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ピノキオピーの原点は教室で描いていた漫画 つんく♂が人気ボカロPを徹底解剖!

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」、対談企画第4回目ゲストは、人気ボカロPのピノキオピーさん。彼の作品の世界観に刺激を受け、思わずつんく♂もクリエイター魂が爆発。ピノキオピーさんが好きなハロプロ楽曲を通じて、つんく♂流の歌詞作りも解説します。※対談後編はこちら。
(文 田口俊輔 / 編集 小沢あや

「ずっとボカロPと何かやりたかった」

――今回の対談は「ボカロPと対談したい!」という、つんく♂さんの希望で実現しましたね。

つんく♂:Dooon!の企画に、「VTuberたちが歌う、つんく♂楽曲カバートリビュートアルバムを作ろう!」というのがあって。バックトラックは誰に作ってもらうのが一番いいのか? と考えたの。

(『Dooon!』:つんく♂が代表を務めるTNX株式会社と、株式会社CAMPFIREによる夢支援型プロジェクト)

つんく♂:俺は通常“レコード業界”のアレンジャーたちと仕事しているけど、今回の企画は「普段とは違う解釈で、俺の楽曲を楽しく面白くアレンジしてくれそうな人たちはいないかな?」と考えて。……そうや、ボカロPや! と思いついてね。ボカロPと対談して、色々と聞いてみたいなと思ったわけ。

――ピノキオピーさん、ボーカロイドとは、ボカロPとは一体何なのか、あまり詳しくない方向けに、改めて解説していただけますか。

ピノキオピー:ボーカロイドというのは合成音声を再生するボーカル・シンセサイザーのことで、2000年代初頭に「VOCALOID」というソフトが発売されたのが始まりです。今のボカロ文化を形作った大きな出来事が2007年にクリプトンから発売された「初音ミク」の登場でした。

つんく♂:そういえば、当時、俺も仮歌に使えないかと考えた頃があったなぁ……。思ったより融通が効かず、歌声としては不自然だし「歌った方が早いわ!」と放置しちゃったけど、使い方の発想を変えたのがボカロPたちだったわけだね。不自然を武器にした的な。

ピノキオピー:今でこそ不自然さを面白いと思えていますが、僕も最初は「人が歌った方が早くない?」と思ってました(笑)。それから、初音ミクの登場と同時期に「ニコニコ動画」というプラットフォームが誕生しました。そこに、初音ミクを使った楽曲を投稿する方々が増えて、盛り上がったんです。そのボーカロイドを使った音楽制作者を、「ボーカロイドプロデューサー」……略して「ボカロP」と呼ぶようになりました。

つんく♂:今のボカロ事情って、どうなっているの?

ピノキオピー:現在は今まで通りボカロを使って楽曲を制作し続ける人もいれば、米津玄師さんやYOASOBIのように、ボカロ楽曲制作を経て、新たな自己表現へと向かう人も増えてきていますね。

つんく♂:いろんなアイデアが細分化されて、独自で畑を耕してったわけやね。その中に、ピノキオピーもいるんやな。

ピノキオピー:いやぁ~、僕はまだまだです。

――つんく♂さんはいつ頃からボカロPに着目していたんですか?

つんく♂:10年ほど前、志倉千代丸と共同で、「バックステージpass」という秋葉原のアイドルカフェをプロデュースしていた時やね。カフェのコンセプトは「プロデューサーはキミだ!」で、お客さんがプロデューサー。だから、俺ら以外のプロデューサーにも参加してもらうってところから始まったの。

ピノキオピー:へぇ! なぜ、つんく♂さんが楽曲を手掛けなかったのですか?

つんく♂:俺が音を作ってしまったら、普通やん?「なんや、結局つんく♂かい! 」ってなるかなぁって思ったから。まあ、結局は俺が作ってたんやけど(笑)。オープン当初、外注してると全然間に合わなくってね。

ピノキオピー:(笑)。

つんく♂:だんだんキャストも増えて、曲数が必要になって。「ボカロPにも曲を作ってもらおうよ」と会議でも声があがって、具体的に探し始めたんだよね。結局俺が病気してしまって、流れちゃった感じ。病気しないでプロデュースを続けていたら、もっと早く接点はあったのかもね〜。

ピノキオピー:そうでしたか……。

つんく♂:だから、今年、俺の作品をボカロPにアレンジしてもらえる作品の企画が始まって、こうしてボカロPを代表するピノキオピーと対談できるのはすごくうれしいね。

ピノキオピーの音の原点は「サザエさんの替え歌」と「教室で描いていた漫画」

つんく♂:ピノキオピーは、小さい頃から音楽家になりたいと思っていた? それとも、音楽から遠いところにいた?

ピノキオピー:子どもの時から絵を描くのが大好きで将来は漫画家になるのが夢だったので、小学生になるとオリジナルの漫画をずっと描いていました。音楽は楽器もやらず、ただ聴くのが好きだったレベルでしたね。

つんく♂:どういう漫画を描いていたの?

ピノキオピー:初めは好きな「HUNTER×HUNTER」の冨樫義博先生のような作品を目指そうと思って描いていたのですが、途中でギャグマンガになってしまって(笑)。

つんく♂:俺も小学生の頃は4コマ漫画を描いてクラスのみんなで回し読みとかやっていたんやけど、ピノキオピーも?

ピノキオピー:はい。ノートに書いた漫画を見てもらい、男友達を笑わせるのが楽しみでしょうがなかったですね。

つんく♂:ホンマに、音楽制作はまったくやっていなかったんやな。

ピノキオピー:それが、音楽と言っていいのかわからないのですが……「もし自分が曲を作ったら?」と想像して、歌詞を遊びで書いたり、録音・編集する行為が好きで、チャカポコ鳴るキーボードを使ってサザエさんの替え歌をカセットテープレコーダーに吹き込み、友だちに配ったりしてました(笑)。

つんく♂:いやいや、これは立派な音楽活動のスタートだわ。作って聴かせることに快感を得ていたわけやから。

ピノキオピー:そう言われるとそうですね! 僕の音楽作りの原点は、サザエさんの替え歌だったんだ(笑)。

つんく♂:作詞は、替え歌から始まるんよ。中学に入ってからは、どうなるの?

ピノキオピー:さすがに替え歌はちょっと違うなぁ……となり、当時流行っていた「ゆず」に影響されて、「アコースティックギターを弾いてみたいな」という欲が出てきました。その頃はあくまで欲求で終わったのですが、高校生に上がって絵を描くのと並行してギターで曲作りを始めました。あとMTR(マルチトラックレコーダー)を買ったので、多重録音にハマッていまいした。

つんく♂:すごいなぁ。そんな面白いことをやっている子、クラスにいた?

ピノキオピー:いえ、僕だけでした。

つんく♂:それじゃあ、クラスで変わり者扱いやったやろ(笑)。

ピノキオピー:そうですね。「あいつ、録音したものをやたらと聴かせてくるな〜」って、みんなから思われていました(笑)。みんなも最初は物珍しがって聴いてくれるのですが、珍しさって慣れてくるからか、途中から飽きられてしまって(苦笑)。

つんく♂:で、その先は、どういう方向に進んだの?

ピノキオピー:漫画・アニメの専門学校に通っていました。絵だけでなくアニメ制作も学ぶのですが、自主製作アニメ作りの際に音も自作で作らなければいけなくて。「音を作れるヤツがいると助かる」ということで、結構重宝してもらえました。

ボカロPの、お金にまつわるひそひそ話

つんく♂:ボカロへの入り口はどのあたりだったの?

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ピノキオピー:専門学校を卒業してからもしばらくはバイトしながら漫画を描き続けていたのですが、22、3歳を迎えたころに周りからのリアクションもどんどん少なくなってくというのもあって漫画を描くのが嫌になってしまったんです。そんな時に「ボーカロイドというものが流行っているらしい」と聞き、息抜きにでもやってみるか……と、何の気なしに始めたのがきっかけでした。2009年頃だったと思います。

つんく♂:正直、親から「仕事はどうするの?」と思われていたんやない?

ピノキオピー:いやぁ~、そうなんです。「あと2年やってもダメなら家から出ていけ」と言われてしまいました(苦笑)。そんな中でもボカロが楽しくなって、曲作りが捗ってしまって。あの頃はまさかこうして仕事になるとは思わず、本当に遊びの範疇でしかなかったんですよ。今思えば、奇跡ですね(笑)。

つんく♂:「楽しくなりすぎる」ってのが、今日の対談のキーポイントやね。遊びから始まったボカロPが、どこから収益に繋がるようになったん?

ピノキオピー:ニコニコ動画に曲の投稿を始めたころも、バイトしながらの活動でした。それが徐々に変わりだしたのが、ボカロPのみんなが集まって、自作CDを売る即売会に参加するようになってからです。そこで初めて収入が入って、ここからニコニコ動画へ投稿しつつ、同人音楽活動を始めたんです。

つんく♂:へぇ! インディーズのバンドみたいやな。

ピノキオピー:そこから段々とボカロがブームになっていって。その流れと並行するように、ニコニコ動画ではプレミアム会員登録者向けに「クリエイター奨励プログラム」という、今のYouTubeの広告収入のように再生回数に応じてお金をいただける仕組みが始まったんです。そこから動画投稿数や視聴者数が最高潮を迎えたことで、僕もバイトせずに音楽で食べていけるようになったんです。それが2011〜12年頃でした。

つんく♂:俺がバクステをやっていた頃に、ニコニコ超会議に参加したことがあって。来場者が1日で5万人とかで、えらい盛り上がりやったわ。それも確か2012年やったかな。

ピノキオピー:2012~14年頃は、本当にものすごい勢いだったんですよ。

つんく♂:でも、その辺が動員的にもピークだったんかな。そのあたりから、ボカロPの主な舞台って、ニコニコ動画からYouTubeに移った気がするんやけど。

ピノキオピー:そうですね。徐々にですが、2017年ぐらいからニコニコ動画の視聴者が減っていくのと反比例するように、みなさんYouTubeへと移り始めて。

つんく♂:なんでみんな移っていったんやろうね。

ピノキオピー:YouTubeは気軽に会員登録せずとも誰でも見られますからね。想像ですが、海外のボーカロイドファンの方々が、ニコニコに会員登録しなくても自由に見られるということもあり、すごく広がりができたのでYouTubeの方へと流れていったんだろうなぁって。

つんく♂:なるほどなぁ。

ピノキオピー:そういえば面白いことに、僕のYouTubeチャンネルは視聴者の半分ぐらいが海外の方なんですよ。

つんく♂:海外の方がパイはデカイからね。日本の人口が1億2千万人ぐらいに対し、海外は70億人。きっとこの数年で、視聴者の割合が海外と日本で逆転すると思う。

ピノキオピー:なるほど。これはボーカロイドという文化の懐に助けられている証拠ですね(笑)。

つんく♂:ちゃんとYouTubeの方は、広告収入は得ている?

ピノキオピー:はい。広告収入もありつつ、僕は2012年からはメジャーレーベルでCDリリースが始まり、2014年に事務所に入ってからは楽曲をJASRACに登録して権利を管理してちゃんと印税をもらえるようになって。印税、広告収入、CDの売り上げ、あとはサブスクも解禁したので、その総合の収益で今はご飯を食べている状態です。

つんく♂:なるほど。それは中々のチリツモやね。

ピノキオピー:そうなんですよ。なので、この状況がいつまで続くのか!?と、今もドキドキしながら活動しています。デカい宝くじを当てたわけでもなく、徐々に積み上げていって今に至るので。

つんく♂:大丈夫! 積み上げたコンテンツは、絶対に裏切らへんから。ドーンとした爆発がなくても、着実に成果を残しているやん。しかも、色々なメディアのフォーマットで収益をあげている。通貨で例えるなら、ドル、円、ユーロ、元を同時に持っているようなもんだから、超世界恐慌が起きない限り、全倒れはないよ。めっちゃバランスええと思う。

ピノキオピー:ホントですか!? そうならうれしいですね(笑)。

つんく♂もうなる、ピノキオピーのズルい才能

つんく♂:今日ね、もちろん色々と話したいボカロPはたくさんいるけど、数あるボカロPの中でピノキオピーと対談したいなぁって考えたのは「音はもちろん、歌詞がメッチャ面白いなぁ~!」って思ったからなんよ。対談に向けて改めて、20曲ほど聴き直したんやけど、どの曲も人間あるあるで面白い。

ピノキオピー:ありがとうございます!

つんく♂:思い込みでボカロPって音を積み上げてを作る人ってイメージがあってたから、歌詞は別の人が書いていると思ってさ。「ボカロ界隈には作詞専門の子や業者がおるの?」ってスタッフに質問したんよ。そうしたら、ピノキオピーは全部ひとりでやってますよって。「えぇっ!? すごない!?」って、驚いたんよ。

ピノキオピー:うれしいです。

つんく♂:「ピノキオピーの、何がすごいかわかる?」ってスタッフに聞いたら「全部ひとりでやるからですか?」っていうのね。「アホか、それは俺もやるやんけ!」って(笑)。

ピノキオピー:(笑)。

つんく♂:俺と同じように、世間もきっとボカロPって家で音をシコシコと積み上げていくものだと思ってる人も多いはずやけど、「彼のは歌詞が突き抜けてるからすごい」って言うたんよ。そこがもっと評価されないと、不自然だってね。

ピノキオピー:本当ですか!? うれしい!! 報われた気分です。

つんく♂:ピノキオピー的には、どの歌詞が自信作というか、一番人に刺さったと思う?

ピノキオピー:「すろぉもぉしょん」という曲は、一番YouTubeで再生されているので、多くの人に刺さったのかな?と思いました。


つんく♂:「すろぉもぉしょん」は他の曲に比べても、わかりやすくリズム的にもノリやすく勢いがある。さらに歌詞も誰にでも自分に置き換えやすい内容になっている。バズる理由がわかる曲やね。

ピノキオピー:その分析、もう少し聞きたいです!

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総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。