Task have Fun 10/29 sg 「あしたに向かうダイアリー」 ライナーノーツ Recording Ver.
「あしたに向かうダイアリー」レコーディングに関して
苦労したのは、ボーカルレコーディングです。
担当ディレクターのこーじから途中経過が何度も届きます。
こーじといえばモーニング娘。のシングルのほとんどをレコーディングしてきた猛者です。
少々リズムへの心得のない新加入のメンバーでもお茶の子さいさいで、結果、みなさんが聞いてきた作品達のように歌をレコーディングし仕上げてきました。
Task have Funメンバーヤバイです
そんなこーじから、
「ヤバイです!思った以上にあの子らに苦戦してます!」と報告がありました。
「まじか!」と、やはりそうか・・・
彼女たちのこれまでの作品は本当に良く出来ていた。
彼女らの歌の素材は上手にデコレートされてあり、結果、素晴らしい作品となっていた。
これまでのレコーディング関係者の匠さがうかがえる。
しかしながら、こっちもプロ。
その仕上がりを聞けば、どうやってこうなったか、どういうエディットをしてきたか、だいたいはわかるものです。
レコーディングそれは闘い
なので、きっと手強いだろうな、とそう思ってましたが、こーじからの報告通り、なかなかの強者達とみた。
うむ、これは闘うしかない!
「あの子らの眠る能力を掘り起こすしかない!」と、僕とこーじ。
ハロー!プロジェクトらは小学生から闘っとるんじゃ
とはいえハロー!プロジェクトの子らは、小学生くらいから研修生として、リズムのこと中心にリハーサルでも訓練するし、先輩に混じって本番でステージにも立って、場数をこなし、体に叩き込んでいきます。
僕はいつもいいます。
リズムを感じろ
リズム感というものは「英語を話すこと」と似ていて、誰でもリズムを取れるようになると。
ただ英語を話せたからといって、RAPが出来るとか、英語の歌詞が書けるとか、それは別問題であるように、リズムを体に入れたからといって、ダンスがバチバチになるわけではないことを知っててほしい。
それでも、「流暢」にはなるわけです。
ですが、どうだろう。
Task have Funの彼女らは中学生以降からのダンスレッスン開始。
リズムに対する概念のある指導やレッスンはきっと受けてこなかったと。曲の振り付けを練習した程度だとのことでした。
なるほど。
ダンスを踊ることと、歌にリズムを入れる(リズムを乗せる)こと。
この2つは同じようでまったく違う。
英語圏で生まれ育っていない人が英語を覚えるためには頭で理解しながら実践でつかむしかないのと同じで、リズムも頭で理屈がわかった上で、場をこなす。
それしかないと僕はそう考える。
なので、彼女たちの最初のボーカルレコーディングのディレクターOKテイクに対して僕はNOと返事した。
Task have Funレコーディングはやり直しだ
そう、やり直しだ。
彼女らはきっと「はぁ歌い終わった」とちょっとゆっくりしてたかもしれないが、レコーディングし直すことを伝えた。
とにかく僕は
「歌い過ぎ」
「(喉の)トルクを開きすぎ」
「歌の音符が長過ぎ」
それをこーじに伝えました。
その辺踏まえてやり直し。
マイクが口の中に入ってるくらい(イメージね)の距離で歌わせて。
とにかく声がでかいと。
(リズムがないとか、感情論とか、ピッチがどうのとか、細かくはもっと伝えたけど)
A、Bメロは声が聞こえないくらいウィスパーでいい。
とにかく歌わせるな!と。
歌いすぎるとウイリーしてひっくり返る
分かりやすいか分かりにくいかわからんけど、例えると、
原付で青信号とともにアクセルをフルスロットルにしてもスピード出る前にウイリーしてひっくりかえるだけ。
今の原付は高性能。
最初にちょっとスロットル回せば、スーッと走って行きます。
結果その方がスピードに乗る。
わかる?!
この感覚が掴めるようになればいいのだが・・・
話戻ると、
この曲は(特にA,Bメロ関しては)聞き手に対して、どれくらいの距離感か。(主人公とあなた(君など)との相対的距離感)そこが一番のキーポイントです。
この距離感がつかめないと聞いてられない歌になるわけです。
耳元で話しかけられてムカつかない距離感を極めろ
特に今、みんな音楽をイヤフォンなどをつけて、とても近い距離で聞くことに慣れています。
そんなご時世で、この歌詞の世界をどんな距離感かと説明すると、「耳元で話されてもむかつかない距離感」です。
この近さがテーマなのです。
歌うということに関して、おそらく小さい頃から学校の音楽の先生にはいつも
「はい、声を大きく出して」
「もっとお腹から声を出して」
なんてたくさん言われたと思います。
それも間違いではないでしょう。
でも、この曲はそうじゃないんです。
崩れ落ちそうな壊れそうな心の女の子のメッセージなんです。
ここまで聞けば、単に元気に声を張って歌うことが正解じゃないというの、わかりますよね?
Task have Funがたどり着いたプロの世界
Task have Funたちはついにこの域にまで入ってきました。
これがプロの感覚です。
この声の使い方、耳元で話されてムカつかない距離感というのは、実はピッチやリズムのキレにもつながるんです。
「声を張る時」より「ささやく時」の方が、音程やリズムはずれにくいんですね。
細かいテクニック話はまた他でするとして、とにかく今回の彼女たちの歌は声を出さないように指示しました。
それはこの結果です。
心がぐっと近くなります。
顔(表情)が見えてきます。
口の動きを感じます。
動画やライブでなく、音源だけを聞くとき、この時に歌い手の声そのものを感じること。
これってとても大切です。
特に今のようにギューギューの熱気溢れる系のライブが出来ない昨今では、この距離感はとても貴重です。
目をつぶって聞いているのに、口の動きを感じられる。
これを感じられる作品を目指したし、これが出来たということがプロとしての大きな一歩となるわけです。
作品の仕上がり優先
きっと、張り切って大声で歌いたかったと最初は思っただろうけど、こうやって作品で聞けば納得してもらえてるだろう。
高校生の文化祭の記念の出し物ではないんです。
本人たちの思い出ではなく、「作品の仕上がり優先」なのです。
でも、それが結果、彼女たちへの未来につながるんです。
結果、こういう仕上がりとさせてもらいました。
彼女たちの顔がすぐそこにあるような距離感、目を閉じてじっくり聞いてみてください。
しかし、早くギューギューの熱気系ライブをしたいものです。
よかったら、#つんくnote #つんく視点 で、感想をつぶやいてください(うれしかったら、僕もRTします!)。それでは、また今度。
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つん♂タス♀プロジェクト・1stシングル【あしたに向かうダイアリー / Task have Fun】 MVはこちら!
つんく♂✖️Task have Funプロジェクト 1stシングル「あしたに向かうダイアリー」先行デジタル配信決定
タイトル:あしたに向かうダイアリー
発売日:2020年10月29日
形態:CD
本体価格:¥1091(税抜)
収録曲
「あしたに向かうダイアリー」
を含む全4曲収録
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