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「良いダンサーの共通点はリズム感にある」MAHO UDO×つんく♂対談

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」。今回の対談ゲストはダンサー・振付師のMAHO UDOさんです。マドンナやテイラー・スウィフトといったトップアーティストのライブにバックダンサーとして参加するほか、BE:FIRSTやOCTPATHの振り付けも担当されています。後編では、ダンサーのキャリアや良いダンサーの共通点をつんく♂と語り合いました。前編はこちら。
<文 伊藤美咲 / 編集 小沢あや(ピース株式会社)

いつまで踊れる? ダンサーのキャリア問題

つんく♂:MAHOくんはいろんなアーティストのライブに出演してきたと思うけど、一番大きかったのはテイラーかな? 20代後半くらい?

MAHO:そうですね。2015年なので、28歳くらいですね。

つんく♂:一番ノってるときで、体づくりもしていたよね。それは見せる体を作るの? それとも踊っていたらそうなるの?

MAHO:ダンサーの中には毎日ジムに行って見せる体を作るタイプの人もいるんですけど、僕は体を見せることに重きを置いていないので、踊ってて自然と引き締まった体の状態を保っていますね。

つんく♂:MAHOくんはポップというかパキパキと踊るダンスを見せてくれたけど、それが一番得意なのかな?

MAHO:そうですね、得意分野のひとつです。ステージに立つプロダンサーやバックダンサーは振り付けのあるジャズがメインですが、僕はマドンナのツアーに出る前まではダンスバトルやアンダーグラウンドの分野に重きを置いていたんです。

その影響で、ポッピングやウェービング、アニメーションといった、ちょっとした特殊スキルのようなものを持っていたんですよね。それらは周りのダンサーは持っていないスキルだったので、プロになってからはそれが長所として浮き彫りになったんだと思います。

つんく♂:アルバイトをせず有名なアーティストのツアーに出て、ダンスしてるのはすごいけど、実際大阪から渡米してダンスで食べていくって大変やん。ミュージシャンだったら曲を作って売れるけど、ダンサーは「ステージに立ってなんぼ」みたいなところあるやんか。

MAHO:そこのジレンマはかなりあります。やっぱりダンサーは、体力と時間が不可欠だし、そもそもプロジェクトがなければ自分の立てる舞台がない。バックダンサー一本で食べていくのは過酷というか、ほぼ無理に近い話で。

アスリートであれば、現役時代に稼いだお金で引退後の生活をある程度賄えるかもしれませんが、ダンサーはみなさんが思っているほど稼いでないと思います。つんく♂さんの仰る通り、ミュージシャンは作品を売ってお金が入ってくる道筋がたくさんあると思うんですけど、ダンスは曲がないと始まらない。しかも曲には著作権があるので、ダンス動画を載せても、YouTubeやInstagramから消されちゃうことがあるんですよね。

「振り付け」には印税の仕組みが現段階ではないので、お金も振り付けの単価分だけしか入りません。かの有名なマイケルの「スリラー」を振り付けした人も、その時の金額しかもらってないですし。作品がどれだけ伝説的に残ろうとも、ダンサーはそれだけでは生活していくことができないというのは、つくづく課題に感じてます。

つんく♂:20代のころはそこまで考えてなかったと思うけど、30代半ばを過ぎてくると先のことも考えちゃうよね。

MAHO:ダンサーはアスリートと同じで体が資本だから、キャリアにも限界があるじゃないですか。だから20代後半から30代になると、キャリアチェンジを考え始めるんですよね。

エンターテイメント業界だと演出家、振付師になる人が多くて、それ以外だとヨガインストラクターやフィジカルセラピストといった職種に就く人もいます。中にはまったく違う業界に移行する人もいるんですけど、そこはもう見て見ぬふりをしているというか。

つんく♂:指導者になるというビジョンはないの?

MAHO:可能性としては選択肢にあります。あとは振付師や演出家も、自分の経験を活かせる職業だと思うので、視野に入れています。

今のうちから振付師や指導者としてのキャリアも積み始めないと、踊れなくなったときにシフトチェンジできないのかなとも思いますし、実際に先のことを考えてキャリアチェンジしてる人もいます。ただ、僕は自分の体が動く限り、踊りたいという炎があるうちは踊りたいと思っている部分もあって……。

つんく♂:ステージに上がるのは楽しいよね。自分がキャーって言われる立場じゃなくても、なんとも言えない興奮があるし。それはわかるなあ。

僕がプロデューサーになったのは29歳の頃だったけど、シフトチェンジしようと思ってたわけじゃないんだよね。最終的に僕は病気で歌えなくなっちゃったけど、当時は自分の活動もしながらモーニング娘。もやろうと思ってたから、プロデュースに回るのが早かったわけではなかった。

MAHO:なるほど。

つんく♂:最近は縦動画が流行ったことで、個人がダンス動画を発信しやすくなっているけど、ダンス業界ではどう見てる?

MAHO:TikTokやInstagramなど、ダンサー個人が有名になれるようなプラットフォームができて、企業から直接広告の仕事をいただける環境ができています。これまではダンスの仕事を待つことしかできなかったので、自分をプロモートできるツールが増えたことは良いことだと思います。

ただ、ダンサーじゃない人がダンスでバズって有名になっている人もいることに、ジレンマを感じてしまう部分もあって。その延長で自分へのオファーもSNSでの流行りに寄せたものになってしまうと、ダンサーとしては葛藤する部分があります。

空間に絵を描くイメージで振りを作る

つんく♂:MAHOくんが初めて振り付けを担当したBE:FIRSTの「Gifted.」、よかったね。

つんく♂:これで振付師としての名前がすぐに大きくなるわけではないかもしれないけど、やっぱり数をこなして積み上げていくしかないんだよね。それは思いの外時間がかかるから大変だと思うけど、実際にBE:FIRSTの振り付けをやってみてどうやった?

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