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新刊『凡人が天才に勝つ方法』つんく♂×編集者対談

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」。今回はつんく♂の新刊書籍『凡人が天才に勝つ方法:自分の中の「眠れる才能」を見つけ、劇的に伸ばす45の黄金ルール』発売を記念したnote対談番外編(全文無料)。ゲストは東洋経済新報社・中里有吾さん、フリー編集者・山崎潤子さんです。お2人はつんく♂の新刊書籍の担当編集者。書籍ができるまでの経緯や苦労話、編集者の推しポイント、出版業界の裏側まで語ってもらいました。


2000ページ分を1冊にまとめる編集作業

つんく♂

つんく♂:僕のnoteを書籍化しようとしてくださったきっかけというか、企画段階のところからお聞きしたいです。noteを読んでいただいて、東洋経済新報社の中里さんからお声がけをいただいたんですよね。書籍の企画って多方面にリサーチをすると思いますが、色んなnoteをチェックして声をかけるのか、それとも「おもしろい!」と思ってくださったのか……。

中里有吾さん

中里:私の場合は普段はnoteはとくに見ておらず、知り合いの編集者に「つんく♂さんのnote(「凡人が、天才に勝つ方法。」の記事)がめちゃくちゃおもしろい」と教えてもらったのがきっかけです。すぐに読んで「これは本になる!」と思いました。

まず「天才」と「凡人」という切り口もおもしろいし、その後に書かれた「天才、プロ、アマチュアじゃんけん」の記事も、これまでのビジネス書にはない、つんく♂さんの独自の視点と理論が展開されています。じゃんけんの話の「実はアマチュアが一番怖い」という締めも、すごくおもしろいと思いました。

無料で読めるネット記事が多い中で、書籍はお金を払って買っていただくものです。だからこそ、読者は「自分の仕事や人生に役立つもの」を求めています。

つんく♂さんのnoteは、単に読み物としておもしろいだけじゃなく、仕事や生活の役に立つヒントがたくさんちりばめられている。だから「書籍として売れる」と思いました。

そういった経緯で、書籍企画のご相談というか、ご提案をさせていただいた次第です。最初のご提案から時間がかかってしまいましたが、つんく♂さんのnote記事がどんどんたまって、いいタイミングで書籍化できたと思っています。

つんく♂:企画をしてくれたのは東洋経済新報社の中里さん、そしてフリー編集者の山崎さんが主に編集実務を担当してくださいました。実際の編集作業はどうでしたか?

山崎潤子さん

山崎:中里さんからつんく♂さんの本をつくるというお声がけをいただいて、「あのつんく♂さんの!  やりたい!」と最初は小躍りしました(笑)。で、いったんつんく♂さんのnoteを有料記事も含め、すべてWordのテキストにしてもらったのですが……。それがなんと1000ページ以上あったんです。

つんく♂:それはすごい(笑)。

山崎:まずはそれをすべて読んで……。当初、対談やセルフライナーノーツは省こうかと思いましたが、たとえばハロー!プロジェクトメンバーとのやりとりなどの中にも「本に入れたい!」という光る言葉や理論がちょこちょことありまして……。

これは「すべての言葉に真剣に向き合わなければ」と感じました。

つんく♂:なるほど。

山崎:でも、Wordの1000ページって、書籍にしたら2000ページ分以上なんです。なんとか半分に減らして、そこから書籍としての筋立てをして、さらに削って……みたいな作業を繰り返しました。

その作業に時間がかかってしまいましたが、先ほど中里さんがおっしゃったように、無料で読めるものもたくさんある中で、つんく♂さんのこれまでの膨大なnoteから、珠玉のものを選んでまとめられたという意味では、価値のある本に仕上がったと思います。

つんく♂:実際、僕が自分でまとめはじめたら、欲も出るだろうし、それこそエンドレスタイムに入るなと思って、いったんまとめてもらったんですよね。

それを最初に読んだのが、今年の春先だったかな。僕も日本に来る飛行機の中とかで手直しをはじめて……。

そうしたら、「そう簡単に終われへんなー」と思ったんですよ。原稿を触りはじめると、もっとディテールを足したくなるし、「ここちょっと違うな」っていう箇所は直したくなるしで。当初は5月か6月に出版予定だったんですよね。でも、これはちょっと無理やなーとなって……。

中里:はい。4カ月ほど延ばしましたね。

怒涛の修正作業の結果、本のクオリティが変化!

つんく♂:その間、だいぶ修正を入れてしまったのですが、それについてはどうでしたか? 答えづらいかもしれませんが。

山崎:たしかに、本当にたくさん修正や加筆があったので、校了直前まで「うわー、また修正だー」みたいに必死で直していました。LINEでやりとりをしていたわけですが、1日に修正事項が30件とかあって(笑)。

でも、つんく♂さんがたくさん修正・加筆を入れてくださったことで、書籍としてのクオリティは格段に上がったと思っています。

つんく♂さんの言葉を編集部でまとめさせていただいただけでは出せなかった「つんく♂味」みたいなものがどんどん加わって、凝縮されたというか。もちろん編集作業も修正作業も大変でしたが、あの修正・加筆がなければ、完成度はまったく違ったと思います。

最後までつんく♂さんが「これでもか」と手を入れてくださったことは、編集者としてはありがたいことです。人によっては「そのままでいいよ」というケースも少なくない中、つんく♂さんはやはりそうじゃなかった!

つんく♂:自分で「こだわりを捨てろ」とか書いているくせに、どうなんやろと思いながらも(笑)。

でも、やっぱり喉の病気をしてからは、「テキストで勝負しよう」という部分もあったので、細かいディテールまで、誤解のないようにきちんと直しておきたかったんです。もちろん、何気ない言葉が切り抜かれるこんな時代ですから、一つひとつの言葉のニュアンスも丁寧にしたいという気持ちもありました。

でも、結果的にとても読みやすい本になったなと思います。ビジネスパーソンだけが読む難しい本ではなく、中学生でも読める本にしたかったので。

中里:「著者の人の修正が終わらない」という点でいうと、私が常々思っていることが3つあります。

まず、編集者というのは助産師みたいなものなんですよね。編集者が本を生み出すわけでなく、著者が子ども(本)を産むのをお手伝いするイメージです。

ですから、「子ども(本)を産むのは著者」という意識があるので、本が売れなくなるような大きな変更でない限り、著者が最後まで細かく修正したいなら、それは最大限、尊重しようという意識はあります。

2つめは、本は(音楽などもそうでしょうが)、「作品」と「商品」の間をどうとるかというバランスだと思うんです。

編集者、出版社側としてはどうしても「商品」寄りになって、著者側は「作品」寄りになり、そこのバランスをとるのも仕事のひとつです。編集者側はつい、「今の時代はこういう言葉が刺さる」みたいに考えがちですが、最終的には(一定の商品性を担保できるなら)あとは「著者の作品性」を優先することが大切だなと思っています。

もう1つ「修正」でいうと、私も20年以上編集に携わって、「いい著者」と「そうでもない著者」の差って、赤字(修正)にあらわれるような気がしています。

「いい著者」の赤字は「確かに直したほうが伝わるな」「この言葉のほうが適切だな」という「納得感」があるんですよね。今回のつんく♂さんの赤字は「納得感のある赤字」でした。直せば直すほどよくなっていったというのが実感です。

著者によっては「別に、そこは直さなくても……」という「納得感のない赤字」の人もいたりはするのですが(笑)。

編集者の推しポイント①子どものお絵かきの加筆部分

つんく♂:僕の赤字で大きく変わったところはありましたか? 覚えている部分があれば、教えてください。

山崎:私が特に印象深いのが、序章の「子どものお絵かきの部分」です。
最初に私が編集したときは、つんく♂さんのnoteからサラリと短めにまとめたんです。

でも、あの部分をつんく♂さんが加筆で広げてくださったおかげで、私自身、本に対する印象がガラリと変わりました。「つんく♂さんの言いたいことってこれだったんだ」っていうのがすごく伝わったんです。

60ページからのくだりですが、読者のみなさんも、実際に読んでいただけると「ここか!」と、わかると思います。

つんく♂:あの部分って、「天才」と「凡人」の分かれ道に気がつく、一番重要なポイントだったんですよね。

山崎:つんく♂さんにいろいろ改稿していただいたことで、「すごい本」になったと思うんです。最初に「あなたは凡人です」と言われて、でも「実は天才だったのかも」と気づかされて、さらに「いつのまにか凡人になったんだ」と考えさせられる。でも最終的には「天才に勝てるかも」という勇気ももらえる。

その過程で自分を俯瞰して、自己と対峙できるきっかけになるというか。そういう読書体験ができる本だと思います。……これだけだと何を言っているかわからないと思うのですが、本を読んでいただければわかると思います。

編集者の推しポイント②「努力」という言葉のニュアンス

つんく♂:中里さんはどこか印象的な部分はありますか?

中里:私は40ページで、この本での「努力」という言葉の定義を丁寧に説明してくださったことですね。

努力ってつい、とくに説明を加えず、簡単に使ってしまう言葉ですが、つんく♂さんは「自分はこういう意味で使っています」という定義を細かく追加されて、「言葉に対する繊細さと読者に対する誠意」を感じました。

自分の思いをきちんと相手に届ける「デリバリーの意識」がある方だなと、赤字を見て改めて感じました。

つんく♂:僕はハロー!プロジェクトのメンバーたちとライブのリハーサルやレコーディングをする中で、「自分が肌感で覚えたことを10代前半の子たちにどう伝えるか」というのは、常に考えていたんです。

「努力」という言葉の意味でいえば、たとえばフィギュアスケート選手だった羽生結弦くんや浅田真央ちゃんは、3~4歳の頃から練習を重ねてきたわけですよね。放課後や土日など、普通の子が遊んでいる時間に、必死で練習する。

それはハロー!プロジェクトの子たちも同じで、土日や春休み、夏休みもレッスンするんです。でも、人間、遊びたくなるのも当然ですよね。

でも、金メダルをとれるような人たちの世界って、僕らが知っている世界じゃないところにあると思うんです。事務所から連絡入って「はい、何時〜何時までリハーサルね〜」って。

そんな時間分くらいしかレッスンしてないようでは、クラスでちょっとダンスうまい人にしかなれないよね。でも、金メダルを取れるような選手はきっと、みんなで合同でする練習以外の時間が本当の自分の練習時間なんじゃないか。おそらく寝てご飯食べてる以外ずっとそのこと考えてレッスンしてるんじゃないか、というような話をメンバーにもよくしていました。

そこまでできるのって、もちろん努力なんですが、「好き」がないと無理じゃないですか。

もちろん、努力してもダメかもしれない。僕も高校生の頃、学校から帰って寝るまでの間、アルバイトの休憩時間も、ずっとギターの練習をしていました。

それでも、学校には自分よりめっちゃ上手いやつがいたんですね。「自分は限界までやりきった」という自負と、それくらいやってもここまでやという自分のスケール感も知れました。それでもバンドでプロになるにはどうすればいいか、を考えました。

僕のギターはここまでだけど、上手いメンバーとバンドを組むことは可能だ。僕のいい部分を生かすには僕はボーカルに徹すれば良い。ここに的を絞って先に進もう。そう頭を切り替えました。もちろん、趣味程度なら好きなときに好きなようにやればいいんですけど。クラスで自慢するには十分な技術は得ていましたし。

そういうことを踏まえて、ハロー!プロジェクトの子たちにも、「どれだけ休みの日や空き時間、どれだけの時間を練習に使えるかが勝負だ」という話はよくしていました。それが嫌なら続かない。好きならできるはずだって。
それって、わかりやすくいえば「努力」だけど、一般的な意味の「努力」とも違うんだよなって思ったわけです。なので「努力」の意味に関して、注釈を入れたくなったって感覚です。

中里:だから「努力」という言葉を軽々しく使うことに、違和感を覚えられたわけですね。

プロ同士の戦いに「NO」はない

つんく♂:本の中で好きな言葉があれば教えてください。

山崎:「最初からNOを言う人は伸びない」は、なるほどと思いました。
これは素質というより本人のやる気の問題であって、逃げ腰になるより、とりあえずチャレンジしてみることの大切さですよね。たくさんの若い子たちを見てきたつんく♂さんの言葉だからこそ、説得力がありました。

つんく♂:6月に亡くなられた夏まゆみ先生には、モーニング娘。をはじめ、たくさんの楽曲で振り付けを担当していただきました。彼女とのエピソードを思い出したんですが、そういえば夏先生もNOを言わない人でした。
ぎりぎりになって僕が「ここをちょっと変えたい」と言うと、当日であろうが、即座に「やりましょう!(でも、ちょっとだけ時間ちょうだい)」みたいにおっしゃる。「今からなんて無理」「もうこれだけやってきたのに」とは絶対に言わなかったですね。

山崎:なるほど。メンバーたちだけじゃなく、つんく♂さんがお仕事の中でお会いになってきた方々もそうだったんですね。

つんく♂:今回の本にしても、僕が最後の詰めで次々と修正をお願いしたときに「つんく♂さん、もう無理ですよ」って言われたら、僕も「もういいか」って、思ったかもしれません。

山崎:たしかに……。

つんく♂:最後まで修正を飲んでくれて、そのうえで「ここはわかりました」「ここはこうしたほうがいいです」という意見が返ってきた。それで僕も納得したわけです。

そういったやりとりが最後までやれるかどうかは、「プロの戦い」になりますよね。アマチュア向けの書道教室の先生やったら、生徒さんの機嫌がいいように褒めて「また来週ね」でいいんですが。

夏先生にしても「先生ちょっと違うねん」って言っても、イラッとする姿は、少なくとも僕は見たことはないです。若い子たちの場合、やっぱり嫌だと思ったら、どうしても顔に出てしまう。でも、伸びる子は「なるほどなるほど」という顔をしています。

山崎:なるほど。編集段階の話までに言及してくださり、うれしいです!

つんく♂:会ったことがないまま始まったけど、今ではこのチームでやれたんだっていうスッキリ感はあるよね。

山崎:はい。勝手な感想ですが、最後さらっと終わってしまったら生まれなかった信頼関係が、最後の怒涛の修正によって生まれたと勝手に思っています。つんく♂さんの赤字に意見をさせていただいたり、逆につんく♂さんに「ここおかしくない?」と突っ込んでいただいたり。

つんく♂:noteの記事から文章を抽出しているから、つなげたときに少し矛盾も出てきたんですよね。この章ではこうまとめているのに、こっちの章では違うまとめ方をしててちょっと違うニュアンスになってるぞ! と。ぞれぞれnoteとしては間違ったことは言ってないんですが、1冊にするとどうも辻褄が合わない。でも、今回1冊にまとめることで僕の頭の中も整理でき、うまく繋がったので、矛盾も解消されてよかったと思っています。

中里:1冊に体系立ててまとめることで、つんく♂さんの考えがわかりやすく表現できたなと思います。noteを読んでくださっている読者のみなさんにも、しっくりくるというか。もちろん、つんく♂さんの修正があったからこそですが。

出版業界のリアルな裏話!

つんく♂:少し話は変わりますが、今の出版業界って、実際どんな感じですか?

中里:出版業界全体はダウントレンドではありますが、雑誌と書籍でいえば、雑誌の落ち込みが激しくて、書籍はそれに比べるとまだ割と踏み止まっている状況です。昔は業界全体で雑誌の売り上げ規模のほうが大きかったのですが、いまは書籍が逆転しています。それにともなって電子書籍も伸びている状況です。

音楽もそうでしょうが、読者も商品も細分化していて、年間で100万部を超えるミリオンセラーが1冊も出ない年もあります。「みんなが同じものを読む」という時代ではなくなっている感覚はありますね。

つんく♂:今回の本は、ビジネス書として書店に置かれる予定ですか?

中里:はい。「ビジネス書」と「タレント本」コーナーの両方に置かれることを目指して作りました。

ビジネス書というと、昔は「決算書の読み方」とか「マーケティングの基本」といった「ザ・ビジネス書」みたいなものが中心でしたが、現在ではもう少し定義があいまいで、「働く男女、ビジネスパーソンが読むもの=ビジネス書」という位置づけになっています。

「話し方」や「メンタル」、広い意味では「教育」「子育て」のようなものも、ビジネス書のくくりになっています。この『凡人が天才に勝つ方法』も、ビジネス書として売りたいと考えています。

つんく♂:出版社側としては、この本の個性というか、ここが他と違う、これがあるから売れるみたいなものがあれば、教えてください。

中里:売れるポテンシャルというと、1つは「書店での扱われ方」です。
芸能人のいわゆる「タレント本」であれば、書店でも「タレント本のコーナー」にしか置かれませんが、この本は「タレント本のコーナー」に加えて、「ビジネス書のコーナー」にも置かれると思っています。

本をどこに並べるかは最終的には現場の書店員さんが決めますが、「タレント本の売り場」に行く人よりも、やはり「ビジネス書の売り場」に行く人のほうが多いわけで、編集者としても「書店のどこに置かれるか」は常に意識して作っています。

たとえば、普通の「着物の本」なら着物のコーナーにしか置かれませんが、「ビジネスエリートが知っておきたい着物の教養」とすればビジネス書のコーナーに置かれるわけです。

そういう意味では、たんに著名な方のタレント本ではなく、「ビジネス書として勝負できる」のがこの本の強みですし、若い世代はもちろん、つんく♂さんの曲を聴いていた40代、50代の方の目にも留まると思います。

「売れるポテンシャル」のもう1つは、読者に「本当に」役立つ本ということです。先ほども少し話しましたが、読者は「自分に役立つ、リターンが明確な本」を選ぶ傾向があり、そこで重要になるのは「誰に何を教えてほしいか」といった点なんです。

たとえば、現在の大谷翔平さんが「凡人が天才に勝つ方法」というタイトルの本を書いても、「いやいや、そうはいっても大谷くんは天才だし」みたいな感じで説得力が弱い気がしますよね。

でも、プロデューサーとしてたくさんの人を育ててきた実績のあるつんく♂さんが「凡人が天才に勝つ方法」、つまり「自分の才能をどう見つけ、伸ばしていくのか」というのを教えてくれるとなれば、「ああ、それこそつんく♂さんに教えてほしいこと!」と読者の中で、「『教えてほしいテーマ』と『その人(著者)』がマッチする」わけです。

逆に言えば、「つんく♂さんが教えてくれる早起き健康法」だったら、「それは別につんく♂さんに教えてもらわなくても……」と思う人もいるはずです(笑)。

つんく♂:たしかに(笑)。

中里:読者が著者に対して「どんなリスペクト」を抱いてるか、それを本の内容に重ね合わせるのが、売れる本づくりのポイントだと思っています。

つんく♂:いわゆる一般的な自己啓発本との違いは何かありますか?

中里:「方法論がすごく具体的なところ」でしょうか。たとえば「好きなことを追求しよう」みたいなことは、他の方もおっしゃっていますよね。でも、普通の人はその「好きなこと」がわからずに、そこで立ち止まってしまうんです。「それができないから困っているんだよ……」って。

本書では「好きがわからなくなったら、『中2の頃の好きなもの』を思い出してみよう、そこにヒントがある」といったように、一歩踏み込んで、きちんと進むべき道を示してくれる。実はここまで言ってくれる本ってなかなかないんです。「誰が読んでも、自分の原点を探すヒントになる」という点が、本としての強みだと思っています。

男女・年代問わず、多面的に読めるスルメ本

つんく♂:編集してきた中で、気になったことや印象深かったことがさらにあれば、教えてください。

山崎:「みんな子どもの頃は天才だったのに、いつのまにか凡人になる」といった部分は、自分を振り返りながら読みました。

私は比較的自由に育てられてきたほうだとは思いますが、やっぱり親や先生、世間からの「あれやっちゃだめ」「これやっちゃだめ」の繰り返し、友人や周囲からの「そんなの無理じゃない?」「そんなことしないほうがいいんじゃない?」っていう積み重ねにかなり影響されてきたのかも、と気づかされました。

逆にいえば、もっと好きなことを突き詰めて行動できていれば、もっと何かできたかもみたいな(笑)。もちろんできなかったかもしれないけれど、自分を見つめ直すという意味で、一生残る読書体験になりました。

つんく♂:あの部分は、自分自身の経験と我が子の子育てがあったからこそ書けたんです。そうはいっても子どもを叱らないわけにはいかなくて、子どもたちがママに叱られて、次からできるようになることもあれば、これは直らんやろうなーって思うこともあったりね。

そういえば、もうひとつ気になるのが、今回山崎さんに編集の実務をしていただきましたが、「女性の視点」として何か気になったことはありますか?

山崎:私は仕事柄、ジェンダー的な部分は敏感なつもりではあるんですが、つんく♂さんの文章ってジェンダーを感じさせないというか、非常にフラットな方だなと感じました。

そもそもつんく♂さんは、私から見たら、天上人みたいな存在です。私は世代的に『ASAYAN』のオーディションをリアルタイムで観て、『LOVEマシーン』はじめハロー!プロジェクト縛りで朝までカラオケしていたような人間ですから、つんく♂さんが「僕も凡人です」っていうところから、同じ目線でいろいろ書いてくださっているのは、感動しましたね。

つんく♂:男性が読んでも女性が読んでも、あるいは中学生が読んで違和感がない本になっているでしょうか?

山崎:はい。もちろん男女問わず、若い人が読んでもいいし、むしろ40代、50代にも刺さるんじゃないかと思います。なぜなら「じゃんけん」のところの「凡人でも、プロになれば天才に勝てる」という理論は、長い間仕事を頑張ってきた人にとって、自分がやってきたことは間違いじゃなかったというエールにもなるし、自分を肯定できる部分でもあります。

中里:社内でもいろいろな部署、いろいろな年代の人にゲラを読んでもらいましたが、若い人たちは前半のここが刺さるとか、人によって刺さる部分が違うというか、「万華鏡」のような「多面的に読める本」だと思います。僕らも3年後に読んだら、また違う印象があるんじゃないかという気がしています。

山崎:そうそう。まさに「スルメのような本」なんです。

つんく♂「いい感じにジャストミートできました」

つんく♂:僕の曲もそうですが、「誰に聞かせたいのか」「ターゲットはどの層か」と突っ込まれることがあります。そのあたりはどうですか?

中里:基本的に、ビジネス書をよく買う層というのは30〜40代の働く男女です。男女比でいえば6:4くらい。ですから、基本的にはその辺りの層を狙ってつくるのがセオリーになります。

この本もその辺りを狙ってはいますが、でもその層だけに刺さる本だと、なかなか広がらないんですよね。だから10代、20代の若い層、あるいは60代、70代の人生をリタイアしたような人たちにも刺さる内容を入れよう、と意識していつも編集しています。

つんく♂:たとえば『LOVEマシーン』にしても、アイドルソングなのに大人の音楽好きな人たちも評価してくれたんですよね。10代、20代に向けてとか、狭いところを狙って打ちにいったわけではないですが、やはり満遍なく聴いてもらえるというのは理想です。

今回の本も、いい感じでジャストミートしたというか、下手したらものすごい空振りかもしれないけど、「タイトに振り抜けたな」という感覚はありました。『LOVEマシーン』が完成したときのような手応えがあります。

山崎:うれしい! つんく♂さんのその言葉だけでも、作ってよかったです。

中里:うれしいですよね。

つんく♂:自分らで自画自賛していてもしかたないけど(笑)。でも、最終的に「天才と凡人」をテーマに絞れたことは、僕はよかったと思っています。

「凡人パワー」こそが日本を変える!?

つんく♂:今回の本について、何か質問があればお願いします。

山崎:先ほども少し触れましたが、つんく♂さんほどのものすごい実績のある方が、いきなり「僕は凡人」とおっしゃる。noteで「凡人が、天才に勝つ方法。」という記事を書こうと思ったきっかけはなんだったんでしょうか?

つんく♂:本にも書いたように、僕が見ても本当の天才、つまり世の中には敵わない人たちがたくさんいます。天才の定義は時代にもよるかもしれませんが、まずはそういう側面があります。

でも、日本を、そして世界を支えている人たちって、ほとんど凡人なんですよ。そんな彼らが「自分はもっとやれる」「がんばろう」と思えないと、ダメだと思うんですよね。

「僕ら凡人だけど、ゴボウ抜きしてやろうぜ!」っていう気持ちが大切で、これは自分に対してもそう思っています。

山崎:たしかに、自分を含め世の中の大部分を占める凡人が才能を磨けるかどうかで、国力といった大きな話にもつながってきますよね。

つんく♂:たとえばアメリカではアルバイトの最初の時給で15ドル、2000円超えます。日本の時給と比べると言葉も出なくなってしまいます。選ばれたキャリアのみなさんだけに日本を任せるんじゃなく、「凡人が総力して頑張れば、日本が大きく変わる」ような気がしています。

中里:「凡人こそ立ち上がれ」というエールでもあり、「でも、本当はみんな天才だったんだから」っていう裏打ちもおもしろいですよね。

つんく♂の「言葉に対する思い」を深掘りする!

山崎:素朴な疑問ですが、忙しい中、noteであれだけの文章量を書けるのはすごいと思うのですが、執筆はいつされていますか?

つんく♂:あるブロガーの方が毎日2000文字から3000文字書いているというのを聞いて、すごいなと思ったんです。でも、考えてみれば僕も年間100曲以上作っていたんだから、なんとかなるだろうとnoteをはじめました。ただし、年間100曲作ってたのも独身時代。自分だけのために時間がいっぱいありました。

しかし、今は朝、子どもたちを学校に送って、8時から12時くらいまでの午前中が僕の時間です。その間に作詞や作曲したりnote書いたり、それ以外の作業もするわけです。ですので、結果的に月に2〜4本noteでコラムを仕上げるというペースで落ち着きましたね。

山崎:私は音楽のことは専門外でよくわからないのですが、つんく♂さんの歌詞は昔から本当にすごいと思っていて。何がすごいのかうまく言語化できないのですが、言葉に対するセンスは天性のものがあると思っています。歌詞もnoteの文章もそうですが、言葉に対するつんく♂さんの思いみたいなものをお聞きしたいです。

つんく♂:昔は関西弁を上手に使って、関西人らしく話を盛りながらやり過ごしてきた部分もあったんです。でも、病気をしてからは自分の言葉をテキストにする作業が多くなりました。

簡潔かつ正確に伝えるって難しいけど、大切なことなので、3000〜5000文字のnoteが、実はちょうどいいのかもしれません。これを繰り返していくと、自分の言いたいことを伝えるというか、説得力のスキルが上がるような気がしています。たとえば3000文字って、話し言葉にすると約10分ですから。

それから、いま僕は映画制作もやっていて、台本を「ちょっと見てください」と言われることがあるんですが、ダメなシナリオの特徴は、出来事を均等に書いてしまうこと。

たとえばデートの話なら、朝起きて、待ち合わせをして、映画を観て、バイバイするまで均等に書いちゃうわけです。そんなあらすじみたいなシナリオは、おもしくないんですよ。

映画にするなら、むしろ家を出るまでの30分間を2時間にしたりする。デート前のワクワク感、朝起きて、メイクをして着替えて……。その30分でその日のデートや、それまでの経緯まで表現するのが映画であり、歌詞なんです。

山崎:なるほど。おもしろいです!

つんく♂:このことは『シングルベッド』を書いたときに気がつきました。『シングルベッド』は、そこらへんの青年の2年間くらいの出来事がテーマなのですが、その2年間のうちの20分とか30分、もしかするとものの5分くらいを切り取って歌詞にしてあるわけです。僕のイメージではカシャと写真を一枚撮って抜き出したようなイメージです。瞬間を切り取ることができないと、歌詞ってドキドキしないんですよ。

歌詞は「自分に置き換えられること」がポイント

中里:noteのような長めのテキストならある程度正確に伝えることもできると思うんですが、やはり歌詞の世界は違いますよね。歌詞では、説明しすぎない、伝えすぎないように、あえて余白を作って、受け取った人が「自分で的を射抜く」ような感覚というか。その使い分けの意識みたいなものもあるんでしょうか?

つんく♂:特に歌詞は、受け取る側に自分を置き換えてもらえばいいわけです。僕はみんながどんな恋をしているかわからないけど、『シングルベッド』にしても、東京や大阪、北海道、沖縄まで、全国の男子が「これは俺の歌や!」って感じてくれた。歌詞には細かいディテールがあったとしても、刺さるフレーズがあれば置き換えてくれるんですよね。その人は、シングルベッドじゃなくて、ダブルベッドかもしれないし、せんべい布団かもしれないけど勝手に置き換えてくれる。それが歌詞なんです。

中里:なるほど。

つんく♂:対してnoteで文章を書くときは、あいまいではなく、ある程度きちんと説明しないといけないと思っています。ちょっとしたエピソードも、日本かハワイか、電車かバスかで、話が変わってくる。バスで〇〇まで行って、そこから新幹線に乗り換えて……ときちんと説明することで、「なるほど」と受け取ってもらえる。これがある程度長い文章を書くときのコツだと思います。

山崎:歌詞はたしかに「シングルベッドで 夢と お前 抱いてた頃」というたった1行で、背景の2年がわかりますよね。でも、それを文章で説明するなら、「主人公が何歳で、どこの出身で……」ときちんと説明することが必要なわけですよね。その差をきちんと分析されているのはおもしろいです。

つんく♂:文章って全体的にふんわりしていてもいいんですが、「楽しかった」「おもしろかった」「また行きたい」では、無理やり書いた小学生の夏休みの日記や読書感想文のようになってしまいます。必要なのは語学力でなく「具体的な、オリジナリティのあるエピソード」なんです。たとえば「赤いウインナーのタコさんをポロッと落とした」とかね(笑)。

山崎:うまい! それだけで状況が浮かびますね。

つんく♂:歌詞も同じように「好きだ」「会いたい」だけじゃなく「君の香水が変わった」というような具体的な言葉のほうが、みんな頭で自分ごととして変換してくれるんですよ。

山崎:むしろディテールを書くことで変換されるって、たしかに。やっぱりつんく♂さんの感性、すごいです。

「作品」は他人の目を通しておもしろくなる

中里:最後に、つんく♂さんのプロデュース論の肝のようなところをお聞きしたいと思うんです。というのも、我々編集者という仕事も、プロデュース的な側面が強いので。

つんく♂:僕がやっているプロデュースでいえば、プロデュースする側が「待つ」というか、ある程度「我慢」も大切だと思っています。彼女たちが自分で一つひとつ階段を上がってくるのを待つのも、プロデュースの重要な作業のひとつだったりします。

特にアイドルグループは、成長の過程がビジネスにつながります。最初から完全体だと、最初だけ売れても続かない。成長がないとお客さんもおもしろくないわけです。

だから、ある意味、最初は凡人でいいんです。そういう意味では「成長」がプロデュースの鍵になりますよね。会社なら、上司がどれだけ後輩の成長を待てるかというのも大切だと思います。

中里:「待つ」というのは大事な視点ですよね。

それから今回、つんく♂さんのnoteの原稿を編集サイドでいったんお預かりして、こちらで、本のベースとなる原稿を作成させていただきました。「プロデューサーであるつんく♂さんが、ある意味、他者にプロデュースされる」というステップだったわけですが、違和感は何かありましたか?

というのも、私自身、「自分だけでやると、自分の実力以上のものは生まれない」という意識が常々あって、だから、私も編集者なので、自分でもnoteの原稿から全体の構成を作れるんですが、それだと「私がやる以上のものにならない」。

だから信頼している山崎さんにいったんお願いして、note原稿を構成してもらい、それを優秀な同僚の田中順子さんという編集者に手伝ってもらいながら、さらに私が手を入れるという「二段階・三段階の編集ステップ」を踏みました。

つんく♂さんも「著者として、自身でnoteからまとめよう」と思えばできてしまう方ですが、あえて「編集の視点」を通したことで、感じるものはありましたか?

つんく♂:たとえば『LOVEマシーン』も、僕は曲と詞を書いて、アレンジはダンス☆マンと一緒に考えて、振り付けも夏先生と議論する。、結局最終的には僕が責任を背負うんですが、そこまでの過程をメンバー含めてみんなでシェアするというのが大事だと思います。線香花火だったのがでっかい打ち上げ花火に成長する!って感覚ですね。そういう意味では、今回の本も同じような感覚でした。

よくあるタレント本は2~3時間インタビューして、ライターさんが広げていくのかもしれませんが、今回はnoteの記事という根っこがあって、「ちょっとつんく♂さん、ここ長いよ」みたいなアレンジを繰り返してもらいました。だからモノづくりとしては違和感のない、わかりやすい作業でした。

編集していただいているときは、まさに本書の中に出てくる「いったん箸を置く」という感覚ですよね。僕が編集していたら、考えすぎて終わらなかっただろうから(笑)。

それに、僕が「おもしろい」と思っている部分と、他の人に響く部分が違ったりして、そういうのは興味深いですよ。「あっ、ここをチョイスしたんかー」っていう楽しさもありましたよね。

山崎:たしかに、どこをピックアップするのかは編集者によって違うというか、それこそ今回は1000通りの本ができるくらいの材料はあったので、携わらせていただけたのは光栄です。

つんく♂:でも、だからこそ、お互いやり切った感がありますよね(笑)。

山崎:また蒸し返すようですが(笑)、つんく♂さんが最後あれだけ真剣に直しを入れてくださったことが、本当によかったと思っています。余談ですが、中里さんは東洋経済新報社のヒットメーカーと言われてる編集者で、彼も校了ギリギリまで帯のコピーとか「もっといいアイデアない?」とか言ってくるわけです。つんく♂さんと同様、「最後の最後まで手を抜かない」という、ヒットを出せる人の共通点を見たような気がしました。

つんく♂「俺、偉そうに見えるんちゃう?」

つんく♂:そういえば、最後に書いた本の紹介文(「凡人が天才に勝つ方法」に込めた想い。 )、実はあれが一番緊張したかも(笑)。この本を届けるために何を書いたらいいのかと考えて……。でも、書いているうちに「あれ、俺めっちゃ偉そうやん」とか思ってしまって。

山崎:あの記事もそうですが、編集中もつんく♂さんが「この表現、偉そうに見えるんちゃう?」みたいな心配をされていて、私から見ればつんく♂さんは偉そうにしてもいい存在で、しかもご指摘の箇所も全然偉そうじゃないので、なんと謙虚な方なんだろうと思いました。

中里:それと、いまは「正解のない時代」だからこそ、本の中では多少偉そうでも、著者に強く言い切ってほしいという気持ちは、読者としてありますよね。

つんく♂:なるほど。そうなんやね。

中里:今回のつんく♂さんの本ではありませんでしたが、著者が迷うとつい、語尾が「〇〇かもしれません」と弱気になるんです。もちろん言い切れないこともあるでしょうが、読者もそれをわかったうえで読んでいるので、「あえて断言してほしい」という側面もあります。

山崎:以前ほぼすべての文章の語尾を「かもしれません」に修正される著者の方がいて、「さすがにそれは……」と思ったことはあります(笑)。

つんく♂:でも、逆に都市伝説みたいになって「信じるも信じないもあなたしだい!」みたいな本になっておもしろいかも。

山崎:つんく♂さん、そのポジティブなジョークがすぐ出てくるのがさすがです。

盛り上がった鼎談は、教育論まで話が及び……

山崎:今の若者を見ていると、自信がないというか、一昔前よりも元気がないような気がするのですが、つんく♂さんはどう思われますか?

つんく♂:僕ら世代はそう思ってしまいがちだけど、うちの子どもたちがSNSをやっているのを見ると、ダンスのショート動画や水着写真をアップしたりとか、僕らが知らないだけで意外に伸び伸びやってるんだと思います。

ただ、「普通や平凡であることを恐れてはいけない」と思います。親世代の僕らだって、みんな所詮は凡人です。平凡や普通であることに劣等感を抱かず、そんなことより、もっと、好きなものを追求せえというか、楽しめって言いたいですよね。

それから、親目線でいえば、子どもは親をうまく口説くことも大事(笑)。
アメリカでは、子どもが遊びに行くときは車で送らないといけないんです。僕も時間があれば送りますが、正直めんどうなこともある。

そんなとき熱心に「この日は大切なお友達の誕生日パーティで、クラスの半分以上が集まるから私もどうしても参加したいの」って口説かれたら「よっしゃ行こ!」って気持ちになるわけです。

若者に限らず、相手を動かすための説得力ってけっこう大事で、そういうスキルをあげていくことも大事だと思います。

中里:なるほど。おもしろいですね。私たちも社会人になれば学歴なんて関係ないと感じますが、一方都内では中学受験が過去最高の受験者数を記録しているみたいな流れもあります。まだまだ「いい中学校、高校に行けばいい大学に行けて……」みたいな従来型の価値観が、親側のほうでなかなかアップデートされていない気もしますよね。

つんく♂:もし入ってくれたら、そのほうがラクチンなんですよね、親としては。子どもが早稲田や慶応に行ってくれれば親的には超安心ですもんね。ちなみに、まさに我が子たちもちょうど高校生で、「大学どうする?仕事どうする?」というような話を毎日のようにしています。

アメリカの大学の学費は、物価や円安も含めて、日本の3〜4倍は高いんです。そのうえ奨学金として学費を借りるときの利息も高い。学費の為にローンを組んで大学卒業して、就職した日から借金返済の日々。きっと40歳くらいまで返済が続く。そこまでして行くべきかどうかって、友達同志でも会話するようです。

うちの息子もこないだ「そこまでして大学に行く意味なんてなんだろ」ってボソっと言った言葉が耳に残って……。親として行って当たり前って思ってたので。たしかにもはや、大学に行けば安泰という世の中でもないですしね。

中里:そういった社会で、本の中にあるような自分の「好き」を突き詰めることって、違う視点の突破口になりえますよね。

つんく♂:そうなんです。波乗りでもギターでも、好きなことがあって、それを続ければ何か変わるんですよね。それがないと「やっぱり、大学くらい行っといたら……」になっちゃう。

中里:「誰だって、実は中2の頃めちゃくちゃ好きなものがあったのに」ということですよね。

山崎:はっ! あっという間に予定時間が過ぎてしまいました。

つんく♂:いろいろ話をさせていただいて、ありがとうございました。

中里&山崎:こちらこそ、つんく♂さんの書籍に携われて光栄です。ありがとうございました!

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