南波一海が聞く!ハロプロ総合プロデュース時代と、今のつんく♂
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南波一海が聞く!ハロプロ総合プロデュース時代と、今のつんく♂

つんく♂
noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」、今回の対談ゲストは音楽ライターの南波一海さんです。AKB48やももいろクローバーZが台頭した2010年代から、ハロー!プロジェクトをはじめ様々なアイドルに取材をしている南波さん。後編では、ハロプロの総合プロデューサー退任以降の楽曲制作について、南波さんがつんく♂に質問。A.B.C-ZやCUBERSなど、ハロプロ以外の楽曲提供についても聞きます。<対談前編はこちら。
<文 羽佐田瑶子 / 編集 小沢あやピース株式会社)>

ハロプロ総合プロデュースを離れたときの、つんく♂の気持ち

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つんく♂:じゃあ、後編からは南波さんから質問をもらおうかな。

南波:できたら近年の作品の話を聞きたいと思って、質問を用意してきました。ターニングポイントとなったのが、総合プロデュースから離れた時期。2014〜15年あたりの楽曲はつんく♂さんの感情の揺れのようなものがダイレクトに反映されたものが多かったように思うのですが、いかがですか。

つんく♂:たとえばどの作品?

南波:『笑顔のきみは太陽さ』は死生観を感じるし、『TIKI BUN』は人生への苛立ちみたいなものを感じました。

つんく♂:『笑顔のきみは太陽さ』を作ったのは病気が発覚する前なんよね。なのでテーマは俺の病気うんぬんってより、子育ての中で感じていたこと。ちょうど子どもの成長と共に親として俺も勉強してる時期っていうのかな。そんな時に作った曲。

子どもだから服を汚したり、お茶をひっくり返したり、親の都合で怒られることもいっぱいあって。だけど、冷静に考えると「子どもだから仕方ない、叱らなくても良かった」みたいなこともいっぱいあってね。親としては後から超落ち込むわけ。

特にうちの長男は本当に天真爛漫で笑顔に嘘がなくってね。虫を見ていうピュアな一言とか、よく気づく子で、「こいつ、すげ〜な〜」って親バカなりに思ってた。ただ、服もよく汚すし調子に乗ってドジもする。そこがええ部分ってわかってるのに、つい叱っちゃう。今『笑顔のきみは太陽さ』の歌詞を読みかえすと、「自分への反省文みたいな曲だな〜」って思うわ。

もちろんハロプロメンバーへの気持ちも含んでね。『LOVEマシーン』の時もそうだったけど、あの子らの笑顔はどんな健康ドリンクよりパワーがあるし、どんなクスリよりもよく効く。心がパッと明るくなるんだよね。大人が決めたいろんなことに文句も言わないで頑張る子らやったけど、「大人はずるいな〜、なんて思ってるだろうな〜」って気持ちもあったかもしれない。

『TIKI BUN』の頃は最初の癌の治療中だったかな。放射線もやったので、首元が大火傷状態だったんよね。それでも「さあ、これからよくなってくぞ!」って気持ちでいたけど、実際はなかなか回復しない。ジレンマの中にあった曲だね。ちょうどその頃、自分が積み上げてきたハロー!プロジェクトから離れなければいけなくなったのもあるし、気づかないうちにその不条理加減が歌詞に出てたのかもしれない。

南波:達観した目線を持った曲が増えた時期だと思っていたんですが、つんく♂さん的には、強く意識されていたわけではなかったんですね。

つんく♂:そうやな……風邪を引いたり具合が悪くなったりしたら「しゃあないやん」と思うかもしれないけど、どっかで「自分のせいだ」っていう気持ちも持ってしまうやん? それと同じで、癌になったことも「もっと自己管理できたんじゃないか」って思ってしまって。そういう、自分への悔しさみたいな気持ちが曲に出たのかもしれないな。そういうメッセージをモーニング娘。たちに歌ってもらうことで、浄化していた部分はあったと思う。あとは、「AKB含めて他のメジャーアイドルが歌わないメッセージってなんだろう?」っていうのはよく考えていたかな。

南波:そのメッセージというのは、癌を患う前後で変わりましたか?

つんく♂:あんまり変わらんと思う。『Memory 青春の光』の女の子も、『そうだ! We're ALIVE』の女の子も、デフォルメした場所が違うだけで、どの女の子も自分の中にいるなと思うね。

南波:その女の子たちっていうのは、歳を重ねる中で変わっていくものですか?

つんく♂:うーん……それは意識してないかも。その時に湧いてくるものに向かって書いている感じかな。ただ、その時のメンバーの年齢は意識する。安倍なのか、後藤なのか、高橋なのか、鞘師なのか、譜久村なのか……ってな具合にね。

つんく♂「青春、という言葉は多用しすぎないようにしている」

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南波:次の質問をしますね。僕はアプガ2「全部青春!」やKINDAI GIRLS「青春×青春」、Love Cocchi「青春シンフォニー」など「青春」をモチーフにしたつんく♂さんの楽曲が大好きです。近い時期に、こうした楽曲がたくさん生まれていますが、これらの制作背景を教えてもらえますか?

つんく♂:実は、モーニング娘。では「青春」って言葉をあまり多用しないようにしてたつもり。使い勝手のいい言葉やから、どんなことがあっても「青春だよ!」って言えば解決してしまうやん。

南波:たしかに(笑)。つんく♂さんらしい考え方ですね。

つんく♂:そうした便利さを理解しながらも、青春のありがたみ、みたいなものを思って作っているところはある。KINDAI GIRLSは大学生やったけど、いつだって青春はやってくるし、ハロプロの新人の子たちが歌ってもおかしくない曲になったんやないかな。

南波:モーニング娘。で「青春」を使わないようにしていたのはどうしてですか?

つんく♂:モーニング娘。自体が青春の塊だから、青春そのものを歌えないと思って。彼女たちを細分化させたら、歌える青春があるかなと思う。だからプッチモニとかタンポポで歌ってるんやないかな。

南波:プッチモニの「青春時代1.2.3!」とかありますね。全然違う話ですけど、DA PUMPがハロコンに出た時に、つんく♂さんが少し苦言を呈されていたじゃないですか。だけど「まあそれも、青春か」ってまとめられていたのがすごい印象に残っていて(笑)。

つんく♂:あれは、DA PUMPがハロコンに出たことに対しての云々があったわけでなく、そもそも「つんく♂っぽい歌詞と曲」ってネットがガヤガヤってし始めたやん? で、動画もたくさん再生されて。楽曲もまじよかったし、仲間でもあり後輩でもあるので「よかったな〜、DA PUMP!」って思ってたわけ。

つんく♂:でもいつの間にか、マスコミネタ的には「ハロプロっぽい曲」って話にすり替わってて。「あれ? そういう話だっけ?」って思ったの。「ハロプロサウンズって何だ?」ってね。だってそのあたりまでのハロプロって、95%くらいは俺の曲で構成されてたわけでしょ? でも、「まあ、大人の都合だろうし……」って脳内処理して、「ま、それも青春か」ってなった(笑)。

つんく♂:受け入れられない不条理とか怒りやモヤモヤも「まあ、それも青春か」「まあ、それが人生だな」って思ったら楽やん。モーニング娘。の『人生Blues』にもそういう諸行無常さがあるわけよ。

南波:そうだったんですか!、しかし「青春」は魔法の言葉ですね(笑)。先ほど話にありましたけど、KINDAI GIRLS「青春×青春」は、ハロプロ研修生が歌ってもおかしくないような楽曲だったと思います。だから、今つんく♂さんが「青春」をテーマにした楽曲をハロプロに提供するなら、研修生なのかな? と思いました。

つんく♂:ただ、答えは教えないようにするかな。「これが青春なのか」っていう謎解きをするのが彼女たちの成長の課題なわけやから、答えを教えるような曲は作っちゃいけないと思う。それに青春って、ふんわりしたテーマなんよ。それよりも、リアリティのある苦労を書こうと思っている気がする。

南波:『青春小僧は泣いている』って曲はありますね。

つんく♂:あの「青春」は普通とは違う使い方やから。汗や爽やかというよりは、「悔しさ」や「世知辛さ」を青春で乗り越えろよ、という気持ちの歌。青春というワードを使うなら、「青春、頑張りましょうソング」を俺は作らんな。

「未来を決めるのは私」という歌詞に込める思い

南波:ハロプロ研修生の話も聞きたいんですけど、つんく♂さんが研修生に楽曲提供した『Upside down girl』。その中の歌詞に「決定するは 私」というフレーズが出てきます。つんく♂さんはたびたび「自分で選択をすること」を歌詞に込めていて、僕はここのフレーズがすごく好きです。この歌詞についてはどういう気持ちなんでしょうか?

つんく♂:学校は義務教育だから、選択というよりもやらされている感じがあるやん。自分で選んだわけじゃない。だけど、芸能界やアイドルっていうのは「選ばれてる」んじゃなくて自分が「選んでいる」わけよな。

つまり、未成年であってもどんなに幼くても、自分で選択しなきゃいけない。親があれこれ世話するんじゃなくて、やるかどうかは全部自分で決めてほしいと思うんよ。すごく貴重な青春時代なんやから、何年か後に振り返った時に「言われたからやりました、やらされていました」はいかんと思う。だから、歌詞の中で「自分で決めや」ってことを何度も入れるんやと思う。

もちろんこっちはアドバイスするし、いろんな選択肢を伝えるけど、最終的に決めるのは自分。たとえ大人の意見と違うものを選んだり、最終的にアップフロントから離れたりしても、全部自分が選んだって胸を張って欲しい。考え方を擦り込みたいわけじゃないけど、そういうメッセージとして書いてるかな。

南波:最近卒業したメンバーだと、鞘師里保さんは自分で歌詞を書いていますよね。ご自身の意思でダンスを習いに行って、自分のやりたいことに突き進んでいる感じがあります。

先日、石田亜佑美さんにイベントに出てもらったときに言っていたことがおもしろかったのですが、鞘師さんとは対極なんですよ。「セルフプロデュースの仕事が増えているけれど、私はプロに求められたことに全力で応えたい」って仰っていたのが印象的です。

つんく♂:どっちもプロよな。芸人の世界でも、松本さんみたいに自らプロデュースしたりアイディアを出したりするのが好きな人もいれば、狩野英孝さんや出川哲郎さんみたいに、周りの求めることに全力で答えることで輝く人もいる。結果を出せるっていうのは、本人の努力と才能やから。

だから、どっちが優秀か、みたいな議論はなくていいと思う。全員が佐藤みたいに曲のことを考えなきゃいけないわけじゃなくて、それぞれの個性やから。なんも考えない人だっていても良いしな。

南波:だからインタビューしていておもしろいです。いろんな取り組みかたの人がいるなって思うので。

つんく♂:インタビュアーに対してもだけど、現場マネージャーにも思うのは、メンバー全員に「もっと曲のことを考えなさい」というスタンスにならないでほしい。そういう空気になってしまうと、メンバーの中には倒れたり体調を崩したりする人もいて、グループ自体がうまくいかなくなっていくと思う。楽曲重視だからあれやりません、これやりませんって外側ばっかりこだわると、解散したりメインメンバーがやめてまう気がするな。

南波氏「Berryz工房『1億3千万人総ダイエット王国』のようなぶっ飛び曲が生まれて欲しい!」

南波:グループやメンバーを想定した曲を書かれていると、Berryz工房「1億3千万総ダイエット王国」のようなぶっとんだ曲は生まれにくかったりしますか? 今のモーニング娘。だとどうなのかなと。

つんく♂:あの現象はハロプロの歴史上で「モーニング娘。」がメインストリームでいてくれたから、サイドでああいう曲を書けたんよな。同じサイド組でもなぜか°C-uteではそっち側に行かないのも不思議。思えば°C-uteのような完璧なアイドルは、この先10年生まれにくいと思う。°C-uteの鉄壁っぷりはアイドル界隈でもよくフューチャーされてきてうれしいけど、Berryz工房もほんまにすごいアイドルやったと思う。違う意味でのタフさがあって、俺をすごく駆り立ててくれたんよ。Berryz工房が、俺に書かせるんよね〜。

南波:唯一無二の存在ですよね。なにを歌ってもかっこよくてエレガントだし、ユーモラスだし、泣けてきます。

つんく♂:『1億3千万人総ダイエット王国』をシングルとして発表できたのは、ハロプロ全体でバランスを考えていたから。モーニング娘。も°C-uteもスマイレージもいて、ハロプロ全体での最善を常に考えてたから、ああいう曲が書けたんやと思う。Berryz工房しかやってなかったら、あの曲でシングル切る勇気はやっぱ、ないかも(笑)。

南波:なるほど。いろんなグループを見れるおもしろさは、そういうところから生まれるんですね。今はほとんどの作家さんが、毎回、一曲単位での勝負じゃないですか。総合的にプロデュースしているからこそ、こういう変わり種な楽曲が生まれるのが、ハロプロらしさだなと僕は感じています。

ハロプロを俯瞰してみる、という意味では『ピョコピョコ ウルトラ』の時期も印象的ですね。近い時期にスマイレージの「チョトマテクダサイ!」、Berryz工房の『Be 元気<成せば成るっ!>』があって、あの3曲が並ぶと、軽快な電子音をいろんなバリエーションで楽しめる。立体的に楽しめるのがハロプロのおもしろさですね。

つんく♂:あの頃はハロプロという箱自体で、俺も楽しんでたからな。敵も味方もない感じがした。

南波:ぜひまた、『1億3千万人総ダイエット王国』みたいな曲が聴きたいです。

つんく♂:了解(笑)。

A.B.C-ZやCUBERS……ハロプロ提供曲以外への想い。

南波:最近はハロプロ提供曲以外も増えていますよね。CUBERSの「メジャーボーイ」を作る際は燃えた、というお話をされていたと思うのですが、なにがつんく♂さんの火をつけたのでしょうか。


つんく♂:これまでもたくさんの楽曲提供やプロデュースの依頼を受けてきたけど、これって「レトルトの料理をチーンって言わせる」のとはわけが違うんですね。

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つんく♂
総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。