「ねぇ、ママ? 僕のお願い!」母の日に、長男が涙した小さな秘密の物語。
noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」のご購読ありがとうございます。5月のおまけとして、ハワイの生活情報誌「Lighthouse Hawaii」過去掲載分を加筆・編集し、無料公開します。長男が、母の日にポツリとこぼした一言とは?
(文 つんく♂ / 編集 小沢あや )
2019年5月、僕は仕事のために家族と離れ、単身日本にいました。家族がハワイで暮らすようになって丸3年が経った頃のことです。子どもたちも、僕が仕事のために家を空けることにある程度慣れていて、パパ不在の間の家族での過ごし方も、なんとなくの規則ができていたタイミングでした。
当時8歳だった次女は「パパがいないと寂しい!」なんてテキストでメッセージをくれましたが、妻いわく、小うるさいパパ(僕ね)がいないと家の中がそれなりに静かなようです。
そんなある日、妻からこんな連絡がありました。「今日、長男(11歳)に悪いことしちゃった」と。詳しく話を聞いてみると、僕のいない週末の土曜、長男が「どうしてもMacy's(メイシーズ)に行きたい、買いたいものがあるからママに連れて行ってほしい」とせがんだというのです。
Macy'sは、アメリカのデパート。「わざわざMacy'sを指定するなんて、どうしたんだろう?」と、僕も不思議でした。
僕がいない分、ワンオペ育児になる妻。ちょっとした買い物や子どもの習い事の送り迎えだけでも1日のスケジュールがパンパンになってしまいます。そんな合間に長男の要求のためだけに予定調整してMacy'sに行くのも、結構大変です。
なので、妻は長男にこう伝えたんだそうです。「なんでMacy'sに行きたいの? ちゃんと教えてくれないと、意味なく時間を作れないよ」と。そして、妻に便乗するかのように、双子の長女(11歳)も「そうだよ! なんでMacy'sに行きたいの?理由を言ってよ。今日はプールで遊ぶ日でしょ!」と、問い詰めたそうです。
しかし、かたくなに理由を言いたがらない長男。女子たちは「なんで?」「どうして?」と散々問い詰め、ついには長男は半べそをかきながらこう言ったそうなのです。
「明日は母の日でしょう? だから、Macy'sで何かプレゼントを買いたかったんだよ。他の店だと高いけど、Macy'sだったら僕のお小遣いでも何か買えるものがあるんじゃないかって思って」と。なんとまあ泣ける話!
確かに、今まで母の日には僕とこそっと買い物に行ったり、メッセージカード作ったりしてきました。しかし、今回は僕が出張で不在。でも、母の日は迫ってくる。長男の中でも葛藤があったよう様子。サプライズしたいけどできないもどかしさの中で、ママに「Macy'sに行きたい」と告げたんだと思うと妻もとても切なくなったそうです。
日本なら11歳ともなれば、コンビニでも近所のスーパーでも学校の帰りにでもちょこっと寄って、お小遣いで花でもお菓子でもハンカチでも、何かしら買うことが可能ですよね。そんなにたいそうなものを買わなくっても、ちょっとしたカードにメッセージだけでもうれしいものです。
しかし、ハワイでは子どもの単独行動が制限されています。なのでメッセージカード1枚でも、子どもだけでは買い物ができないのが現状です。彼らにとってもなかなかのストレスだろうなぁって、改めてそう思いました。
この連載コラムを発表したのち、双葉社の方がこのエピソードを気に入ってくださり、絵本化されることになりました。
僕にとってはちょっとした生活の1ページで、そんなつもりもなかったけど、世の中、何がどう広がってくか、わからないものです。よかったら是非、手に取って下さい。
(c)つんく♂・なかがわみさこ/双葉社
【タイトル】: ねぇ、ママ?僕のお願い!
【発売日】:2020年6月19日
【作者】:(詩)つんく♂/(絵)なかがわみさこ
【定価】:1,400円+税
【判型】:B6変型
【出版社】:双葉社
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