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ここから始まる、J-POPの新時代

サブスクって、そもそも何?

最近よく聞く言葉「サブスク」。今更「それ何?」って聞きにくいかもしれませんが、サブスクリプションの略ね。

今まではひとつのサービスに、その都度代金を払ってたものが、「月額○○○円で見放題!」とか「使い放題!」というようなサービスのこと。食べ物でいう、バイキング形式のようなイメージです。音楽や動画の世界では、数年前から多くなってきましたね。

とはいえ、アーティストや作品によってはまだまだ参入していないものもあります。所属事務所やレーベルの方針によるからです。ちなみにハロー! プロジェクトもまだですね。

さて、そんなざっくりとした前提の中、今日は過去を振り返りつつ、これからのJ-POPについて話させてください。

レコードからCD時代

昔の歌謡・芸能界では、ラジオで音楽を流し、それを無料で聴いていただき、曲を気にいった人にレコードやカセットテープを買ってもらう……という流れがありました。

時代が変わって、テレビ時代になっても同じです。テレビの歌番組やCMで採用された曲を聴いて、その歌手やグループの愛嬌やルックス、キャラクターを知る。そこから愛着が湧き、気に入ったらレコードやカセットを買う……という、良いビジネススキームが成立していました。ようは、曲を知ってもらえれば、歌手としてもライブや営業が出来たんです。

その頃から、民生機(一般家庭用のオーディオやテープレコーダー)の質もぐっと上がり、レコード音源を、ノイズ少なくカセットテープにコピー出来る時代に突入。そうなると「レコードが売れなくなる云々」とのことで、業界もカセットテープへのコピーやダビングに関して、うるさく言うようになりました。

「ダビングダメ!」って言うのに、レンタル屋が増えたのはなぜ?

にも関わらず、同時にレンタルレコード屋さんも発展。暗黙の了解の如く、レコードはカセットにコピーされ、学生達はカセットからカセットへのダビングをしまくったわけです。

(この時点で、ちゃんと未来を想定していなきゃいけなかったわけですね。「文明が進化すればコピーは作られるし、規制しても掻い潜られる」ということを)

しかも、その頃からCDが普及し、さらにノイズのない時代に突入しました。初めてヘッドフォンでCD音源を大阪のでんでんタウン(秋葉原のような電気街ね)で聴いた時は、音質の良さにびっくりしましたね。カセットにコピーしても、ノイズの無い迫力のある音質をキープ出来るようになりました。

音楽業界は「コピーダメ」「ダビングあかん」と言っているのに、実際に電気屋さんに行くと、入り口付近にたんまりコンポ型ステレオやラジカセがズラーっと売っている状況。どうみても「コピーできまっせ〜」「2倍速でダビングできまっせ〜」とうたっているわけで。

レンタル屋さんが増えたのにCDめちゃ売れてるやん

「レンタル屋のせいで、CDが売れなくなったじゃないか!」というと、逆。

1980年後半〜90年後半までは、過去を遡ってCD(レコード含む)パッケージ商品が一番売れた時代です。実は、その時代こそが一番レンタルレコード屋さんも多かったように記憶しています。

当然ながら、カラオケの発展普及も、この頃が一番すごかったのかなぁ? 

 俺ミリオンセールスの嵐、好循環のスパイラルが起きていた時代

1990年代半ば、シャ乱Q自体も「CDが沢山売れる時代」の中で、「シングルベッド」「ズルい女」「My Babe 君が眠るまで」「空を見なよ」「いいわけ」などのシングル曲やアルバムも含め、ミリオンセラーをたくさん出すことができました。

CDを売るという流通業界の中でも、音楽番組に出るという意味でも、バンドや歌手、アイドルグループなどライバルも多いなか、頭ひとつ抜け出すのは大変なことでした。

年間100組くらいのアーティストが新曲を出すとしても、その中でベスト10に新たに食い込んでくるのは1%未満かもしれない。でも、頭ひとつ抜け出すと、反響はとても大きかったです。環境の変化によって、影響力も持ちました。なにより、メンバー5人で分ける(比率は違えど)とはいえ、収入もそれまでとは桁違いとなったしね。

思えば、世の中のみんなが音楽を聴いていてくれた時代だったのです。

新曲を作る。
CDを発売する。
テレビに出る。
ラジオでもかかる。
有線でもかかる。
それらがプロモーションとなって、CDが売れる。
結果、ヒットすると、ダビングもされる。レンタルも増える。
でも、それらがさらに口コミとなって、みんながカラオケで歌う。
さらにCDが売れる。
コンサートの動員に繋がる。

アーティストにとっては本当に良い時代だったのかもしれません。作品のためのレコーディングには時間も費用もかけられたし、レコード会社としてもコンテンツを持つことに意義があったのです。新人10組が大赤字でも、1組のヒットが出せれば、一瞬で黒字化できる。まさに音楽業界は好循環スパイラルで、グルグルと回っておりました。

そんな、夢のような時代でした。

突如、流通の波が変わった2002年

1998年にデビューしたモーニング娘。も「LOVEマシーン」以降、数作ミリオンセールスが続き、アルバムも含めてまだまだバンバンCDは売れていました。2000年に入ってからは露出に対して、セールスの動き鈍いなぁと思うこともありましたが、「モーニング娘。自体にお茶の間が飽きが来てるからかなぁ、仕方ないな」って、サラッと流してました。

しかし、僕の記憶ではっきり確信したのが、2002年のこと。ガツンと頭を打ったようにCDの流通に異変が起きました。

手応え、露出、人気を含めて、どう考えても、3年前ならミリオンヒット間違いなかったはずの松浦亜弥が、ミリオンヒットに及ばなかったんです。ここでひとつの時代の移り変わりを痛感したことを、とてもよく覚えています。特に「♡桃色片思い♡」からの「Yeah!めっちゃホリディ」は、浸透度を含め、間違いなく手応えがあったのに、です。

思えば、2000年あたりから各レコード会社が定番化させていったのが、数種類のCDジャケットでリリースする手法。初回予約用のCDジャケットと、その後から一般流通するCDジャケットを、2種類販売するという発想から始まっていきました。

これは日本人のコレクター魂というか、レコード時代の名残というか。基本的には、レコード時代は1曲に対して当然レコードを1枚買うわけです。当たり前です。ですが、熱狂的なファンは、レコードというのは聴くほどにすり減るので、針を落とす用のレコードと、買ったままの袋に入れたまま1回も取り出さない保管用のレコードの2枚買う人もそれなりに居たんです。僕もそうでした。

なのでCD時代も、触る用と保管する用という意味で2種類が存在することは、感覚的に理解していました。

しかし、2000年あたりからレコード会社もCDジャケットを「今回は4種類作りましょう」とか、「6種類作りましょう」とか、ついには「封入するカードを12種類ランダムに入れて行きましょう!」みたいになってきて、「いくらなんでもそれはファンに対してあこぎじゃないか!?」と、僕もかなり揺らぎました。ファンとしては、ジャケット違いも全部持ってたいと思うのが真理ですからね。それでも、ジャケット数を増やせば、確実に売り上げが伸びるのも事実で、日々葛藤してましたね。

(その頃、CDのセールス論に新たなる発想を用いてAKB48グループは発展していきました。あれよあれよという間にミリオンヒットもバンバン出して、あっぱれです。ビジネスというのは、頭の根源を変更しないといけないんだなと実感しました……この話は、また別の機会にさせていただきましょう)

音楽業界という森の中で、いつの間にか僕は木の枝しか見れていなかったのかもしれません。気がつけば時代に変革が起こっていました。

そう、それはYouTubeの到来です。というのもその頃、ネット上には「違法アップロード / ダウンロード」という言葉が溢れていました。僕は、これらを「違法」とひとくくりに位置付けてしまったことがよくなかったのではないか? とも考えています。

発売されたばかりのCD音源やラジオ・テレビ番組がすぐにネット上にアップされる。もちろん違法と呼ばれているので、当然処罰され、いつか無くなるんだろうと考えていました。いや、そう思い込もうとしてたのかもしれません。

でも、それは誰にも防ぐことが出来なかった。防ぐどころか、どんどん発展していきました。結果、違法違法と叫ばれる分、YouTubeを見るにしても誰もがなんとなくコソコソ使うようになっていたように思います。

なぜ時代はYouTubeを見て見ぬ振りをしたのか

僕らのように、音楽を作ってCDを売っていた人間は、この流れを直視出来ていませんでした。

わかっていたのに、気づかぬそぶりで、「まあ、誰かが阻止してくれるだろう」と思っていたのです。だって実際に僕も、作曲するデスクに座りながらも、煮詰まったら、目の前のパソコンでYouTubeを開いて、懐かしいCMを観たり、洋楽の懐かしいMVをチェックしたりしていたもん。

もちろん、作曲部屋では、いろんな刺激を得るために、MTVも音を消して流していたし、CS放送や、ケーブルテレビもずっとつけっぱなしにしてた。タワレコにも毎月1回は行って、参考資料CDやDVDを紙袋いっぱい買って、聴きあさってた。情報を得るための一つとして、筆休め的に暇つぶし程度に観ていたのがYouTubeだったけど、当初は音楽含めた著作物としての扱いがまだまだグレーだったので、アーティストとしても「YouTubeを見てます」と言葉にするのは、ご法度な時代でした。

それと同じように世間の人たちにとってもYouTubeを見ること自体、ちょっと如何わしい、もしくは悪いモノを見てるような印象があったように記憶してます。「違法で音楽を聴いている」「違法でアップされたテレビ番組を観ている」という感覚がそうさせたのではないでしょうか。

でも、僕が楽しいのに、他の人が楽しくないわけがないわけです。それでもまだ音楽業界は「ネット上の無許可なコンテンツ類はいつかなくなるんじゃないかな」みたいな空気。公認する感じではなかったわけです(あくまでも当時の個人的感想。揚げ足取らず、参考程度に聞いてください)。

脱CD時代が到来したけど、音楽は流れ続ける

そこから、時代はさらに20年。誰もがスマートフォンを手に持ち、CDを売ってる僕らですらCDをめったに買わないんだから、ちゃんちゃらおかしいですね。

だってみんな、CDを再生する機械持ってる!? 持っていないでしょう!?

だからといって、音楽を聴かないわけではありませんよね。今も家の中はもちろん、車の中、店のなか、レストランなど、いろんな場所で「音楽のない空間はない!」って言い切ってもいいくらいに、音楽がずっとかかってるでしょ!?

「CDが売れない=新曲が出ない」ということでもないし、「過去のヒット作ばかりが流れている」ってわけでもない。今でもいろんなところで、新曲を聴くし、新作MVも見かける。うん。

とはいえ、レコード会社各社も、新曲の乱発はしなくなりました。新人の育成費もありません。新曲の制作費も下がりましたねぇ。MVも低予算で作ることになります。

それでも新作を作ります。レコード会社としても何か新しいものを作っていかなければなりません。僕らも同じです。作らなきゃ食っていけません。(もちろん売れなきゃですが)本当に大変だと思います。市場が成立してないわけですからね。

これからがJ-POPが本当の力を見せる時代

でもでも、海外のアーティストのMVを観ると、いまだに莫大な予算がかかってるものもあります。

K-POP勢たちのMVも、本当に美しく、良くできているものがいっぱいです。それらはどうやら日本の音楽制作やMV制作のスキームが違うようです。お金の出どころも違いますし、印税や原盤に関する仕組みも違います。

ですが、作品が良いことはユーザーにとってはありがたいし、アーティストサイドにとっても評価されることは嬉しいことです。このご時世の中で、作品に結果が出ているモノがあるのであれば、言い訳は出来ません。僕もアーティストの皆さんもこんな中でも何か考えて結果を出すしかないわけです。

では、J-POP陣営は予算が無いから作れてないのか? 結論をいうと、あの手この手で素晴らしい作品が沢山登場しています。とくに、この2〜3年は米津君やあいみょん、Official髭男dismなど(もっといっぱい、良い若手がいるの知ってるよ)、20年前では考えられないところからの出現に驚いています。

よく、楽曲を聴いてみてください。音楽の質も、とてもJ-POPらしくて巧妙です。音質、音の成り立ち、空間(サウンドの奥行き感など)、そもそものメロディなどなど……本当に匠みで、よく出来てるんです。日本の芸術作品ですね。限られた予算の中で神妙に作られているように思います。

今の音楽シーンは、パッケージCDを生産すると同時に、YouTubeなどに無料でアップすることによって、よりたくさんの人に聴いてもらう流れになりました。

良質なもの、心を掴むもの、時代にハマったものなどなど、突き抜けてるものはバズる。ネット上での評判から、結果テレビに出演することもあるし、その頃にはもうかなりの浸透度で認知されてるので、ライブでの動員が期待される。特にアイドル関連においては、グッズの売り上げに繋がっていきます。

これが昨年までのアイドル業界の、大きな新しい流れでもありました。それがご承知の通り、2020年はコンサートの計画が立てられない。したがってグッズも売れない。音楽が作れない。新曲も出せない。とさらなる負のスパイラルと化していきます。

だからみんな、インスタ、YouTube、SHOWROOMでの生ライブなど……オンラインでの営業を頑張る。でも、しんどい……「回収出来ない」。まさに沼。

負のスパイラル下で、何が出来るか

冒頭に戻りますが、2010年代後半から、音楽業界もサブスクでの定額聴き放題が定着してきました。

これまでの当たり前とは違うスタイルの中で、新人を育てていかなければなりません。僕は負のスパイラルから脱却するために、エンタメファンのみなさんの応援を必要としています。音楽でも映画でもそうですが、作品を作らなければ、みんな楽しめません。

夢を語ります

はい、では僕の夢を語りまぁ〜す!

日本の音楽シーンの水準をあげて行くためには、マーケットの変更も含め、ビジネスとして成立するまでに最低5年かかると思います。人材育成としての時間もそうです。その5年間を耐えるためにも、原資が必要です。

これは僕個人の資産を投げ出す程度で成立するものではありません。新人を幼少期から育成し、高水準のコンテンツ化し、グローバル化させていく。この予算をどうやって捻出するか。これまでは、さっきも書いたように各メーカーが未来の収益を見越して、先行投資というかたちで、新人を育ててきました。今はレコード会社より、サブスク配信などの会社の自社コンテンツを作る予算が、一番高額でしょう。

お金があっても夢やビジョンがなければ環境は作れないし、どんなに有名な先生が「無償で手伝うよ!」って言ってくれたとしても、愛や想いだけでは新人は作れません。やはり原資が必要です。

これからのご時世、商品を買う時代ではなく、商品を作ってシェアする時代と考えます。僕としても、若手を育て、シェアしていくというインフラを作りたいと考えています。その第一歩として、オンラインサロンでも日々検証しております。

結論を言えば、この混沌とした時代の先には日本人でしか作れない超匠みな作品が絶対に世界に響き渡る時代がくるはずと考えています。

J-POP新時代の幕開けです。本当の個性あふれるJ-POPの時代が、これからやってきます。江戸時代の日本独特の絵画や芸術がヨーロッパのアーティストたちに衝撃を与えたように、日本人にしか作れない匠な作品が世界に響き渡っていく気がしてならないのです。僕には、はっきりとJ-POPの未来像が見えています。

新人を育て、一緒に日本の優良なコンテンツを世界に送り出したい。しかし、この負のスパイラル下では、どう考えてもそれが出来ません。

これからやってくる「J-POPの新時代」のインフラを、一緒に整えていくことへの賛同者はいませんか? そして、これからやってくる「J-POP新時代」を一緒に作りませんか?

J-POPがこれからいかに面白くなるか、感動を共有できるはずです!

(文 つんく♂  / 編集 小沢あや

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総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。

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コメント (2)
こんなに面白く深い文章が、無料で読めてしまうすごい時代ですね。
「ファンに対してあこぎじゃないか」と思えるつんくさんだからこそ、ずっと私はファンなんだと改めて思いました。
これからもついていきます!
まさに崖っぷち音楽芸能業界の赤裸々な報告です。コロナ禍もありますが、同時にコンテンツ体質も問われている。「鬼滅の刃」は映像ジャンルですが、あらゆる素材が受けない中、これだけがヒットする理由を精査する必要がありますよね。月並み評価ですが新人作家の新機軸勝利、プロットは火星の話しではなく、日本の大正時代。日本人でもそのスパンを忘れていた。どうしてか? /メディアが取り上げなかった、歴史を知らな過ぎた等々、全般知識の貧弱がもたらした結果です。それらの原本シナリオを作成する人材発掘が急務です。日本には素材がいっぱい転がっている。ただ、いまだに西洋指向(地中海ギリシア)から抜け出せない盲目的崇拝心がある。それに輪をかけてガラパゴスしているので、座標が定まっていない。そこいらを再検討する必要があるでしょう。(これは音楽芸能プロ世界に限らないことで日本全部の指針だとおもいます。今回このようなスタイルで直接、芸能当事者に意見できることも初めてでしょう。大切なことです)
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