「本物のプロデューサー」だけが持っている、6つの力。
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「本物のプロデューサー」だけが持っている、6つの力。

つんく♂

これまで、たくさんのアーティストや楽曲のプロデューサーをしてきたつんく♂。長年活動して辿り着いた知見をじっくりと言語化した、書き下ろしコラムを無料でお届けします。最後の「プロデューサーに不要なもの」の解説のみ、購読者限定でお楽しみいただけます。
<文 つんく♂ / 編集 小沢あや(ピース) / イラスト みずしな孝之

「プロデューサーに必要なものは何ですか?」

先日出演したハイブリッド講演会『PRODUCERS 2022-これからの時代に必要なPRODUCE力とは?-』の議題のひとつ。僕も改めて、いろいろと考えてみました。

僕は現在、英語圏に住んでいます。日本語の「プロデューサー」や「プロデュース」という言葉と、英語の「Producer」や「Produce」の意味は少し違うようです。もちろん大枠は一緒なんですけどね。

日本で「プロデューサー」って肩書きを聞くと、「テレビなら、番組を仕切ってるんだろうな〜」とか「CMなら、大きなお金を動かしてるのかな〜」とか「タレントのブッキングもするんだろうな〜」とか。映画も、会社のプロジェクトも、なんとなくその現場をまるっと支配してるような……そんなニュアンスで受け止めていると思います。

僕の職業も、「歌手やアイドルのプロデューサー」と言われたら、人事権含めていろんな権限を持っているイメージを持っている方が多いでしょう。

しかし、アメリカで「君の仕事はなんだ?」って質問に「プロデューサーだ」って答えると「何を作ってるんだい?」って聞かれます。どうやら、「Produce」とは、「生産」という意味なんです。野菜を作る農家とか、何かしらの製品を生産しているイメージが強いようですね。

もちろんエンタメの世界での会話ならばある程度の意図は伝わりますが、それでもコンポーザーやDJは「音楽そのものを作ってる人」というニュアンス。しかし、日本のプロデューサーとなると、もっと客観的な立場の人だと受け取られます。

とまあ、そんな前提で。今回は日本語的な意味での「プロデューサー」に必要なものをテーマに話していきますね。

僕のようなエンタメの世界のプロデューサーでも、おしゃれなレストランのプロデューサーでも、ショッピングモールのイベントプロデューサーでもいいです。もちろん、もっと小さなコミュニティーの仲間が集まったときの担当としての「プロデューサー」も、基本的には同じと考えてください。

とにかく、そのプロジェクトをゴールに向けて責任持って進めていく人。そう考えましょうね。さて、イメージは出来ましたか? 自分が「プロデューサー」となった時、もしくは今すでにプロデューサーだとして。想像しながら聞いてください。

それでは、プロデューサーに必要なもの6つ。解説していきましょう。

1.イマジネーション力

僕のような「0から1」にするようなクリエーター的な想像力や、すでにある商品や作品を「あいつとコラボしたらバズるぞ」とか「あの店に置くと口コミが広がるはずだ」もそうです。

そのほか「タイトル」「ネーミング」「キャッチコピー」。昨今でいうとSNSなどで用いるアイコンやサムネイルのデザインや、そこでのコピーなども重要です。とくに、タイトルをつける力やネーミング力って、本当に大事だなって思います。

聞いただけで想像できてしまう「プッチンプリン」。なんだか言いたくなる「消臭力(りき)」。テレビも、どんな番組かパッとわかるのは重要です。昼に南原さん司会の「ヒルナンデス!」や、平日昼間の帯番組「ひるおび!」。どっちもすごいネーミング力だなぁ〜、って思います。こういう想像力、発想力、素晴らしいですね。

天才的なひらめきの持ち主は、たしかにいます。『IPPONグランプリ』という大喜利番組なんかも、閃き力と想像力の競い合いです。職業は違いますが、歌詞を書く僕からしても、とてつもないライバルたちです。ダウンタウンの松本さん筆頭に、バカリズム氏や千原ジュニア氏、大吉氏、有吉氏やほかにもたくさん。「頭の中どうなってるんだ!」って思うような芸人さんがたくさん登場します。

でも、歌詞を書くにしても、大喜利や謎かけにしても、実は訓練である程度以上のレベルまでは絶対にうまくなるはずなんです。ある程度、パターンやフォーマットがありますから。

今回はその細かい部分は書きませんが、結論を言うと「とにかく訓練するしかない」って思っててください。僕も「なんでそんなにたくさんの歌詞が書けるんですか?」と、聞かれますが「とにかく書いてきた。数をこなしてきた」と答えるしかありません。

「想像力」の裏には「訓練」や「反復練習」があるということを、プロデューサーは絶対に忘れてはいけません。「訓練」や「反復練習」は、必須アイテムです。瞬発的な想像力を持った人には敵わないかもしれませんが、訓練することによって、そこにかなり近い想像力を鍛えることはできます。

2.判断力(即決力)

人選や、OKテイクを決める時のスピード力。プロデューサーは責任者なので、「判断力」が必要です。コンビニに行ってどのお菓子を買うか迷うのは自由。なんですが、これも訓練。普段から即決する癖をつけるべきです。

僕の仕事だと、モーニング娘。がレコーディングで一節を歌った時。その歌が自分の中でOK水準だったのか、まだまだ達してなかったのかを即判断しなければなりません。

ちょっと合格点には足りない。けど、その子にとっては過去一番良い歌だったかもしれない。もう一回、もう一回、とリテイクしているうちに本人のテンションが下がっていき、他の一節もいいのがまったく録れなくなる……なんてことも多々あります。

僕は「OK!」「もう一回!」みたいな感じで、歌い終わるか終わらないかくらいのタイミングですぐに声かけするようにしています。歌ってる本人が、自分の歌が良かったのか、悪かったのか迷ってしまうからです。また、ちょっとこなれてきた子は自分で「もう一回」とか「あんまりよくなかった」とか言い出します。本人の判断でやり直させると、必要以上に濃い表現になってたりして、耳障りがうざったい歌唱になってしまうこともあるのです。

芝居やMCもそうです。考える時間を与え過ぎると、必要以上のものが溢れてきてしまい、結果全体がダラ〜ッとします。それは、プロデューサーのとっさの判断力が少しずつ鈍ったりした結果。手綱を取るプロデューサーは、判断力が大事なのです。

面談の時の判断力。ちょっとしたパーティをするにしても、その時に必要なものや店を即時に決める力。こういうのは、雑用係をやってる時期に鍛え上げちゃうべきものですね。雑用やアシスタント時代は、とても大事です。これからプロデューサーを目指す人は、今、訓練だと思って、いろいろ即断をしてみてください。

若い時に必要なのは、答えを一つにしないで、2つ3つ持っておくこと。たとえば、「パーティー会場決めておけよ」って言われて、1軒しかKEEPしてないと、当日やイベントの方向性が変わった時、瞬時に対応できません。いくつか予備を持っておくと、上司に大目玉をくらうことなく、褒められるでしょう。

アシスタント時代は、失敗体験をしておく時期でもあることを、覚えていてください。

3.適応能力(順応力) 

さて、さっきのアシスタント時代の話にも被りますが、「適応能力(順応力)」。

もちろん、太鼓持ちみたいにアイドルやタレントによいしょばっかりいうようなことではありません。仕事をしていると、さまざまなトラブルがあります。「クライアントの意向が変わりました!」とか「タレントが急に来れない!」とか「データがまだ届きません!」とか「尺が変わりました!」とか「今回は予算が全然ありません!」など……。

そんなとき、「それじゃ、俺は作れねえ!」と、こだわり職人のようなことを言ってるようでは一流のプロデューサーにはなれません。一流のプロデューサーは、どの現場でも即座に判断して、すぐ次のアイデアを出しています。そして、なんだったらハプニングを活かして、もっといいものに仕上げます。

そのほか、社会の動向も見ておかなければいけません。「今の時代、その言葉は使えないでしょ!」とか。「あの国であんなこと起こってるのに、これは今は無理です」「せっかく作ったけど眠らせます」みたいな、適応能力ですね。

実は、僕が一番重視しているのも、失敗後の即時対応力です。作品の完成形が頭の中で固まっていて、ミスやハプニングに対応出来ないプロデューサーはダメです。そんな頑固なこだわりは、一切必要ないと思ってください。

4.指示力(説得力) 

プロデューサーとして上に立つ場合、チームメンバーや部下への「指示力」も必須です。

さっきはパーティの店をアシスタントが決める話をしていましたが、大事なのはプロデューサーとして、どんな店を探させるかの指示力です。

人数、場所、時間帯、食べ物、広さ、スタッフの対応力、そこから次の場所への移動距離などなど、いろんなことを「お前やっといて」でなく「8〜9割の指示」を出してあげる能力。これが上に立つ者としてとても大事です。

「なんでできないんだよ!」「それくらい考えろよ!」と言うのは簡単ですが、本当に重要な場面ではなるべく的確な指示を出すこと。そして「今回は少々失敗してもいいかな」って余裕がある時には「自分でやってみ!」みたいな指示出しをするのもOK。

とにかく、新人を扱う時は歌手でも社員でも「1〜10」指示することを訓練してください。ゼリーを買ってきてもらう時でも、どのコンビニがいいか、スーパーか。どの辺の棚にあるのか、探させるならそんな時間のある時なのかどうか。どんなタイプのものか、色は? 形、大きさ、量は? 常温か冷えてるものか。買った後は凍らせるのか、常温キープか。そういうことを、なるべく具体的に指示出しすること。

モーニング娘。や松浦亜弥のレコーディングもそうでしたが、マイクの前に立ち方、ヘッドフォンの付け方、「レコーディングブースの中に入るときは、そのジャラジャラするネックレスは外してきてよ〜」とか、「ピンピールはないでしょ!」みたいなことを、「なんでわかんね〜んだよ!」ではなく、しっかりと話していく。もしくは、やって見せる。そうすると、問題点や自分の今までの考えがまとまってきます。繰り返していくうちに、自分自身がひとつグレードアップすると思ってください。

「指示力」と同じように、「相手に伝える」という意味では「説得力」も含まれます。歌手が「こんな気持ちじゃ歌えない」って時も、とことん説明して「わかった」って気分よく歌えるように持ってくとか。予算をもう少し上げてもらうように交渉したり、「今回のこのイベントは絶対に今やるべきです!」と、相手を口説き落とす力。

言葉巧みな人もいますが、必要なのは「情熱」です。中途半端に「やってくださいよお〜」みたいな言葉をいくら並べてもダメ。「なぜ、この場面ではこのセリフじゃなきゃダメなのか」をしっかりと説明したり、「今回は北海道ロケじゃなきゃ絵にならないんですよ〜」って説得したりするときは、自分が惚れ込んだ企画じゃないとダメ。相手を口説けません。こういうところがとても大事なので、「説得力」を意識してください。

先ほども書きましたが、「頑固」とは違います。北海道でのロケがどうにもこうにもダメだなって思った時は瞬時に頭を切り替えて、違う場所ならどんなことができるか、東京ででも北海道を感じさせることができるかなど、切り替えは絶対に大事です。

情熱があれば作品はブレません。専門学校でロジカルなこともたくさん習うだろうけど、最終的に人を動かすのは「情熱」。あ、もちろん、ロジカルに話すのは、基本だからね。

5.カリスマ力(人気と嫌われ役も含む) 

プロデューサーといえば、花形です。成功すれば、一気に株が上がりますね。それまでごく一般のおじさんだった人も「あのCMをヒットさせた人だ」「あのバラエティ番組のPだよ!」「あの人気のゲームのプロデューサーだって〜!」ってなると、急にカッコよくみえたりします。

よく「プロデューサーになるためには、カリスマ力が足りないんです」なんて言う人もいますが、そんなものは後からついてきます。結果さえ出ればカリスマになれるので、最初から雰囲気作ったり、ファッションや持ち物でカリスマ性を出そうとしない方が、僕はいいと思ってます。清潔にさえしておけば良いのではないかな? って。

ところで、ここでも大事なことがあります。人気者や時の人となって「カリスマ!」って言われる時もあるけど、はっきりモノを言うアイドルPだったり、バラエティで厳しい番組Pの場合は、タレントに嫌われたり、ファンに嫌われたり、怖がられたりもします。

しかし、これもプロデューサーの仕事です。アイドル(自分の商品)が人気者になるのであれば、少々の嫌われは、受けて立つべきです。SNSでの批判や、メンバー本人に嫌われることを恐れてしまっては、作品が鈍ります。そうすると結果作品がヒットしないわけで。中途半端に厳しくされてアイドルも損だし、Pとしても世間にも嫌われ、作品も売れない。いいことなしです。

「情熱」があれば最後はわかってもらえます。感情だけで厳しくしているのではなく、理由があれば、ファンはもちろん、メンバーやタレントさん、社員やスタッフ、クライアントさんにも、きっと伝わると思うんですよね。

目立つということは、時にはアンチも抱えることになる。でも、自分を信じていくのだぴょ〜ん! ただし頑固NGね!

6.バランス力 

さて、いろいろ話してきましたが、最終的に一番大事なのは「バランス力」。

天才的なキャッチコピーやタイトル、商品デザインだけでもダメ。チームを作っていく能力。部下を育てる優しさ。クライアントへの気遣い。時代への適応能力。あれこれ含めて「バランス力」の悪い人(チーム)はきっと長続きしません。

一瞬時代の寵児と言われることがあっても、そんなに長くは続かないのではないでしょうか。もし、長く続いたとしても、人間として何か欠けてしまってるのかもしれません。「成功者=幸せ者」ではないということだけは伝えておきます。

「バランス力」の中には「言葉遣い」とかエチケットやマナーなんかも含まれます。「彼すごいんやけど、なんか小汚いよね」とか「タクシー乗ったらなんであんなに偉そうなんだろ」みたいなのではダメだと思うんです。

令和の今、「演技が天才的」「ギャグがすごい」「金メダル保持者」「株で大儲けした」等、何か秀でてるものがあったとしても、そのほかの部分が足りないと、あんまり時代ウケしないようです。

それ以外のバランス力としては、「出る杭は打たれる」ということもわかりつつ、謙虚な気持ちを忘れないってことですかね。僕自身、「いつも気をつけないと知らない間に横柄になってるよな〜」なんて思う時もあります。

そして、やはり健康を維持するための生活能力ですね。さらに、家族のいる人は家族サービスもそうでしょうし、家計管理能力も。どんなにお金を稼いでも、すぐ使ってしまってはまったく意味ないですからね。こういうのもバランスです。

ということで。プロデューサーに必要な要素は6つ。

1.イマジネーション力
2.判断力
3.適応能力
4.指示力
5.カリスマ力
6.バランス力

以上です。

逆に、プロデューサーに不要なものとは?

最後に、プロデューサーにあんまり要らないものを書いておきますね。 

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つんく♂
総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。