「J-POPカバー」が世界中でブームとなった意外な理由
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「J-POPカバー」が世界中でブームとなった意外な理由

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」、今回は、音楽を通じて世界へと乗り出すグリッジ株式会社の籔井健一社長との経営者トークをお届け。

cinnamonsとevening cinemaのコラボ楽曲「summertime」がTikTokをきっかけに、グローバルで大ヒット。その裏側には、データを読み取る籔井社長の努力が……。つんく♂も新たなエンタメの形を巡って、激熱ビジネストークを展開! つんく♂とevening cinema原田さんとの音楽談義はこちら。
(文 田口俊輔 / 編集 小沢あや

“小さな熱狂”が生み出した世界的シティポップブーム

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つんく♂:籔井社長はevening cinemaの原田くんとは、何年ほどの付き合いなの?

籔井:2年ほどでしょうか。2019年にレーベルが僕の会社にジョインすることになり、アーティストを探そう! となりまして。レーベルのマネージャーに「誰か良い人いないですか?」と聞いてみたら「原田夏樹というミュージシャンがいるよ」と紹介されたんです。

つんく♂:本当に最近の繋がりやったんやね。レーベルを運営するにあたり、どう展開していこうと考えていました?

籔井:僕はこれまで音楽業界で働いたことがなく、我が社にも経験者がおらず。その中で「evening cinemaというバンド及び原田夏樹という知的財産を、どう世の中に広めていくか?」をゼロから組み立てていきました。

そこで2017年にcinnamons(グリッジ内の同レーベル所属)とevening cinemaのコラボ曲としてリリースしていた「summertime」という曲をGoogleアナリティクスで見てみると、なんとなく東南アジアで動いているぞ!というのを知ったんですね。そこからデジタル用の施策・戦略を立て、アナログなことも並行しながらアジア圏への展開を意識していく、という流れがベースにありました。

つんく♂:アナログな展開の仕方もしているんですね。高性能AIがどんどん出来ている中、プロモーションを完全にAIに任せる時代は来ると思う? それとも、引き続きアナログなこともやり続けていかないとダメ?

籔井:私としては、やはりアナログがなことが前提なうえでAIと『うまく付き合うこと』が大事だと思っています。AIって、データの蠢きに反応して、対象をどんどんその蠢きに近寄らせていくんですよね。そこで僕は、「データ側を動かすためにどうするか?」を考えたんですね。色々とデータを見ていくと、YouTubeに「summertime」をカバーしてくれる人が徐々に増えてきていることを探知して。そうした発信してくれる人がもっと増えたら? と考えるようになったんです。

籔井:そういう“小さな熱狂”をYouTubeやTikTokで生み出せたらいいなと思い、意図的にデジタル上で色々な方に「どんどんやってみなよ!」と仕掛けたんです。その結果YouTube、TikTokでカバーする子や再生してくれる方が増え、オーディエンスデータとしてSpotifyが反応し、各国のバイラルチャートへと紐づいていったと推測しています。

つんく♂:すごい戦略をしっかりと練っているね。仕掛けを始めて、ちゃんとしたリアクションが帰ってくるまでに、どれだけのタイムラグがあったの?

籔井:正直、相当時間がかかりました(苦笑)。カバーしてもらう人を探し、その人の歌った動画についた各国の方に、英語やインドネシア語を使って「ありがとう!」とコメントを返していって……をジワジワと続けていたので、約1年を要しました。もちろん他にも色々な施策を行いましたが、結果的に手作業でアナログなことをずっとやっていました。

つんく♂:言葉は悪いけれど、それはコロナ禍だからバズったの? それとも時代や世の中が求めた結果?

籔井:どちらも、ですね。世の中の流れもありつつ、コロナ禍でみんな家で何かやるしかない状態になり、自分で楽曲をカバーしたり真似したものをネットに上げる……という流れも要因のひとつかなと。

つんく♂:マレーシアやインドネシア、タイでも今やK-POPが主流だと思うんやけれど、それでも親日の方は多いから、東南アジア圏でバズるのはなんとなくわかる。一方、ヨーロッパやアメリカでのJ-POP・シティポップの反応はどう?

籔井:アメリカだとカリフォルニア州の方では大きく数字が動いています。あと、2018年にevening cinemaが中国でツアーを開催していて。やはりアジア圏ではJ-POP、シティポップがカルチャーとしてウワッ!ときているようです。

つんく♂:そもそもの話、なんでシティポップがここまで世界的に流行るようになったって分析してる?

籔井:これが要因でブームになった! と断定するのはとても難しいのですが、色々な流れがありまして。

まず2010年代初頭に80年代のポップスや商業BGMをリミックスした「ヴェイパーウェイヴ」という音楽がネット上でブームになり、その派生で「フューチャーファンク」という80年代ダンスミュージックやディスコをリミックスするジャンルも現れ、そこに日本のシティポップがリファレンスされたりと、今の若い子たちによって昔の音楽が再解釈される流れがネット上で起こったんですね。ここがまず大きなベースなのかなと。

その流れから2016年に韓国人DJのNight Tempoさんが竹内まりやさんの「プラスティック・ラヴ」のリミックスをしたんですね。この年は日本でもSpotifyのサービスがスタートし、デジタルストリーミングを通じて新しい音楽と並行して古い音楽も聴ける文化のベースが出来上がってきました。

そして2017年(2018年という説もあり)に本家の「プラスティック・ラヴ」がYouTubeに非公式でアップロードされ、現在4千万再生以上も再生されたことで、よりネットで過去の音源を掘り返されては、非公式で上がり、また聴かれていく……という流れが生まれて行きました。

さらに大きかったのが2019年に入り、若者たちの音楽を楽しむ“形”や場所が、今までテープやCD、MDだったものから、ストリーミングサービスはもちろんTikTokなどの短尺で動画が愉しめるプラットフォームが主流になっていって。またそこで、動画に音楽を付けて投稿してハネるという新しい動きも生まれて。こうした流れでAIの発達によりYouTube、TikTokのアルゴリズムが働き、よりこうした音楽を後押ししていく……という流れが、シティポップブームの大きな要因の一つなのかなと思います。

つんく♂:へえ! それで東南アジアで火がついたんや。

籔井:そうなんですよ。しかも聴いているインドネシアなどの若い世代のユーザーは、平均年齢が若くソーシャルの扱いも上手いため、どんどんシティポップや原田くんが作った曲などが各プラットフォームで使われ、またレコメンドされてミーム化が起き、Spotifyなどのバイラルチャートの上位に入る環境が出来上がっていったと推測しています。

そこで2020年5月にインドネシアのYouTuberシンガー・Rainych(レイニッチ)が「summertime」をカバーし、同年10月にはRainychと原田くんのアレンジによる松原みきさんの「真夜のドア~Stay With Me~」カバーがリリースされて、さらに広がっていったのが東南アジア圏ではすごく大きいなと。

「日本語の歌の音節は美しい」J-POPカバーブームの意外な理由

籔井:アニメソングや邦楽をカバーしている子に「なぜ日本語の曲をカバーするの?」と聞くと、ほとんどの子から「日本語の歌の音節が美しいから」と言われるんです。日本の曲の音節や歌詞、メロディーの良さに触れ、彼らは頑張って日本語の歌をカバーしてくれているんだなというのを、その時になって初めて知りました。

つんく♂:面白い! そういう子たちってK-POPはカバーしているの?

籔井:いえ。それが、現地の歌か日本の歌がほとんどなんですよ。

つんく♂:へぇ! 耳障りの問題なんかな? 日本人としてはわからないけれど、海外の人からしたら日本語って発音してみたくなるのかなあ?

籔井:入り口としては日本のアニメに影響されて、日本の曲を歌い始めたという子が多いんです。そのうちに「日本語が美しい」、「漢字が美しい」ということに気づいたり、聞こえてくる音節の子音と母音の組み合わせが、彼らが第二母国語として使っている英語の「ar」の発音のようにフワッと繋がるものではないらしく、我々日本人ではわからない言葉の美しさを感じるそうで。それで一生懸命真似しようとするんだと、みんな口を揃えて言いますね。

つんく♂:それでみんな80年代のJ-POPをカバーするんだ! そういえば、昔って、歌詞がちゃんと聞き取れない歌い方とか、歌詞カードに書かれていない言葉が聞こえてくると、レコード会社に苦情の電話が殺到してたの。「何言ってるかわかりません」「歌詞カードと聞こえる言葉があってません」みたいなね。

籔井:えぇっ!?

つんく♂:ラジオや有線からヒットして、まだまだ歌詞カードみながら歌う時代やからね。その流れをぶち破ったのが、サザンオールスターズ。そこから流れが変わって、何をやってもOKになった。だからこそ、海外の人からしたら、昔のポップスを真似したくなるんだろうね。

籔井:はぁ~、なるほど! これは勉強になります。

「なんでも自分でやってしまう……」つんく♂社長の華麗なる悩み

籔井:つんく♂さんと言えばモーニング娘。のプロデューサーであり、僕の世代ではシャ乱Qのイメージが強いのですが、現在は経営者・ビジネスパーソンという立ち位置でもいらっしゃいますよね。会社を運営するうえで、どんな悩みと苦労があったのか?  純粋に気になっておりまして。

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お!「スキ」あざーす!
総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。