石田亜佑美×つんく♂の卒業記念対談
加入時の石田は、褒められ下手
つんく♂:卒業を発表してから、どれくらい経つ? 発表前と今とでは、何が変わった?
石田:5月末に発表したので、3カ月くらいですね(対談は10月に実施)。発表前は「本当にこの決断で良かったのかな」と不安で、1人で泣くことが多かったんです。発表後は、ファンの方からたくさんのメッセージをいただいて、心強く感じています。
石田:卒業発表を機にたくさんのお仕事をいただいて、私をフィーチャーしてもらったんですよ。私はそれを「卒業フィーバー」と呼んでいるんですけど、とても楽しくて「卒業っていいものだな」って感じています。
つんく♂:普通、何回もあることじゃないからね(笑)。ところで、モーニング娘。のリーダーは、譜久村聖の時代が長くて、2023年からは生田衣梨奈がリーダーになったけど、グループとしてはどんな変化があったの?
石田:生田さんって、すごく可愛いリーダーなんですよ。先頭を走って、みんながついていくというより、フォローし合い、時には突っ込み合いながら進むんです。そうすると後輩の頼もしさが際立つんですよね。メンバー全員が明るく過ごせている気がします。
つんく♂:それは良かった。石田は今27歳。14歳の時に加入したから、地元の仙台で育った時間と、モーニング娘。として生きた時間がほぼ同じだよね。メンバーに加入して、一番大きく変わったものは何?
石田:人間性が変わりました。モーニング娘。に加入した当時は、自分の性格が嫌いだったんです。誰にも負けたくない気持ちが強い上に、嫉妬を「悪いものだ」と決めつけていたから苦しくて。
だから人を褒めるのも苦手でした。初めての後輩・小田さくらも、その後の12期メンバー(尾形春水、野中美希、牧野真莉愛、羽賀朱音)のことも、褒めてあげられなかったですね。
つんく♂:え〜、そうなんや。なんだか不思議な気もするけど、そう言われたら納得感もある。だからあの頃はピリピリしてたんだ。
石田:本当に申し訳なかったですね。15期に赤ちゃんみたいなメンバー(北川莉央、岡村ほまれ、山﨑愛生)が加入して、コロナ禍で自分を見つめ直す時間が増えて。そこから「後輩」の概念が変わったんです。「こんなに可愛いものなんだ!」って衝撃を受けました。その頃から「後輩にも尊敬できるところがある」と素直に褒められるようになって。いつの間にか、「こうやって生きる方が楽しいな」と思うようになったんです。
つんく♂:なるほど、あの辺で石田が変わった気がするのは、それか。そもそも石田自身が褒められ下手だったもんね。
石田:褒められてもどう返したらいいのか、わからなかったんです。
つんく♂:石田のすぐ上の9期には鞘師里保や譜久村聖がいて。その後すぐ石田を含めて10期メンバー4人が加入してきたよね。10期では誰がライバルだったの? ハロプロ研修生(ハロプロエッグ)だった工藤遥とか?
石田:誰でしょうね。工藤はいろんなことを話せる相手で、だからこそ負けたくない相手でもありました。ダンスでは、先輩の鞘師さんを意識していましたね。
それにしても、つんく♂さんも私のことを「褒められ下手」だって思っていたんですね。私は自覚がなかったんです。でもファンの方から「昔の亜佑美ちゃんはファンがいくら肯定しても『私なんてそんな』って謙遜していたよ」って言われました。今は、「本当にありがとう!」って返事ができるから。ファンのみなさんには、伝わっていたんですね。
つんく♂:そうね。でも石田の褒められ下手は、鞘師とはまた違うんだよね。褒めを素直に受け止められないだけじゃなくて「褒めさせない」というか。「褒めちゃダメ」って顔をしていたかな。
まあ、僕もできる子を褒めるタイプではなかったけど、「石田はもっとチヤホヤされてもいいのにな」とは思っていたよ。そういう意味ではアイドルらしくないノリだったかも。
石田:確かに、アイドルっぽくないかもしれないですね。仮にその頃の自分が卒業を決めたとしたら、今の卒業フィーバーを受け止めきれなかったと思います。フィーチャーしてもらうことが恐れ多くて、「私なんて!」ってネガティブに受け止めていたかも。
つんく♂:あの頃の石田は、グループの内輪ノリも楽しんでなかったよね。その様子を見て、「地に足がついてないな」って僕は話していたと思う。当時は意味がわからなかったんじゃない?
石田:わかっていなかったですね。
つんく♂:たぶん、何かを追及されるのがすごく怖かったんだと思う。自分を浮かせて、すーって逃げられるようにしてたのかも。
例えばライブ後のミーティングでも、小田はスタッフと話したがるよ。「あそこの照明は、このタイミングで点けた方がいいんじゃないですか」って食いついてくる。そうやって「もっと長く話しましょうよ」ってスタンスなんだけど、石田は「お疲れさまでした!」って颯爽と帰ってしまう感じ。「後で結果だけ教えてください」みたいな。
石田:そうでしたか(笑)。最近は、大人(スタッフ)と話すのが楽しくて仕方がないです。
つんく♂:それも、卒業を決めてからやろ? でも、3年前くらい前に石田とじっくり話した時から、意識の変化は感じたかな。バラエティー番組にも出演するようになって「覚悟を決めたんかな」って思ってた。
石田:意識が変わってきたタイミングですね。
つんく♂:石田がモーニング娘。のリーダーになる姿を見たかったって気持ちは往々にしてあるけどね。でも、待っていればリーダーになれるわけじゃないから。自分が「もう少し先に行きたい」と思った時に、挑戦する方がいいよ。
石田:そうですね。「今だ!」って思えました。
卒業後の石田の夢「地元・仙台のお仕事も続けていきたい」
つんく♂:石田、いくつになったっけ?
石田:27歳です。学年でいうと、譜久村さんと同じですね。でも27歳の自覚はあまりなくて。23歳くらいから時が止まっている気がします。
つんく♂:モーニング娘。特有だよね。ハロー!プロジェクトに限らず、ほかのアイドルも同じかもしれないけど、時を止めちゃう。田中れいながわかりやすい例かもね。ある種、プロとも言える。でも27歳って、社会的には若くもない年齢で、中堅どころだよね。石田は卒業後、どんな未来をイメージしているの?
石田:絶対に出たい舞台が2つあるんです。まずはそれを叶えたいですね。譜久村さんは卒業後に1年間休んだけど、私は休むことは考えていないです。休んだら戻ってこられない気がして。だからこそ、何を1発目にするかはすごく迷っています。
つんく♂:決まってるけど、言えないんじゃなくて?
石田:そうです。決まっていないです。ステージがいいか、何かを発表するのか。
つんく♂:休むことを選ばないなら、ガンガンやるしかないね。振り返ったらどちらが先かわからないくらいに。
石田:何でもやりたいって気持ちが強いんです。「何でもできる気がする!」という謎の自信と、「自分は何がやりたいのかな」という不安で満ちていて。
つんく♂:地元・仙台での仕事は、意識しているの?
石田:もちろんです。仙台放送の情報番組『あらあらかしこ』内で、『石田亜佑美が行くっ!』というコーナーを2014年から担当させていただいているんです。ぜひ続けたいですね。地元ではラジオをやりたいです。あとは、いつかお店を持ちたいですね。
つんく♂:あら、何系のお店だろ? 僕もいろいろと挑戦したけど、芸能人のお店って難しいよね。良いのがあたりまえ。評価が「普通」だと不合格のレッテルを貼られちゃうもん。それこそ「地方再生農家やります!」くらい完全に切り替えて、「それだけやります!」くらいの勇気がないと世間が認めてくれないとこまできちゃってるし。そんな世間の言葉を気にせずやれる信念があればやれると思う。
石田:そうですね。失敗しても、やってみたいという気持ちは解消されますもんね。
芸能活動の軸は、「舞台」?
つんく♂:今後、芸能活動の軸はどうするの?
石田:モーニング娘。が楽しかったから、1人で歌やダンスをやりたいわけじゃないんです。だから舞台に挑戦したいですね。出演したい演目があるんです。
つんく♂:それなら、舞台にたくさん挑戦するしかないね。歌えて踊れるから、優位でしょ。出演者を含めて周りから「アイドル上がり」みたいなことを言われるかもしれないけど。逆にその立場を利用して、お笑いから本格的な舞台までたくさん出て、自分を磨く。価値観が変わるかもよ。お客さんも付いてくると思う。演出側もお客さんを動員できるキャストは絶対にほしいから。そうしたら、演目を選べる立場になれると思うよ。
石田:すごくわかりやすい目標になる気がします。
つんく♂:ミュージカル界隈なら、安倍なつみは子育てで忙しそうだし、ソニンは最近テレビ番組でひっぱりだこだから、今のうちにそのすき間を狙う(笑)。それに舞台でのお芝居って、年齢重ねても石田の身長だったらずっと高校生役やれるから、貴重かもよ。別途、ファンの集いとか、ソロライブ的な活動は止めずにね。石田と同期の工藤遥とか、頑張ってるもんね。
石田:工藤は映像で頑張ってますね。飯窪春菜は今度アイドルをモチーフにした舞台をするそうで、「もう一回、アイドルやるよ!」って言ってました。
つんく♂:今の飯窪のポジションはあの子にしかできなさそうやし、真似するのは難しいよね。本気で漫画やアニメに精通してないとね。いきなりわかってない奴が来たら「シッシッ」ってなっちゃうから。そっちよりは舞台かな。
石田:舞台が大好きなので、頑張ります。
つんく♂:そうすると、大人計画とか、劇団☆新感線みたいなのを目指して、「石田劇団」を作ればいいじゃない? ハロー!プロジェクトを辞める子とか、アイドルを辞めた子を集めて。まあ、スタートの時点では全然お金にならないかもしれないけどね。
石田:確かに、誰もやってないかもしれないですね。卒業後の話をこんなに話したことがなかったから、新鮮です。
つんく♂:みんなこんな風に話したがらないよ(笑)。だって辞めた後の仕事が決まってたら、ペラペラ話せないだろうし。だからこそ、石田はほんまに決まってないねんな(笑)。
石田:決まってないですね(笑)。
つんく♂:なんも決まってないならとりあえず「海外留学に行けば?」とか言われがちやけど、舞台の方がきっと力が付くよ。それまではつんく♂とかハロー!プロジェクトの世界しか知らなかったのに、「こんなに世界は広いんや」って驚くはず。舞台は座長によってルールが違う世界だから、違う国に行くくらいの衝撃が待ってると思う。
石田:楽しめる気がします。
アルバム『Professionals-17th』を背負うメンバーそれぞれの想い
つんく♂:逆に、石田からつんく♂へ質問はある?
石田:ニューアルバムのタイトルを『Professionals-17th』にした理由を教えてください。
つんく♂:僕の作ったものは「プロフェッショナルだよ」という意味と、「私たちはプロフェッショナルなんだ」っていう自覚をメンバーに持ってもらう意図で付けた。いつもはタイトルを考えるのに時間がかかるんだけど、今回はスッと決まったね。最近の作品はヨチヨチしている感じの子がいなくて、しっかりしているから。
石田:確かに、「私たちはプロフェッショナルなんだ」っていう自覚が自然とできましたね。タイトルにふさわしくありたくて。つんく♂さんの思惑通りです。
つんく♂:ほかのメンバーはどう思っているんだろう。
石田:あまり話したことはないですけど、私と小田は考え方が似ているから、「プロフェッショナル」という言葉を背負う覚悟があると思います。牧野真莉愛もそうかも。本当は全員で意識を共有したいけど、「そっちはどんなテンションですか?」って探る部分もあって難しいですね。
つんく♂:そのバランスを含めて、あのタイトルにしたんだ。でも、このアルバムは曲順で迷ったよ。流れが一番大事なんだけど、譜久村は卒業しているから『Neverending Shine』をアルバムのラストにしてボーナストラック扱いにする案もあったけど、そうすると曲が強くて浮いちゃうんよね。あの曲は、譜久村だけへの卒業ソングでなく、この先誰が歌ってもいいわけだしと考えると曲順が見えてきた。いろいろ悩んだけど、結果いいところに落ち着いたと思う。
石田:『勇敢なダンス』が1曲目に入っているのが、私は嬉しかったです。
つんく♂:聴いてみてどうやった?
石田:めちゃくちゃかっこよくて。「自分の曲だな」って感じたんです。何だったら、「つんく♂さんが私に影響されて歌詞を書いたんじゃないか」と思うほど(笑)。
つんく♂:(爆笑)。どういうところが?
石田:モーニング娘。での活動は楽しかったけど、叶わなかったこともありました。それこそ、リーダーは待ってないとできないけど、待てばいいのも嫌だとか。ハッピーだけど、20%はネガティブという気持ちが曲になっているんです。私、そういう話をつんく♂さんにお伝えしたことがあったので、そのまま歌詞になってると感じました。でも、「私の曲だ」って伝えたら、ファンから心配されるかな。「やだやだ」っていう歌詞だし。
つんく♂:面白い! 僕の頭の中ではそれぞれ当時のメンバーが映し出されていて、そこから歌詞やテーマが生まれてくるんだよ。石田からそういう話を聞いたのなら、曲に反映されたのかもしれないね。でも、石田がこの曲で踊るイメージはすごくしてたよ。
石田:「肌荒れの真実を これ以上聞かないで」という歌詞も、「つんく♂さん、肌荒れの印象をずっと私に持ってる?」と思えてきて(笑)。『わがまま 気のまま 愛のジョーク』で、「ニキビが増えたってストレスなんかないよ」ってパートをいただいたんですけど、加入時は中3だったこともあって、よく肌荒れしていたんです。つんく♂さんや奥様に心配していただいて、化粧品をいただいたほどで(笑)。
つんく♂:わーお。全然覚えてなかった(笑)。すまん。本人はそういうの覚えてるもんやもんね。でもそういうつながりって大事だね。
石田:自然とつながっちゃうのかもしれないですね。「もう肌荒れはよくなりましたよ」ってご報告です(笑)。
つんく♂:また違う種類の肌荒れの時期が来るよ(笑)。
石田:え! すごくやだ(笑)。あはは!
メンバー全員が歌いたがった『幸せ指数 発表されたい』
石田:ユニット曲の『幸せ指数 発表されたい』は、タイトルだけで「つんく♂さんの曲だ!」ってファンのみなさんが盛り上がっていましたね。でもタイトルだけでは歌詞が想像できないじゃないですか。
つんく♂:石田も最初にタイトルをもらうの?
石田:そうです。タイトルを見た時は「ハッピー可愛い幸せ」な感じを想像していたんですよ。でも歌詞を見たら「冷凍もん~」「洗濯物~」で、「面白い! めっちゃファンクだ」と感じました。ユニット曲って基本的には担当するメンバーだけが聴くんですけど、あの曲の仮歌に関してはメンバー全員が聴いたくらい「私も歌いたい!」って人気でした。何段階にもひっくり返された曲でしたね。
つんく♂:『幸せ指数 発表されたい』は、今回のアルバムでは最後に書いたかも。歌詞はいつも迷うけど、ひとり暮らしのメンバーもいるし、みんな共感できるかなって思ったんだ。作る時は歌詞とメロディのリズムを大事にしているけどね。
石田:つるつるつるって勝手に言葉が出て来る感じで、口が気持ち良かったです。リズムと歌詞で伝えなきゃいけないから作るのは難しそうですね。
つんく♂:とりあえずメロディが持っているリズムに言葉を乗せていく。言葉にリズムを持たせる意味で、韻を踏ませることもある。
でもつんく♂の歌詞はリズムの語呂がいいだけでなく、一つのセンテンスの中にも意味があったり、全部読んでるとわかるような伏線回収みたいなトリックがある……というようなテクニックを使うかな。
なので『幸せ指数 発表されたい』では、最初のAメロでは「期待通り」としか出てこないのに、折り返しの部分では「目と目があって期待通り」という意味が加わって「あ、リズム遊びだけじゃないんだ〜」とリスナーがわかるような伏線回収がある。
あと、「勝てば官軍」って言葉をどうしても使いたくって。勝ったらなんでもええんかい! っていう不条理感はずっとあったし。「多数決じゃ 決めらんないのは恋愛のエトセトラ」の延長戦みたいな感じで、社会にツッコミを入れるような歌詞にしてみました。
歌詞の中にある「洗濯物が乾かない」という状況は、実は今年、家族で世界一周旅行してる時に感じたことなんだよね。10以上の国を巡って一番困ったのが着替え問題で。
石田:服をたくさん持っていけませんからね。
つんく♂:どこかで洗濯するしかないからね。「ここのホテルで洗えるかな」と計画するんだけど、洗濯機はあるのに乾燥機がなくて。服の数の計算が合わなくなって、「どうしよう。洗ったはいいけど、案の定乾かなかった!」って。
石田:ちょっとしたところからの引用ですね。まさかの裏話!
つんく♂:僕が上京して初めて住んだアパートも、乾燥機がなかったのね。だから洗濯が終わると部屋に張ってあるロープで洗濯物を干したんだけど、雨が続くとなかなか乾かなくて嫌だった。そういう気持ちが残ってたのもあるね。
石田:私たちも、地方ライブが続くとありがちです(笑)。
『ムカ好き!』の主人公の気持ち、理解できる?
石田:『ムカ好き!』は、ファンのみなさんからかわいくて人気ですね。ハートがいっぱいの曲で振付もそうだから。ここまで「好き好き」言ってる曲はなかったかも。
つんく♂:話は変わるけど、あの曲はサビの長さがちょっと変だなって、歌ってて感じる? 1小節単位なんだけど、実はちょっとトリッキーな作りなのよ。
石田:曲自体、キュッとしてますよね。でも歌っていて感じませんでした。
つんく♂:アレンジの深さやな。編曲の平田祥一郎が僕の説明をちゃんと解釈して、曲をちゃんとまとめてくれたのよ。
石田:今回の秋ツアーでは、『HOW DO YOU LIKE JAPAN?~日本はどんな感じでっか』の後に『ムカ好き!』を歌うんです。これだけ幅のある曲を歌うのがモーニング娘。の面白いところだなって改めて感じます。
つんく♂:アルバムもそうだよね。緩急がある方が人間は感動する。ところで、石田は『ムカ好き!』の主人公みたいな気持ちを理解できる? ムカついてるけど好き、みたいな。
石田:あまり自分には置き換えられないですね。でもペットを愛でる飼い主に近い気持ちなのかなって思います。(羽賀)朱音ちんとかがそうで、「ペットが可愛すぎて、食べちゃいたい」らしい。そういうところが通じるのかな。壊してしまいたいくらい好き、というか。
つんく♂:じゃあ石田には、ああいう感情はないってこと? そうしたら、どう好きなのをアピールするの? わざとこんなことをされたら、好きだけど「このやろ」って思う。それが『ムカ好き!』。石田は素直にごろにゃんするのか、知らん顔しているのか、「好き好き好きーー!」なのか。
石田:どちらかというと、引くかもしれないですね。「そちらがそういう感じなら」って。
つんく♂:それはそれで可愛いよね。男はどんどんのめり込みそう。ツンが大きくて、デレないってことでしょ?
石田:うーん。でも相手によって変えているのかもしれませんね。年下の(山﨑)愛生ちゃんには、私から「疲れたー」って抱き着けるんです。でも小田には行けない(笑)。私は愛生ちゃんのことをすごく愛でていて、本人からは「まるでお母さんみたい」と言われるんです。でも、そうやって立場が逆転することもあるんですよ。
卒業を決めて改めて刺さった『なんだかセンチメンタルな時の歌』
つんく♂:『なんだかセンチメンタルな時の歌』もファンの間で話題だったけど、どうだった?
石田:すごく面白かったです。私、加入前に聴いた『泣いちゃうかも』に匹敵するくらいの衝撃がありましたね。アイドルってキラキラしていて、ニコニコとステージで踊るイメージがあったんですけど、『泣いちゃうかも』では「この曲を恰好よく歌って、MVでは泣くんだ」って衝撃がありました。『なんだかセンチメンタルな時の歌』も同じ気持ちになりましたね。
石田:でも私は卒業を決めたからか、この曲に共感するメンバーの一歩先にいる感じもあって、「そんな時期もあったね。可愛い」って思いながら歌ってました。
つんく♂:卒業を決めてるからこそ冷静になれたのか。「今だけだよ。大いに悩みな!」って。たどり着いてるね。
石田:この曲はつんく♂さんがライナーノーツで「メンバーがどう思ったか、反応が気になる」って書いていたのも含めて好きで。つんく♂さんを雲の上の存在だと思っていたけど、私たちと同じ人間なんだって感じたんです。
つんく♂:曲に対してあれこれ言っちゃいけない雰囲気があるから、そうやって書いた方が言いやすいかなって思った部分もあるんだよね。「自分の意見を言っていいんだよ」という気持ちで。それに、そう書かないと考えない子もいるだろうし。「プロフェッショナルなんやで。頭使ってや!」って。
石田:深いですね。まんまと刺激されました。
つんく♂:オリンピックを観ても、体操とか柔道とか、みんなスーパーストイックだもんね。
石田:練習にかけている時間も違いますもんね
つんく♂:アイドルという職業も、単に可愛いだけでは成り立たないと思う。本当にすごい子たちはストイックだろうし、練習も勉強もする。舞台やミュージカルの世界に入ってたら最初はいい意味でも妬みやっかみなんかも含めて「アイドル上がり」って言われるよ。
今となっては「アイドル」だったことは否めないわけだし、むしろその立場をどう活かすのかを考えるべきだよね。
石田も最初から舞台を目指す子よりは、いいスタート地点にいる。だからこそ、それを有効利用するためにもさらなる訓練や勉強が必要になると思う。スキルが追いついてないとファンも仲間も「なんだ、こんなもんか」ってなってしまうもんね。
つんく♂からの衝撃提案「『石田だーいし亜佑美』に改名したら?」
つんく♂:ほかに、何か質問はある?
石田:私としては質問よりもつんく♂さんへの感謝の気持ちを伝えたいです。まず「だーいし」というニックネームを付けてくださったこと。当時は「え!?」と驚きましたけど、今は個性になっていて本当に感謝しています。
つんく♂:あのあだ名、まだ使ってくれてるんだ。
石田:ファンの方は「あゆみん」呼びが多いですけど、芸人さんと共演する現場で、「だーいしってニックネームなのはなぜ?」って話題になるんですよ。会話の種を生んでくださったことにとても感謝しています。
あと、『女子かしまし物語』の歌詞で「仙台育ちのダンスマシーン」って歌うんですけど、キャッチコピーとして使わせていただいています。そう考えると、私に関わるすべてのことを生み出していただいたわけですね。
つんく♂:そのキャッチコピー、いいね。
石田:つんく♂さんが名付け親ですよ(笑)。ここにきて伏線がすべて回収された感じです。当時は、そこまでの深さを考えてなかったですけど。
つんく♂:ひっかかりって大事なんだよね。色が白くて小柄な可愛い子に「濁点」ってすごく面白いから。かわいく名づけるのは、ある種楽ちんだけど、陳列すると流れちゃうんだ。道重さゆみの「しげさん」とかの流れがあって、「だーいし」。
最近はタレントさんもユーチューバーもプロデューサーも、検索したらその人しか出てこないような名前をつけるよね。そうじゃないとテレビに出ても覚えられないから。ヒカキンとか「苗字ないんかい」って心の中で突っ込んだことがあるんやけど、「ああ、僕もか」って思った(笑)。
石田:ほんとだ。苗字がないですね。
つんく♂:正直、芸名なんやし、苗字はつけといても良かったなって思ったこともあった。さんまさんも鶴瓶さんも、「明石家さんま」「笑福亭鶴瓶」でしょ。売れ出すと地方イベントとか行ってね、主催側のお偉いさんを紹介してもらうやん? 町内会長さんと役場の偉い人とか、「つんく♂です」と挨拶すると「苗字は?」って絶対に聞かれるの。「苗字はないんです」って答えたら「あんた、苗字ないの!?」って驚かれて(笑)。今となってはつんく♂だけでも大丈夫だけど。
石田:私は、石田亜佑美と「だーいし」でバランスよく活動できているのかも。
つんく♂:改名して、ミドルネームにしたらええんちゃう?
石田:石田だーいし亜佑美に!?
加入時はわからなかった『ジェラシー ジェラシー』の魅力
つんく♂:そろそろ時間だね。今後についていろいろ話したけど、どうだった?
石田:「やってみないとわからない!」という気持ちはもともと強かったんですけど、改めて「悩むよりはやった方がいろんなものに出合えるかも」って思えました。その生き方の方が楽しそう。だからこそ何でも挑戦してみようって思えました。
つんく♂:そうだね。卒業を決めてから改めて好きになった曲とか、加入した当初はわからなかったけど理解できるようになった曲はあるの?
石田:『ジェラシー ジェラシー』ですね。この曲をもらった時に「こんなに嫉妬心を全面に出していいのかな」って不安だったんです。加入時は後輩を褒められないような人間だったから。でも今は「ジェラシーもいい感情だ」と肯定できて、自分に似合う曲だなって思えるようになりました。ジェラシーは、力になるんですね。
つんく♂:つんく♂の歌詞の世界では、ジェラシーは原動力かも。「腹減った」「眠たい」くらいしか本質的な欲望はないんだけど、それをモーニング娘。がずっと形を変えて歌ってくれたなって感謝しているよ。あそこまでジェラシーを全面に出せるのは、モーニング娘。だからこそ。当時のBerryz工房では使わない世界観かもしれない。最後に、石田が踊っていて気持ちがいい曲を教えてくれる?
石田:『スカッとMy Heart』ですね。ファンクで細かいステップなんですけど、手を抜かずに踊るのが気持ち良いです。
石田:あとは『The 摩天楼ショー』も、振付を担当したYOSHIKO先生ならではのシンプルでダンスの基礎が詰まった曲で好きですね。モーニング娘。は、加入してからダンスを始める子が多いけど、私はダンスを続けていたから「これぞ基礎」と踊っていて大切さを感じます。
石田:加入前の曲だと、『浪漫 ~MY DEAR BOY~』も、イキる感じが気持ちがいいです。
つんく♂:ああいうストイックな曲は、最近少ないね。
石田:『浪漫 ~MY DEAR BOY~』はフェスで歌うことも増えてきたので、踊ってると強い気持ちになれるんです。
つんく♂:今日はありがとう。楽しかった!
【対談を終えたつんく♂の感想と石田さんへのメッセージはこちら】
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