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売れるアイドルの理想系って? つんく♂と漫画家・かっぴーが分析

noteマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」、前回に続き対談ゲストに漫画家・漫画原作者のかっぴーさんを迎えて、「アイドルの作り方」トークを展開。後半は「アイドルのプロセスエコノミー」から、「プロデューサーに求められる役割」、そして「“売れる”ものを作れるプロデューサーの形」についてディープに語りました。前編はこちら。
<構成 田口俊輔 / 編集 ピース株式会社 / 写真 玉置敬大(note)>
(取材協力 note place

日本のアイドルの物語の形は「後藤真希と保田圭がいること」?

――近年「プロセスエコノミー」という言葉をよく聞くようになりました。物が生まれるまでのプロセスやストーリーにこそ価値があり、そこに共感するから売れるという考え方です。まさに『15分の少女たち-アイドルのつくりかた-』の中でも、プロデューサーの雨宮はストーリーの大切さを訴えています。まさに『ASAYAN』などのオーディション番組は「プロセスエコノミー」の原点。つんく♂さんはプロデュースを始めるにあたり「ストーリーを応援してもらう」ということを意識していましたか?

つんく♂:プロ野球もそうだし、宝塚歌劇団やジャニーズにしても、一軍選手はいるとして、控えや二軍、研修生の方が面白いっていうか応援しがいがある感じ。むしろ「昔、少年隊の後ろでTOKIOがバックダンサーしていたのを、私はしっかり覚えている」というようなドラマが、日本人は大好きだよね。

かっぴー:好きですねえ。

つんく♂:だから、ガンプラがいまだに売れ続けているんやと思う。

かっぴー:おぉ~、ガンプラ?どういうところですか?

つんく♂:アメリカ人にはその美学があんまり伝わらないと思うけれど、日本人にとってはジムすらカッコイイわけ。捨てキャラがいない。

かっぴー:なるほど!そうかそうか。

つんく♂:モーニング娘。にしても、後藤真希もだけど、保田圭がいるから面白いっていう感じ。それが日本のストーリーなんだと思う。

かっぴー:確かに。アベンジャーズを観ると、「全員が孫悟空じゃん!」っていう感じでやっていますからね。やはりゴマキという天才がいて、圭ちゃんという普通に近い方がいて、そこの関係が面白かったりするんでしょうね。

つんく♂:保田は平凡に見えたかもしれないけど、歌もしっかりしてて、あの子がつんく♂プロデュース路線を作ってくれた。2期メンバーが入った時点で一番大人しかった彼女は、自分をうまく表現出来ず、いつもずっと遠慮がちで。僕はそんな彼女に対して、「ライブのMCで『私って暗いですか〜?』って言ってみれば?」ってアドバイスしました。とても勇気が必要だったと思うけど、僕を信じてそのセリフを言った会場は思いっきり盛り上がりました。そういう風に、彼女が頑張ることによって他のメンバーにも火がつく。結果、いい意味の相乗効果が生まれて行ったわけです。

話が飛ぶけど、かっぴーさんの漫画『15分の少女たち-アイドルのつくりかた-』は1〜2巻までは女の子メインで描かれていたけれど、3巻から急にマネージャーの心情が強くなって。そこから一気に読者を掴み始めるよね。人間味が出てくる。

かっぴー:そうですね、最初は世界観の説明と言いますか、一旦オーディションから入って、そこでなるべく「こうした会社ではこうしたプロジェクトが進行している」という背景を見せて興味を持ってもらい。この世界に慣れさせていって、最後にどっぷりと世界に浸からせる。なのでおっしゃる通り、3巻からやっと本当に描きたいことがやっと出てきているなと。

つんく♂:多分、筆も乗っているんやと思う。自分を投影させやすいんだろうね。

かっぴー:確かに。本当に純粋な表現者よりも、作り手、大人から見たアイドルや、企画・プロジェクトの方が気持ちは乗れますね。やはり、僕は15、6歳の少女には変身できないので(笑)。

つんく♂:(笑)。

かっぴー:そこに関しては相当難しい題材なので、15、6歳の気持ちを理解するために『Popteen』でも買って、読んでみようかと思いましたね(笑)。

つんく♂:でも、逆にもっと無責任でいい感じがする。僕が歌詞を書く時に、いちいち15歳にならないからね。近づこうとする方がウソだらけになる。おっさんのまま「何を歌ってもらうか」を、考えています。

かっぴー:なるほど~!確かにそうですよね。

つんく♂:さっき小学生高学年の頃の話が出ましたが、あの頃の感性って大事だなって思っていて。「あの頃、どうやって芸能人を見ていたか?」「テレビを見つつ、実際にはクラスに気になる子がいて、どんな距離の詰め方をしていたか?」って、きっと時代が変わっても、そのあたりの胸キュンする感じは変わらないと思うので、その引き出しを常に開け閉めしていると思う。

つんく♂:多分、最初にドキドキしたのは『ドラえもん』のしずかちゃんで。その後は『エスパー魔美』、そこからあだち充の世界に入って行った(笑)。

かっぴー:へ~、なるほど(笑)。

つんく♂:『タッチ』や『みゆき』とかね、あの感じを忘れないようにしています。

かっぴー:確かに胸キュンですね(笑)。

――「プロセスエコノミー」について最後の質問です。K-POPのように完成したアイドルの形が支持されるようになったことで、今はJ-POPとK-POPのせめぎ合いになっているという話がつんく♂さんから出ました。今、時代の流れがK-POPに寄っている中、今までプロセス、ストーリーを応援してもらう日本のアイドル像の潮流は変わってくると思われますか?

かっぴー:それ、一番聞きたかったです。

つんく♂:日本のものは日本でしか作れず、その日本製が好きな人はやはり世界中にいて。ただ絶対数が少ないだけです。なので、今からいきなりK-POP路線を作ろうとしても簡単には結果を出せないとは思います。ただ、2、30年前の日本のアイドルの形のままでは、さすがに刺激が足りないと思うので、やはり時代の中で“J-POPらしさ”を完成させるべきです。

かっぴー:確かにそうですね(感嘆をもらす)

――J-POPが、無理にK-POPのような形を目指すのは違うと。

つんく♂:(暫し熟考)でも、本来は出来るはずなんだけどね、日本も。できることならローティーンを本当にきっちり育てて、22歳くらいになった時に世界で戦えるようになればカッコイイと思う。14、5歳あたりである種出来上がってしまうと、長持ちしない。マラソンでいうと、顎が上がってくると思うんだよね、本人が疲れちゃう。

かっぴー:おぉ~、実はちょうど、そういう内容を最新話で描いていて。技術的にも早熟で、早くに売れちゃったアイドルグループは、その後どういう大変さが出てくるのか?って。その答え合わせが、今できた気がしました。

アイドルに限らず、「いつ完成するか?」は、人生を楽しむうえで結構大切だと思っていて。僕は30歳まで何もなく、30歳を過ぎてやっと「これが自分の仕事」と思えることをできるようになってきたのが、結果的に良かったなと思っていて。今の日本のアイドルは、15、6歳ぐらいで世に出されて、売り物として見せていかないといけない。そこだけじゃないということですよね。いつ世に出して、どこを見せるか?そこに関しては大人が企画・設計できる気がしていて。なので、いつ製品化するか?という視点が面白いなと思います。

つんく♂:グループでやっているなら、「全員、いつも全力で走れ!」とは思わないことです。仮に10人いたら、2〜3人は休憩しててもいいかなと。向上心や集中力が弱まったとしても、まあ、それはええやん!って感覚ですね。全員が常に全力だったら、メンバーも僕もまいってしまいます。

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――「今求められるプロデューサーの役割」についてお話をうかがえればと思います。つんく♂さんがプロデュースしているアイドルにとって、つんく♂さんご自身はどんな存在・役割であることを意識していますか?

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