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「自信曲ほど聴かれない」悩める人気ボカロPに、つんく♂が徹底解説!

ボカロP・ピノキオピーさんの対談企画・後編は、つんく♂流の歌詞の世界の作り方をつんく♂自ら徹底解説。今、ピノキオピーさんが抱える深い悩みにも、真摯にお答えします。対談前編はこちら。
(文 田口俊輔 / 編集 小沢あや


Berryz工房10周年曲に込めた“ガチの感謝”

ピノキオピー:つんく♂さんは絶対に明るいような曲でも一貫して「現実にあること」を歌詞に盛り込みますよね。そこが大好きで面白いなぁと。

ピノキオピー:例えば「ハッピーサマーウェディング」は2番に「学生の頃恋した彼」、最後のサビ前のモノローグには結婚相手の「証券会社の杉本さん」が登場します。この2人って、たぶん別の人ですよね。

つんく♂:そう! 杉本さんは、学生時代の彼氏とは違うんよね。これ、主人公が結婚式の前の日に小さい頃の写真を眺めながら「そういえば、あの時はこんなことをしたなぁ」って、頭の中のポートレイトがホワンホワ~ンと浮かんでいる、という歌なんよ。

ピノキオピー:普通に綺麗な歌にしたかったら、学生時代の彼氏とそのまま上手くいって結婚するという、理想の流れにすると思うんです。だけど、「ハッピーサマーウェディング」は、ちゃんと失敗もあった先に運命の人が待っていたというリアリティがある。それがすごく面白いんですよ。

つんく♂:お! そうか。意識してなかったけど、確かにそうだね。でも、こう書かないと両親への感謝の気持ちの描写が弱くなんねん。すったもんだがあった方が、感謝は強くなるやん?

ピノキオピー:確かに!

つんく♂:ただね、俺は気が小っちゃいから、こういうフレーズは1番に置かずに2番に書いちゃう(笑)。

ピノキオピー:あはは! あと「ザ☆ピース!」で、平和について歌うにあたり「選挙」という、リアリティのある話を盛り込んでいるところも好きでして。

つんく♂:今でも選挙があると、いろんな人がその部分をツイートしてくれるからありがたいのは確か。当時もそれなりに頭ひねってぶっ込んだ記憶がある。他の曲でも売れてる間にもっといろいろぶっこめたなぁ〜って思うわ。

ピノキオピー:つんく♂さんでも、そう思うんですか。

つんく♂:うん。今、政治家につっこみたいことがあったり、情勢に対して物申したいことがあって「これを言葉にして発してやる」と思っても下手にSNSに書いたら意味なく炎上して終わってまうやん。なので、結局、俺の中で飲みこんで終わり。せいぜいオンラインサロンのメンバーにだけぼやいて終わる。それでもだいぶスカッとするけどね。

ピノキオピー:(聞き入る)

つんく♂:でも、歌詞にして、10代の女の子が歌うと風情になる。「ザ☆ピース」では、そういう世の中にツッコミたい気持ちを、「10代の子たちが平和にしたいという気持ち」を通して「選挙に行こうよ」って書けたんよ。アーティストが乗ってる時な分、説得力も浸透性も高かった。売れてる間にあと、2つ3つ散りばめたかったって思うメッセージがあるなぁって今になって思う。でも、曲にはそういう力があるから核たるメッセージは今でもしっかり曲に入れ込んでるんやけどね。

ピノキオピー:なるほど。ただ「幸せ!」と浮かれているのではなく、ちゃんと現実を見据えている。だからこそ僕はつんく♂さんの書く歌詞のリアリティさにグッとくるんですよね。Berryz工房さんの「普通、アイドル10年やってらんないでしょ!?」にもめちゃめちゃしびれました。

つんく♂:ありがとう! いろいろ聴いてくれてんなぁ。

ピノキオピー: 10周年というメモリアルイヤーに、あそこまでシビアでリアルな気持ちを書いた曲をかましたことが、かっこいいと思いまして。

つんく♂:あの曲を書いたころは、ボカロが新しい時代の音としてたくさん出てきて、「時代が変わる!」という空気を感じたかな。

ピノキオピー:時代が切り替わっていくタイミングでしたよね。

つんく♂:アイドルシーンでもAKB48がブレイクをきっかけに、その後、地下、半地下含めて、たくさんの有象無象のアイドルが登場してアイドルが近づいてくれた分「アイドルであること」のありがたみやカリスマ性が薄れてきてるなぁ感じていて。そんな中でBerryz工房は、10代前半から活動を始め、土日祝日、盆暮れ正月を返上してライブや握手会を10年続けたわけ。「ようやってんなあ!」って、再認識したの。彼女たちへの感謝と敬意の気持ちを、表現したかったんよね。

ピノキオピー:“つらさ”をしっかり込めつつ、かといってシリアスすぎない、このバランスが素晴らしくて。「石の上でさえ3年だよ」とか「アイドル10年やっちまったんだよ」というフレーズからは、ユーモアすら感じるんですよね。

つんく♂:そういう書き方にしたのも、本人たちが「やらされたんじゃない!バイト感覚でもなく、ちゃんと自らやっていたんだよ!」という、シッカリとしたプライドを持って活動していたから。その彼女たちの姿勢への俺からの感謝とガチなリスペクトを、シッカリと込めたかったのよね。

ピノキオピー:つんく♂さんの言葉って本当に切実で、すごく心動かされるんですよ。もうなんと言えばいいのか……ただただ尊敬しています。

つんく♂:あざっす(笑)!

「LOVEマシーン」は狙った曲、「ミニモニ。ジャンケンぴょん!」は偶然のヒット

ピノキオピー:つんく♂さんにすごくお聞きしたいことがありまして。僕は、作った瞬間に手応えを感じた曲があまり聴かれず、逆に「そうでもないかも?」と思った曲がたくさん聴かれることが多々あるんですよ。

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総合エンターテインメントプロデューサー / TNX株式会社代表取締役社長。1992年、ロックバンド・シャ乱Qのボーカリストとしてデビュー。音楽家として作詞・作曲と、「モーニング娘。」をはじめとした数多くのアーティストプロデュースを手がける。