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「つんく♂さんは寂しそう」東京ゲゲゲイMIKEYから見たつんく♂

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」。今回の対談ゲストはアーティストの東京ゲゲゲイ・MIKEYさんです。ダンサー、シンガーソングライター、そして映像クリエイターとエンターテイメントの世界で幅広く活躍し、数々のアーティストの振り付けやコラボ曲も発表されています。後編では環境が変わりぶつかっている壁、MIKEYさんが大好きな女子プロソング『キッスの世界』のことも。対談の前編はこちら。
<文 羽佐田瑶子 / 編集 小沢あや(ピース株式会社)

ソロになってからぶつかっている壁

つんく♂:10代でやっとの思いで入った事務所を辞めて、ダンスを再開するようになるまではどれくらいあったの?

MIKEY:20歳から24歳くらいです。

つんく♂:結構食えなかったというか、苦労した時期が長いんやね。そこからプロの道に足を突っ込みはじめたのはどのあたりなんだろう?

MIKEY:自分の表現でお金をいただくようになったのは、25歳。ダンスの先生をやるようになってから、振り付けやバックダンサーのお仕事が増えていって、そこからダンスでご飯を食べられるようになりました。

つんく♂:ダンスを教えるのと振り付けと、どっちが中心だったの?

MIKEY:どちらも同じくらいやってましたね。

つんく♂:生徒さんはどんな人だったの?

MIKEY:なぜか、子どもが多かったんですよ。その時から奇抜な格好で、奇抜な振り付けだったと思うんですけど、一番相応しくないであろう子どもたちがレッスンに来てくれていました。

つんく♂:子どもは無邪気やし、素直やからね。きっとその教室が素直に、面白かったんやと思う。

MIKEY:その生徒たちの数名が、東京ゲゲゲイになるんですよ。

つんく♂:それはすごい!おもしろいね。

MIKEY:先生と生徒のチームってなかなかないですよね。

つんく♂:知名度とは別で、自分で「売れたな」って実感したのはどのあたり?

MIKEY:未だにないです(笑)。でも、こうやってつんく♂さんと話せている時点で「自分すごいな」とは思いますけど。

つんく♂:自分が振り付けたものが世の中に認められていく、わかりやすく再生回数で目に見えて実感したり、「すごいね」って言われる機会が増えていったと思うんやけど。

MIKEY:でも、不思議なのは、どんなに再生回数が延びてもその動画を直接評価してくれたり、街中で声をかけられたりすることよりも、芸能界やアーティストの方々が「ファンです」と声をかけてくれるほうが圧倒的に多かったですね。こんなに有名な人に知ってもらえているとは、と驚く機会が増えたのはここ5年です。

つんく♂:言える範囲でいいんだけど、東京ゲゲゲイのメンバーが卒業することになったのはどうして?

MIKEY:卒業の理由は詳しく言えないんですけど、多人数で、チームを組んでやるよりも、自分一人でやってみたい気持ちがあって。やっぱり先生と生徒という関係性は、ずっと続くんですよね。次第に親子みたいになってしまって、ずっと彼女たちを気にしてしまう。「もうそろそろ、子育てを終わりにしようかな」という感覚でした。もっと私のために踊りたい、生きたいって。

つんく♂:ソロになって、クリエイティブは変わった?

MIKEY:ソロになってから、やっぱそうなんだと思ったことの一つに、誰かが喜んでくれることが自分のモチベーションの一つだったことがわかりました。メンバーがいたときは、何かクリエイションをすると「4人が喜んでくれそうなこと」を無意識に考えていて。いざ私一人になると、自分のためにそんなにできないって、実は今思っているところです。

つんく♂:ある程度制限とか決まりがあったほうが、それが糧になるよね。「自由にお願いします」と言われると何もできない気がする。

MIKEY:わかります。今まさに、その問題にぶつかっています。

つんく♂:発売したばかりのソロのカバーアルバムを聴かせてもらったけど、年齢よりもずいぶん年上の人による選曲よな。50代の僕らが共感するような。

MIKEY:たしかにそうですね(笑)。

つんく♂:それは、どこの影響?

MIKEY:どれも、小さい時によく歌ってた曲なんです。

つんく♂:へえ! 歌い方とかアレンジもめっちゃ個性がありました。僕らがカバーするってなったら、どこかオリジナルを意識しちゃうけど、世代じゃないから自由にカバーできてんのかなって。自分のやりたいようにやってる感じがして、すごく面白かったわ。

MIKEY:カバーアルバムのタイトルが『第二次』って言うんですけど、私は何でも「リメイク」が好きなんですよ。もとにある洋服をどう改造して自分の好きな感じにできるかとか、元々のダンスミュージックをエディットするのも大好き。本来のものから、どうアレンジして面白くするかみたいな部分に燃えるので、今回のアルバム制作もすごく楽しかったです。

MIKEY「『キッスの世界』をプロデュースできたのがうらやましい!」

MIKEY:私もつんく♂さんに聞きたいことがあるんですけど、いいですか?

つんく♂:なんでもどうぞ。

MIKEY:私は女子プロが大好きなんです。10代のころ、フジテレビの深夜番組『キッスの世界』に夢中になって、つんく♂さんは全日本女子プロレスの4人をプロデュースされてたじゃないですか。あのお仕事がとってもうらやましかったんですよ。

つんく♂:うらやましかったのは、どっちが?

MIKEY:つんく♂さんがキッスの世界のメンバーに会ってて。

つんく♂:そっちか(笑)。

MIKEY:でも、女子プロのプロデュースもうらやましいです。

つんく♂:今のMIKEYさんならありえるかもね(笑)。

MIKEY:そうですね。『キッスの世界』は楽しかったですか?

つんく♂:そうやな。ただ、責任は感じててね。あの頃、番組から「女子プロの人気にもう一回火をつけたいから手伝ってください」って言われて参戦したわけ。「何とか盛り上げたい」というフジテレビや全日本女子の思いが強くて、僕も「何とか支えたい」とは思っ頑張った。

フジテレビが思う、いわゆる“お茶の間”まで浸透しなかったけど、女子プロをプロデュースしたことは未だにいじってもらえる。それくらい記憶に残ってるってことやし、価値があったなと思うし、何よりあの子たちがいろんな形で頑張っている姿を見ると嬉しくて、やってよかったなと思うな。プロデュースっていう意味やと、振り付けの仕事は今はどれくらいしてるの?

MIKEY:振り付けの仕事をたくさんしていたのは10年前で、今はほとんどないです。

つんく♂:それは断ってるから?

MIKEY:お話がきて断っているものもあれば、メンバーに任せることもありました。

つんく♂:映像ディレクターもしてたけど、どんな風にディレクションしてたの?

MIKEY:曲によっていろいろで、自分が直接ディレクションしたものもあれば、外部の方にイメージを共有して作ったものもありますね。

つんく♂:職業を伝えるのが難しいな。

MIKEY:肩書き……何でしょうね? 自分でもよくわかっていないのと、こうなりたいという欲求もないので適当に流してたんですけど。アーティストって自ら名乗るのも恥ずかしいじゃないですか。つんく♂さんはなんて言ってるんですか?

つんく♂:日本ではプロデューサーと言っても伝わるからそうしてるんだけど、アメリカだとプロデューサーって言葉はぼんやりしていて、なので最近は音楽家、作詞家といった方がツッコミが少ないのよね。

MIKEY:なるほど。

つんく♂:アーティストとしての未来は、どんなことをやっていけたら満足だと思う?

MIKEY:歌って踊ることは、唯一39年間続けてきたことなので、細かいジャンルは変わっていったとしても音楽と生きていくことはぜったいに変わらないと思います。変わらないというより、変えられないというか。未来のビジョンを持ったことがないので、その時々で「楽しい」と思ったことをやっていけたらいいですね。

パーソナルな価値観とエンタメとの間での葛藤。つんく♂が大事にしていること。

MIKEY:つんく♂さんも自分で歌って、プロデュースもされて、いろんなことを手掛けられていますよね。うまく伝わるかわからないんですけど、エンターテイメントの脳味噌と自分のものすごくパーソナルな価値観はセットになっていますか? それとも、個人的な価値観とエンタメが求めるものとの間で葛藤はありますか?

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