなのもあって、昨年、アイドルたちも一斉にYouTubeを始めたりしましたね。

それ以前からブログ、インスタ、ツイッターは、いろんなアイドルがやってきました。自分の情報を発信したり、「◯◯食べたよ」とか「この服可愛いでしょ」とか「メイクのこだわり」を書いてみたりね。日記のようでもあり、宣伝告知でもあり。単にその時思いついたことを発信するとか、いろんな使い方はあるでしょう。

YouTubeで生配信をしたり、自分のチャンネルをもって番組を継続的に続けて登録者数を増やしたりしていく方法もあります。ダンスや動きに自信のある人は、TikTokも効果的でしょう。

でも、みなさん。ここで重要なことに気がつきませんか? そうです。ここまでであげたサービスは基本的に、すべて無料で楽しめるものばかりです。ファン側はお金を使いません。ということは、実はアイドルの収入にもなっていないわけです。ファンからすれば、YouTubeのスーパーチャットやSHOWROOMのようなサイトで投げ銭をする時にお金を必要とする感じです。

アイドル側として有名YouTuberとなってチャンネル登録者数100万人! なんてことになれば広告収益が上がるので話は別ですが、現実的ではありません。なので、アイドルサイドもSNSというのは、ほぼ無料で自分を切り売りしてる感覚です。これらすべてが自分の宣伝のためのものだとすると、どっかで回収しなければなりません。

さて、どうしますか? もうすでに実践してる人もたくさんいるとは思いますが、今日はつんく♂プロデューサー視点として、わかりやすく言語化したいと思います。

100万回のRTされるより100人のアイドルにこそっと教えたい、2021型必勝法。

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総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。