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つんく♂とアレンジャーが語る創作論「結局、苦しんで生むしかない」

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」、対談企画第14回目ゲストはアレンジャーの平田祥一郎さんです。後半では、Berryz工房や°C-uteなどの楽曲の思い出、メロディの作り方、アレンジ手法や多用する音源まで幅広く語っていただきました。対談前編はこちら
(文 山田宗太朗 / 編集 小沢あや<ピース株式会社>

Berryz工房、°C-ute、時東ぁみ、後藤真希。時代を作った楽曲たち

つんく♂:Berryz工房だと、どのあたりをよく覚えてる?

平田:Berryz工房はわりといっぱい記憶があるんですけど、最初にアレンジした「ピリリと行こう!」(’04)はもちろん、「行け 行け モンキーダンス」(’08)も大好きですね。

つんく♂:お〜!「行け 行け モンキーダンス」。あの曲でBerryz工房は他を引き離したよねえ。あそこで「この子たちはなんでもいけるんや」と確信した。

平田:これはもうBerryz工房にしかできないでしょ、みたいな曲でしたもんね。「私の未来のだんな様」(’09)とかも、「わあ、いいなあ〜」と思いながらやらせていただいた記憶がありますね。

つんく♂:俺の中で、今出た曲以外で「これ!」と思ってんのは、「お昼の休憩時間。」「さぼり」(ともに’05)、それから「これは行ったな~」と思ったのはサビ中の「パフゥ」音をイメージ通り入れてくれた「思い立ったら吉でっせ!」(’07)。あとは「アジアン セレブレイション」(’13)やな。これは今でも聴きたくなって、すっごいよく聴く。

平田:「アジアン セレブレイション」は僕も好きです。Berryz工房は、面白いことをいっぱいやった記憶がありますね。それこそ「さぼり」みたいな正統派もありますけど、一方では振り切った曲も多くて。音楽番組で「愛はいつも君の中に」(’14)を生で演奏しているのを見た時は「ほおーっ! アレンジやってよかったー!」と思いましたもんね。あれはすごかったですね。

つんく♂:じゃあ、°C-uteは?

平田:°C-uteもいっぱいあって甲乙つけがたいんですけど、ハードめなアレンジでいうと、最後の「The Curtain Rises」(’17)とか。


つんく♂:これもええ仕事してくれたよね~。

平田:でもこの曲は、つんく♂さんがサジェストしてくれた参考曲のおかげなんです。

つんく♂:あれは作った時点で頭の中に最終系の曲のリズムが流れてて、「でも、これは誰も理解できないだろうな……」と思ってたのよ。でも、もしかしたら祥一なら読解してくれるかもしれないって思って依頼した。というのも「メロンのためいき」とか「21世紀まで愛して」のオリジナルを聴いてもらって、それを「こうこうこういう解釈で今時の音にしたい」と発注してたあの頃に、ちゃんと期待以上の音に仕上げてくれた実績があったからね。

「新人アレンジャー」とか「最近評判の」みたいなアレンジャーさんに期待してアレンジを発注した時によく行き詰まるのが、参考曲を聞かせたら「まんまやん!」みたいな場合が多いこと。耳も良くって器用だからそうなっちゃうんやろうけど、類似品を作りたいわけじゃないから、俺の中ではNGなんよね。そういう意味で「祥一脳」というハードディスクの解析機能がないと、出来上がった曲と参考曲を渡しても新しいものにはならない。プロの仕事やったよ、あれは。℃-uteのいい記念曲になったと思う。

平田:ありがとうございます、本当に……。

つんく♂:いつも悩むとこやけど、アレンジしてもらうことに関して、参考曲はあっても、作った曲とアレンジャーの個性の両方を活かさないとアカンやん、プロデューサーとして。仕上がりが参考曲通りでは困るってのは当然なんやけど、要するに「参考曲のどの部分を参考にしてほしいのか」をささっと理解してほしいわけ。でも、それって相当難しいみたい。

例えば、お願いする時に「頭の中でパンダとフェラーリを足したような新しい何かをイメージして絵に描いて」っていうのと、写真を見せながら「このパンダとフェラーリを合体させたものを絵に描いて」っていう違い。断然、後者の方が描きやすいと思う。

でも、具体的なものを見ちゃってるので、新しい画期的な何かにはなりにくい。でも前者の課題の出し方だと小学生の落書きみたいなのがあがってくる。きっと、本当のプロは具体的な写真を見た上で、まるで見ていないかのような想像力で仕上げてくるんだと思うんだよね。

話が脱線したけど、俺とディレクターの中では参考曲が決まっててもアレンジャーには聴かせないことも多い。変に聴かせてしまうと参考曲から抜け出せなくなって「ああ、聴かさない方が良かった」と思う時がいっぱいあるからなんやけどね。

平田:なるほど……。他に°C-uteだと「Crazy 完全な大人」(’13)も好きですね。たしか池袋のサンシャイン広場で、つんく♂さんから武道館ライブ決定のサプライズがあった時の曲だったと思います。

平田:その後、東京スクールオブミュージックの一日講師をやらせていただく機会があったんですけど、この曲を作った時のお話を具体的にさせていただいたんです。その時は、まず「どういう方向性をオーダーされたか?」から始まって、次に音色的な世界観のイメージ、リズムの組み方、テーマ(イントロフレーズ)をどうつけるか?またその音色をどう更生していったか。それから、各バース(Aメロ、Bメロ等)の構成上のダイナミクスをどう演出すると効果的か、みたいなお話をさせていただきました。そういう意味でも思い入れがありますね。

つんく♂:へ〜、ええ話。

平田:あとは、僕がいちばん音源を聴き返す回数が多いのは、実は「SHINES」(’09)なんです。アンセム的な曲にしたいというオーダーで、どういう大きなフレーズを当てるかすごく考えた記憶があって。この曲をライブで見た時は「なんてライブ映えする曲なんだ!」と感動しました。今でも映像を繰り返し見るし、鳥肌が立ちますね。オーディエンスとタオルを回すのも圧巻だし、アウトロ前のスネアを3連で叩くところで岡井ちゃんが手を握って3連叩く姿も、何度見てもキュートで印象的で。

つんく♂:うん、ハマったよね。俺の中で大きかったのは「通学ベクトル☂️」(’07)やな。この曲はアレンジをどうするかめっちゃ悩んでて、実は、できあがってからだいぶ眠らせてたのよ。

平田:これはたしか、アレンジのお題がアリスの「チャンピオン」でしたよね?

つんく♂:正解。この話は初出しなのでじっくり聞いて欲しいんやけど、曲が出来上がってからだいぶ長い間眠らせてたんだよね。時代的には、とにかく「アイドルオタ芸ダンス」みたいなのの全盛期で、俺の中で次の動きを欲してたの。その一環として「頭の上でハンドクラップするような曲が欲しい」、って。

でも、松山千春さんの「長い夜」とかアリスの「チャンピオン」っていうと、ギターをジャカジャカ言わせる8ビートのフォークソングに上がってくる。でもそれはその時の°C-uteが求めてるものではなかったし、発注の仕方が難しいなぁって思ってた。そんな中「このお題では絶対無理でしょ」みたいなお笑いのネタ振りのように「°C-uteが歌うチャンピオンで」って伝えたと思うんだよね。

ディレクターには「頭の上で手拍子出来るイメージで」とも伝えたんやけど。結果「このお題でようこのアレンジを作ってきたな!」と関心したのを覚えてる。さっきのパンダとフェラーリの話じゃないけど、この話を聞くまで、「通学ベクトル☂️」のお題が「チャンピオン」だったって気がついてた人何人くらいいたやろ! ってね。で、結局最後まで°C-uteとしても、鈴木(愛理)としても、ファンと一緒に歌い続けられる曲になった。これはもう、素晴らしい技やね。

平田:ありがとうございます。いろいろ、いっぱい思い出がありますね。

つんく♂:Juice=Juiceやスマイレージ(アンジュルム)はどう?

平田:Juice=Juiceだと「SEXY SEXY」(’18)が好きなんですよね。「あー、色っぽい」と思って。MVも相当見返したんですけど、「愛を感じたい」のところが気持ち良いです。スマイレージはやっぱり「夢見る15歳(フィフティーン)」(’10)、それから「ミステリーナイト!」(’14)も好きです。

つんく♂:「夢見る15歳(フィフティーン)」はようできてるし、「ミステリーナイト!」もカッコ良いよね~。

平田:あとは「チョトマテクダサイ!」(’12)とか。「タチアガール」(’11)とか。

つんく♂:それも良いね。スマイレージの代表曲やね。

平田:あ、あと「ショートカット」(’11)もやりましたね。

つんく♂:それも良いね! 今でも聴く曲だ。

平田:振り返ると、スマイレージの曲もたくさんやらせていただいてますね。懐かしいな。あとは、さっき話にも出た時東ぁみさんの「発明美人とパインナッポー!!」(’05)とか。

つんく♂:あれもひとつの時代を作ったよね~。

平田:これ、いまだに何の曲かよくわからないんですけど(笑)。

つんく♂:あの曲は、意味理解しようとしたらだめ。

平田:このまんまを受け入れなさい、ってことですよね(笑)。これもアレンジすごい頑張った記憶があります。あ、一番大変だったのは「LOVEマシーン(Updated)」(’13)かもしれないです。今までの仕事の中でいちばんプレッシャーが大きかったです。やっぱり、本家ありきですし。

つんく♂:いろんな人と比べられるもんね。「LOVEマシーン」はいろんな人がアレンジしてるけど、やっぱり正解は出ないよね。

平田:本当にしんどかったけど、アレンジしてる時はすごく楽しかったんです。特に、元歌のステム(データ)を聴けるのが楽しくて。「こんなバンドアレンジでやってたんだ」と知ることができたので、それだけで大満足でした。

つんく♂:だいぶエロいな。それ(笑)。でも今ライブではやるのは基本、Updatedの方なのよ。イントロだけオリジナルの「Hmm」を入れるけど、オリジナルVer.とはもう20年違うからね。さっきの埋もれる埋もれないの話(「めちゃモテI LOVE YOU」)でいうと、オリジナルの「LOVEマシーン」は楽器がほぼ生演奏。だから、打ち込み音源の楽曲たちに挟まれるセトリだと、今の時代ではちょっと埋もれるんよね、音圧が。なのでロックフェスでやる時もUpdatedの方でやってるはず。もちろんあの時代を作ったオリジナルアレンジありきなんやけどね。

平田:嬉しいなあ。モーニング娘。で言えば、「君さえ居れば何も要らない」(’13)のデモが来た時、Aメロのコードが入ってなかったんですよ。無音で入っていて(笑)。

つんく♂:そうやったっけ? 俺の中では、マイナーのフラットファイブの中で音が決まったっていう記憶があるけど、違ったっけ? 俺、コードなしの無音で渡したの? めちゃくちゃやな(笑)。きっと「アレンジャーがコード感に引っ張られる」って思って、消したんやわ。

平田:でも結局、ベースライン自体はワンコードでいけて、あとでうまい具合にハモが乗っかって成立したんです。あれは不思議な曲ですね(笑)。サビ終わりでコードが変わって、いちばん最後もまたコードが変わるんですよね。どうやってきれいに飛ばせようかすごく考えた記憶があります。

つんく♂:自分でいうのもなんやけど、ああいう曲は作ろうと思っても作れない。普通に収まってくのがつまらないのに、難しい(賢そう)のはいやで、特に歌いづらいのはダメ。

「太陽が今日もまた」のところは音階をほぼステイさせて、コードだけが変わってく。で、「まるで僕たち」からは音階を不自然に上げて、それに追いつくようにバックトラックをどんどん転調させてった。

転調して転調して……1コーラス分だけならそれでいいけど、2番の頭には元のキー(調)に戻るので、最終的にどう仕上げるか後回しにして「えい!」って思って作ったけど、ちゃんときれいに祥一アレンジで返ってきたから、祥一に対して「ありがた~い」って感じたね(笑)。

平田:それで言うとDEF.DIVAの「好きすぎてバカみたい」(’05)も最後の最後でガンガン上がっていくんで、あれもすごい曲でしたよね。

つんく♂:あの転調は3度ずつ上がっていくように計算して作ったから自分でも知恵を感じるんやけど。それに対して「君さえ居れば何も要らない」は、「上げたれ!」みたいな感じの無責任な転調やから、理屈がない。

平田:だから、戻り方も理屈じゃないんですよ。無理くり戻したというか。一度無調にして、違和感をなくしました。

つんく♂:一休さんのとんち問答みたいやな(笑)。素晴らしい。そのおかげで、あのイントロ、なんの曲にでも繋げられるからメドレーで使いやすいのよ。

平田:もうひとつ、僕は後藤真希の「ガラスのパンプス」(’06)がすごく好きなんです。あの曲はイントロのフレーズがつんく♂さんのデモ段階からあって、それをうまく活かせたと思うんですね。あのフレーズに助けられて広げていった感じがあるんです。さらに言えば「ハウスでやっていいよ」とも言われていたので「待ってました!」と(笑)。「はい、喜んで!」的な勢いで仕事をやった記憶があります。コーラスを切ったり貼ったりしたのも楽しかったですね。MVもゴマキがすごくカッコ良かったし。でも、そのあとで田中直がアレンジした「SOME BOYS! TOUCH」(’06)を聴いて、マジで嫉妬しました。

つんく♂:あれもちょっとクレイジーだったよね。

平田:ヤバイですよね。「あのベースの音、何!?」って直くんに直接聞きましたもん。

つんく♂:そういう意味で言うたら松原憲もすごいよな。どうやったらこうなるの? っていう。

平田:あの人、頭おかしいですよね(笑)。「THE マンパワー!!!」(’05)は変態の極みですよ。


つんく♂:普通、音楽をやる人は、ああはできない。

平田:松原も音楽をやる人のはずなんですけどね(笑)。でも、あれで行くんだと決断された制作陣もすごいと思います。

つんく♂:イントロのオケヒット音の違和感は、どうやっても他に置き換えられなかったんやもん。デモアレンジの段階の「イントロの違和感」はあとで直せばええって思いながら、時間もないんでボーカルレコーディングを進めていったんやけどね。同時にそのイントロ部分を他のオケヒット音に差し替えたり、違う楽器に差し替えるとまったく普通になる。じゃあ、そもそもの松原憲の音源のピッチを正しく修正してみようってやってみたけど、ニュアンスが変わるだけ。なので「こりゃ何やってもアカン。まんま行こう」って、決断した。

平田:松原との最初の仕事って、プッチモニの「ちょこっとLOVE」(’99)ですか?

つんく♂:最初は太陽とシスコムーンの「ガタメキラ」(’99)やったかな? 「ちょこっとLOVE」は、TDの時にパラデータを見たら和音がほとんど入ってなくて。たぶん彼(松原憲)は、なるだけ働きたくなかったんやな、みたいな(笑)。和音をまともに積んでたら時間かかるからね。ニュアンス作ったら、とっとと流し込み済ませて早く帰りたい的な(笑)。

そういえば、ちょうどこの曲の打ち合わせをしてた時もバラケン(松原憲氏のこと)が奥さんを車で待たせてたんよね。なので仮タイトルを「奥様車待機」にした。だからずっとあの曲のことは、歌詞が固まって正式タイトルが決まるまで「奥様車待機」って呼んでた。

平田:そうだったんですか(笑)。それぞれどの曲も思い出があるもんですね。

つんく♂「メロディは降りてこない。苦しみの中で生むしかない」

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つんく♂:ここからは、祥一からもらっていた質問に答えていこうかな。

平田:まず、メロディメーカーとしてつんく♂さんに聞きたいんです。これだけたくさんのメロディを作ってきた中で、思い通りのメロディができない時もあったと思うんです。そういう時は、どう解決していたんですか?

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